エピローグ

 さて、「戦いすんで日が暮れて」ではないが、航空自衛隊のミサイルの攻撃によって、凄まじいとも思える絶叫を残して、姿を消してしまった幽霊島が浮遊していた海上には、また元どおりの静かな波がキラキラと輝いていた。

 戦闘機隊はすでに帰還していて、高井戸たちも間もなく目黒基地へと帰って行った。

「操縦士くん。分かっておるとは思うが、今回のことはすべて極秘事項じゃからの…。決して一般の者に口外してはならんぞ…」

 帰りの双発機の中で、須部田はパイロットに口止めをするように言った。

「は、承知しております。博士、今回のことにつきましては極秘任務とのことで、上層部のほうからも厳しく云われておりますので…」

「それがええ、それがええ…。とかくこの世は〝見ざる〟〝聞かざる〟〝言わざる〟じゃ。それが一番ええ…」

「しかし、見事な作戦でしたね。博士、ああもあっさりと、とんがり山が真っぷたつにへし折れるとは、夢にも思っていませんでしたよ。お陰で化け物島は別の次元に逃げ込んだのか、あのまま消滅してしまったのかは分かりませんが、とにかくおめでとうございます。博士。

 ただ、残念だったのは奥山マスターや源さんに、化け物島の最期を見せてあげられなかったのが、非常に残念なところでもあります…、そうだ…。青山、東京に戻って二三日したら、もう一度ふたりで報告を兼ねて挨拶に行って見よう。あのふたりにはいろいろとお世話になったことだし、ぜひそうしよう…」

「本当ですか…。先生」

「それはええことじゃ。ひとつ、わしからもよろしくと伝えてくれんかの…。高井戸くん」

 高井戸も青山も、一刻も早くふたりに知らせてやりたいという思いは一緒だった。特に源三は、伝説の島〝幽霊島〟の第一発見者でもあり、知らせてやったらさぞ驚くだろうと高井戸は思った。また、今回はあまりに急な自衛隊の参入ということもあって、結果的にふたりを置いてけ堀にしたことは、本当にすまないと思う高井戸だった

 それから三十分あまり飛んで、双発機は国防省航空自衛隊目黒基地に到着した。双発機から降り立つと須部田は高井戸に封筒を手渡した。

「何ですか。これは…」

 高井戸が訊くと須部田はニコリと笑みを浮かべて、

「これはの…、わしからの祝いじゃ。それで奥山マスターに何か美味しいものでも造ってもらって、みんなで食べなさい…」

「いいんですか…。こんなにたくさん頂いて…」

「気にせんでもええ。これは、わしからのほんの気持ちじゃ…。それから、南像くん。君も一緒に行って祝ってやるとええ…。そして、わしも心から喜んでいると伝えてくれれば、それでええんじゃ。もう、わしも何も思い残すことはないとな…」

「いや、私も博士の言いつけとあらば、喜んでお供いたしましょう。それに私も幽霊島には、少なからず拘わりを持ってきましたからな…。

 そもそものきっかけは、高井戸くんが私のところに例の古文書のコピーを、持ち込んできたところから始まるんですが、まさかここまで話が大きくなるとは、夢にも考えてはおりませんでした…」

