異世界に転生したら親友が魔王の一人だった
@zuch
終わりの始まり
目を開けると薄汚れた小屋の中にいた。
自分の足元には星形の模様のようなものが描かれており、光輝いている。
周りを見渡すと武器を持っている人と神父のような人がいる。
武器を持っている人たちは血だらけだ。
みな肩で息をし、辺りを警戒している者もいる。
部屋の外にも武器を持った男たちが立っていた。
ここは何処なのだろう。
なにがどうなっているのか分からない。
状況を理解しようと辺りを見渡していると神父のような男が私を指差しながら叫ぶように言った。
「この男のスキルはとてつもない力を持っている、すぐにスキル解放の儀を行う‼︎」
武器を持っていた者たちの顔色が変わった。
さっきまで疲れ切った様子だったが、今は目に希望がある。その目で私を見つめている。
「スキルってなんですか?ここはどこですか?」
疑問をぶつけてみた。
私がそう聞いた瞬間、小屋の壁が弾け飛ぶ。壁側にいた者は吹き飛ばされ、ピクリともしない。
さっきまで壁があった場所から、緑色の何かが飛び込んできた。
周囲の男が叫ぶ、
「敵だ‼︎ゴブリンが入ってきたぞ‼︎」
小さな子供くらいの背丈で、髪は無く鼻と耳が異様に大きいくて目が尖っている。
見るからに不気味な生き物は刀や斧などの武器を持っていて攻撃を仕掛けてくる。
男たちも必死に抵抗しているが次々に侵入してくるゴブリンに押され気味なのはすぐに分かった。
「神父様‼︎まだ時間がかかるのですか?」
とゴブリンを切りながら男が大声で聞いた。
神父は私を見つめたまま言った。
「スキルが強大すぎる‼︎私をもってしてもまだ時間がかかる‼︎」
私は身動きが出来ないまま同じところに座っていた。
なんでこんなことになったのだろう?これは夢ではないのか?さっきまで親友と会っていたのに…。
私はここに来る前のことを思い出していた。
「ツバサ‼︎こっちこっち‼︎」
明るい声でタクミが呼ぶ。
私の名前はツバサで20歳の大学生で今日は小学校から友達のタクミと久しぶりに遊ぶ約束をした。会うのも久しぶりだ。
久しぶりに会ったタクミは昔から変わらなく、高身長で癖っ毛のある黒い髪を後ろに結んでいる。
「久しぶり‼︎元気だった?」
私がそう聞くと、
「当たり前じゃん‼︎」
と笑顔で答えてくれた。
その日タクミとは時間いっぱいまで語った。
どこかにいくよりも話をする方が楽しい私たちは4時間でも5時間でも話し続けられた。
しかし時間は無限ではない、明日もまた学校だ、名残惜しいがまた会う約束をして別れようとした時だった。
「ツバサはもう異世界転生したらどうする?」
とタクミは唐突に聞いてきた。
私は笑いながら言った。
「異世界転生とかマンガじゃないんだし、でも今よりなんか楽しそうだよな」
私もタクミも今が楽しくない訳じゃないが、なにか社会の歯車のように働き、老いていくのは嫌だと感じていた。
そのためこの異世界転生話はよくしていた。
けど今日は少し違った。
「もし本当に異世界に行けるって言ったら信じる?」
タクミは少し真面目そうにそう言った。
しかし、私は笑いながら
「行けるなら行ってみたいけど無理だろ‼︎」
と言った。
タクミも笑みを浮かべて
「まあ無理だけどな」
と言った。
その時だった。
歩いている私たちに1台の車が突っ込んでくる。
運転手の顔は見えないし、スピードが緩む気配も無い、逃げなければと動こうとするが何故か体が動かない。
タクミも一緒のようだ。
次の瞬間私たちは大きな衝撃と共に宙を舞っていた。
周りの人達も驚いて見上げている。
車は私たちを跳ね飛ばしてもなお、走り続けていた。
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