「どうしてドーナツには穴が空いているのでしょう」
「僕」に質問したのは、同じバイトの星野さん。そんなの中まで火が通りやすいからに決まっていると思うのは、読者の私達も同じでしょう。
しかし、彼女が求める答えは、模範解答ではありません。哲学的な答えと言うそれは、純粋な子どものようにあどけなく綺麗な響きを持っていました。
星野さんは、どうして謎めいた質問をするのだろう。どのような答えを望んでいるのだろう。読み進めるごとに、心の中は疑問で満たされます。そして、えもいわれぬ余韻に身を委ねたくなるはずです。
まさに考察しがいのある秀作。そんな本作に登場する名前には、遊び心あふれる作者のセンスが光っています。私自身、クスリとさせられました。