 南像も過去を振り返るようにしみじみと語った。

「あのう…、由美子さんも誘っていいですか、須部田博士。彼女とも何度も化け物島に行ってるし、ぜひ誘ってあげたいんです」

「構わん、構わん。青山の好きにするがええ…」

 こうして、話はまとまり三日後には奥山や源三の住む、由美子の故郷でもある港町にやってきていた。

「うわぁ…、ついこの間までいたのに、何だか懐かしい気がするなぁ…」

 というのが、改札を抜けて外に出た時の青山の第一声だった。

「おい、青山。そんな感慨に耽っているよりも早く行こう。マスターたちが待っているぞ」

 四人は揃って歩き出した。ものの五分もかからないうちに、「おくやま」という文字が染め抜かれた暖簾が見えてきた。

「ねえ、先生…。化け物島を撃退したって云ったら、マスターはどんな顔をするでしょうかねぇ…」

「さあな…、それは云ってみてからの楽しみだろう…。こんにちは…」

 高井戸が入口の戸を開けた。

「おや、どうしたんですかい。みなさんお揃いで…、また何かあったんですかい…」

 奥山は店の椅子に掛けて、お茶を呑みながらテレビを見ていた。

「それがですね。聞いて驚かないでくださいよ。マスター…」

 高井戸は前置きをしてから話し出した。

「つい三日ほど前になるんですが、須部田博士がまるで神業のごとくに、ものの見事に化け物島を撃退してくれたんですよ」

「ほう…、それはようござんしたね…。それなら、あっしにもひと声かけてくれればよかったんですよ。先生、それはともかくとして、おめでとうございます」

「それがですね。マスター、今回はあまりにも話が急だったんですよ。

 須部田博士から突然電話がかかってきましてね。これからすぐに青山を連れて、中目黒にある航空自衛隊基地まで来いと云われて、取るものも取り敢えず青山を誘って行ったんですよ。特に今回は自衛隊が一緒だったもので、僕たちだけの時と違って自由が利かなくてすみませんでした」

「なに、そんなことは気にしなくていいですよ。それはめでたいとですから、お祝いをしなくちゃいけませんね…」

「それなんですがね。マスター…、『これはわしからの祝いじゃ、奥山マスターに頼んで何か美味しいものでも造ってもらって食べなさい』と、云ってこれをよこしたんですよ」

 高井戸はポケットから封筒を取り出すと奥山に渡した。

「よーし、それではひさしぶりにやりますか…。今日は店じまいだな…。おーい、容子。店を閉めて表に臨時休業の札を下げといてくれ…」

 奥山はそういうと、方々に電話をかけると食材の仕入れを始めた。

「マスター、僕も何かお手伝いしましょうか…」

「いや、いいですから、先生はゆっくり休んでいてください」

「マスター、こういうことを云っちゃなんですが、長いこと独り暮らしをしてますから、結構なんでも造るんですよ。ぜひ、手伝わせてください。みんなのためのお祝いでもあるんですから…」

「ヨース、ほんじゃ、活きのいい魚でも獲ってくっか…。おい、青山おめえもちょっくら手伝ってけろや…」

 こうして、高井戸と由美子は奥山の手伝いに、源三と青山は何もすることのない、南像を連れて漁へと出かけて行った。

 それから三時間後、食堂おくやまの奥座敷では奥山の造った料理と、源三たちの獲ってきた魚で勢大な宴会が繰り広げられていた。普段はあまり酒の飲まない源三も、この日ばかりはほどほどに呑んで、すっかり上機嫌になっていた。

「いんやぁ…、こっだにめでてえごとはねぇ、あの化けもン島がないぐなって、おらもこれがらは安心すて漁ばでぎるがと思うと、嬉しぐてなんねえだよ。おい、青山ぁ、おめえも呑んでっが…。それがら由美子ももっと呑め呑め…、おらが注いでやっからよ。コップば持ってこっちゃこう…。おめえも、もうわらしじゃねえんだがら、酒ぐれぇどんどん呑め…」

 呼ばれた由美子はふらふらっとした足取りで、もうほろ酔い加減を通り過ぎているようだった。源三の前までくると、どっかと腰を下ろした由美子は胡坐あぐらををかいて座った。

「こら、由美子…。おめえ嫁入り前の若い娘っ子が、そだな格好で座るやつがあっか。ちゃんと座れ」

「何よ…。伯父さんだって酔ってるくせに偉そうに、何さ…。あたしね…。あたし、結婚することに決めました…」

「なぬ…、け、結婚だぁ…。だ、誰とだ…。どごのどいづとだ。そいづは…」

 源三は一遍に酔いが醒めたようにだみ声で怒鳴るように訊いた。

「青山くんとよ。あたし、青山くんのお嫁さんになることに決めたの…」

 そのひと言を聞いて源三も驚いたが、その場に居合わせた全員の動きが一瞬止まったかに見えた。しかし、一番驚いたのは何といっても当の青山だった。

「ええ…、ぼ、僕の…」

 青山は、そう言ったきり絶句してしまった。

「いんや、ダメだ…。第一でえいち、おめえらはまんだ学生だべ…。人間っつうのはな。ちゃんとした生活の基盤があって、初めて成り立つもんなんだぞ。生活費はどうすんだ…。生活費はよ…」

 源三は完全に酔いから醒めていた。

「なーんだ。そんなことか…、伯父さんはもう忘れたの…。あたしにはね。一生使ったって使い切れないほどの、とんがり山の麓で見つけた宝石の首飾りがあるのよ。あれさえあれば、あたしたちは一生遊んで暮らせるわよ」

「ああ…、やんだ、やんだ…。由美子、おめえはいつがらそっだな、嫌な性格になっちまったんだ…。それに第一青山は承知してんのが…。何とか云ってみろ。青山…。おめえらいづがら出ぎでだんだ…」

「………」

 青山は声が出なかった。

「ねえ、ねえ。伯父さん、せっかくあたしを呼んどいて、お酒は注いでくれないの…。ねえ、伯父さんってばぁ…」

 由美子は相当酔いが回っている様子で、さかんに源三に酒を注ぐように要求していた。

「おい、青山…。今、由美子さんが云ったことは本当なのか…。それより、君の気持はどうなんだい」

 高井戸が小さな声で訊いてきた。

「はあ…、僕も初めて聞いたんで、びっくりしてるんです…」

「そうか…、そうだろうな…。しかし、いくら酒に酔っているからとはいえ、由美子さんも思い切ったことを云うもんだよな…。しかしな、青山。人間は酔っている時こそ本音を云うもんなんだぞ。由美子さんが本当にそう思っているのなら、君は素直にそれを受け止めてやるべきだと思うんだ。僕はね…。

もし、君にためらいがあるのだったら話は別だがね…」

「はあ…、僕も由美子ちゃんのことは嫌いではありません。いや…、むしろ好きなんです。大好きなんです。ですが、先生。僕も由美子ちゃんも二十歳になったばかりですし、僕自身もまだ結婚がどうのこうのなんて、考えてもいませんでした…」

「だがな、青山…。人生には潮時ってものがあるんだ。人の人生におけるチャンスと云ってもいい。人間は、その潮時を逃してはならないんたよ。

 そのいい例が、この僕だ。一度潮時を逃した者には、そう簡単には廻ってこないんだ。だから、君には廻ってきたチャンスは、確実に捉まえておくことを進めるよ。僕はもうすぐ三九歳になるが、潮時を逃したばかりに未だに独り身だ。僕みたいにはなるんじゃないぞ。青山…」

「はあ…」 

 ふたりでボソボソと話していると源三が、

「こら、由美子…。どごさ行行ぐんだ。まだ話は終わっちゃいねえぞ…。まったぐ、もうあいづには酒は呑ませらんね…」

「まあ、まあ。いいじゃないですか。源さん、由美子さんだって、もう子供じゃないんですから…」

 がなり立てる源三を奥山がなだめていた。

由美子はふらつく足取りで、高井戸と青山のところまでくると、ふたりの前にどっかりと腰を下ろした。

「やあ、由美子さん。だいぶご機嫌のようですね…」

「高井戸先生も青山くんも、。ずいぶん冷たいじゃないんですか…

 この前は、あたしだけ置いてくなんてひどいですよ…。どうして連れてってくれなかったんですか…」

「いや、あれにはいろいろと事情があってね…」

「事情って、どんな事情なんですか…。

 青山くん、あたしにもお酒をもっと注いでよ…。あたしはね。あなたのお嫁さんになってあげるんだから、いいでしょう…。早く注いでよ…」

「ああ…、ダメだぞ。青山、由美子にそれ以上呑ませんでねえ…。

 どんれ、しょうがねえ。家さ連れて帰っか…。高井戸先生、悪りいんだどもちょっくら手ぇば貸してもらえねべが…」

「ああ、いいですよ。僕が負ぶっていきましょう。道案内のほうはお願いしますよ」

「あ、それだったら、僕が行きますよ。由美子ちゃんの家なら、僕がわかりますから…」

 青山が立ち上りかけた。

「いんや、青山はいいがらこごで呑んでろ。おめえが来っと、まだ由美子が騒ぎ出すとなんねえ…」

 と、いうことで、高井戸と源三が由美子を家まで連れて帰った。

「いや、いや、由美子さんにも驚きましたね。あんなに酒が弱かったんですかねぇ。最近の若い娘は平気でカパカパ呑むって聞いてましたが、由美子さんのような弱い娘もいるんですねぇ…」

 奥山は、ほとんど泥酔に近い状態で、高井戸に背負われて行った。由美子を思い出しながら言った。

「時に、マスターひとつ伺いますが、あの由美子さんのご実家はここから近いんですかな」

奥山の酌を受けながら南像が訊いた。

「近いも何もすぐそこですから、ものの三十分もするかしないうちに帰ると思いますよ」「それがね。南像先生、由美子ちゃんのお父さんという人は、会社を三つくらい持っていて、休みもろくに取れないんだそうなんですよ」

「ほう…、それはすごいな…。すると、青山くん君は、もしかして逆玉ということになるのかな…」

「逆玉だなんて嫌ですよ。南像先生、そんなぁ…。それに僕は卒業したら古郷(くに)に帰って、親の跡を継いで漁師になろうと思っているんです。だから、僕には会社の社長なんて似合わないですし、やっぱり漁師が一番いいと思います」

「ほう、漁師かね。君の生まれはどこだったかな…」

「福岡の小さな港町です。僕が漁師になって、初めて魚を取ったら先生にも送りますよ。奥山マスターにもね…」

「それは嬉しいいいですね。あっしも魚は大の好物なんですよ。これは楽しみがひとつ増えましたねぇ…」

「ただいま戻りました」

「今帰っただよ」

 高井戸と源三が帰ってきた。

「青山に聞いてはいましたが、すごい立派なお宅でしてた。それにいきなりセントバーナードが飛び出してくるんで、僕は犬が苦手なもんですから、びっくり仰天しましたよ」

「アハハハハ…、僕も最初は驚きました。でも、あの犬はもの凄く臆病で番犬にもならないって、由美子ちゃんが云ってました」

「それはご苦労さまでしたねぇ。由美子さんのほうは大丈夫でしたか。さあ、改めて一杯やってくださいよ。高井戸先生も源さんも…。おーい、容子ビールをもっと持ってきてくれ…」

「はーい、ただいま…」

 おカミの容子がピールを運んできた。

「さあ、冷たいのをお持ちしましたので、おひとつどうぞ」

 持ってきたビールを注ぎ終えて、容子は店のほうに下がろうとした。

「容子、お前もこちらに来てみなさんと一緒に頂きなさい。どうせ、店は臨時休業の札も出してるんだし、こっちに来て頂きなさい」

「さあ、さあ、奥さん。遠慮なんかなさらずに、こっちに来てご一緒にどうぞ」

 南像も気さくに声をかけてきた。

「どうぞ、どうぞ。こちらにきて座ってください」

 高井戸にも声をかけられて、

「そうでかすか…、それでは一杯だけ頂こうかしら…」

 そういうと容子は、エプロンと三角巾を外して座敷に上がってきた。

「さあ、奥さんも一杯やってください…」

 高井戸がグラスを渡してビールを注いでやった。

「いつもすみませんね。旦那さんのことを引っ張り回してばかりいて…、お店のほうも奥さんひとりで切り盛りしてたんじゃ、大変だったでしょうに…」

「ええ、もう慣れてますから気にも留めませんでした。それに、うちの人が何にでも首を突っ込みたがるのは、ほとんど病気みたいなものですし、わたしもまったく気にしてませんから…」

「おい、おい。あまり人聞きの悪いことを云うなよ…」

 奥山は苦笑いを浮かべた。

「あら、由美子ちゃんが見えないようですけど、どうかしたんですか…」

「どうしたもこうしたもねえ。由美子のやづベロベロに酔っぱらってっから、高井戸先生とふたりで負ぶって家さ送ってきたどこだ…」

 源三が容子に注いでもらったビールを呑みながら言った。

「でも、わたしはお逢いしたことがないんですけど、その須部田博士って方はすごいお金持ちなんですか…。あんなにたくさん頂いて…」

「それはですな。奥さん、あの方は宇宙空間という分野で、世界的に名の知れ渡った有名な物理学者なんですよ。それで顧問料とか諸々の報酬が入ってくるでしょう。須部田博士にしてみれば、そんな金はほんの端た金に過ぎんのでしょうから、遠慮しないで頂いておきなさい」

「あら、まあ…。あれで端た金ですか…、うちなんか年中ピーピー云ってますのに、羨ましい限りですわ…」

「おい、容子。あんなりはしたないことを云うんじゃないよ」

「あら、だって本当のことですもの、仕方がないじゃありませんか…。さあ、先生おひとつどうぞ」

「いや、とにかく化け物島を撃退することができて、僕なんか本当にホッとしていますよ。今まではどんなことをやっても、いつも後手後手に回っていたのに、今回は見事に的中しましたからね。これも須部田博士が陣頭指揮を取って、航空自衛隊を動かしたからこそ出きたことで、やはり今回の殊勲者は須部田博士に尽きると思うんですよ」

「うむ、それは私も同感だね。さすがは『わしは政府にも顔が効くんじゃ』と、云っていただけに見事な采配ぶりだった」

 南像も高井戸の言葉に合わせるように、須部田の行動を高く評価していた。

「はー…、ほんにこれで、おらだちも安心して漁ばするごとができるで、これからはジャンジャン稼がなくてはなんねぇ…」

 源三も、今まではろくに漁もできなかった、うっぷんを晴らすように容子が注いでくれたビールを一気に飲み干した。

「あのう…。マスター、僕はお酒はもういいですから、ちょっとテレビをつけてもいいですか。見たい番組があるんですよ…」

「どうぞ、遠慮なんかしないで好きなのを見てくださいな」

 青山はテレビのスイッチを入れると、いつも見ている番組に切り替えた。バラエティー番組だった。すると、番組の画面に一瞬ノイズが走り画面が切り替わった。

『たたいま入りました、臨時ニュースを申し上げます…』

 というアナウンスが流れた。

「何だろう…。せっかくいいところだったのに…」

「どうした。青山、何かあったのか…」

 高井戸がビールを呑む手を休めて振り向いた。

 続いて画面がスタジオのようなところに移って、アナウンサーが緊張した面持ちで現れた。

『ただいま入りました、臨時ニュースを申し上げます…。

 日本時間の今朝未明頃、インド洋上の沖合二百海里附近に、不思議な島のようなものが現れたという連絡が入りました。消息筋の伝えるところによりますと、この島のようなものは異様な形態をしており、島の中央部には山が在ったと思われる形跡もあり、島全体の至るところにはまるで爆撃にあったように、大小のクレーター跡が見られたということで、島自体はしばらく浮遊していた模様ですが、次第にその姿を崩して行き最後には海底に没したということであります。繰り返します。日本時間の今朝未明頃…、

                                   了                                                                                                                                                                     

                         2022.08.07.14:48 by b.satoh


    あとがき


 この作品は私にとってというか、いままで書いた作品の中では最もページ数の多い作品になった。プロローグ・エピローグともに七ページ、本編が各一章十から十一ページにかけて、それも十章にも及ぶのだから書いている途中で、半ばうんざり君になったことも事実である。お陰で、二月に書き出して脱稿したのが八月だから、実に半年がかりでどうにか仕上がったことになる。そんな理由から、今回はストーリーの説明解説文は一切書かないことにした。

 ただ、集中して書こうとしていたことは確かなのだが、私は昔から近くに人がいるとひとつのことに、集中できないという悪癖があった。

 しかし、三年前のある朝めか覚めると、昨日まで何ともなかった聴覚が五分の一くらいに落ちていた。それからは人の気配(自分の周りの)を気にせず、集中することができるようになったことも確かだ。

 また、私がどうして小説らしいものを書くようになったかというと、十数年前に軽い脳梗塞を起こして、身体機能にはほとんど支障はなかったものの、どういう訳か言語機能が若干思わしくなくなったことに起因している。

 言語と聴覚という、日常生活を送るうえで最も重要な、言語と聴覚というふたつの機能を失いかけて、前から小説を書いてみたいと考えていた私は、約五年がかりで書き上げたのが、処女作「廻りくる季節のために」である。

どうせ、私のごとき素人の書いた小説など、誰も読んでくれないだろうと思いながら、『カクヨム』という投稿サイトに投稿したのがキッカケで、今では未完の分も含めると十篇あまりの作品が載っている。

 そんな訳で、創作意欲が途絶えない限りは、書いてみたいテーマは掃いて捨てるほどあるで、これからも私に許させれた時間の範囲内で書き続けたいと思っている。


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幻影島奇譚  佐藤万象 @furusatoha

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