デスクに置かれていたお菓子に手を出した結果、そのまま倒れていわゆる幽体離脱のようになってしまった、ひとりの男性営業マンのお話。
職場での臨死体験を描いた、現代ものの物語です。
なるほどタグの「ブラック」に偽りなし、なんとも重く地味にじっとりした質感が特徴的。
中盤まではそこまででもないのですけれど、主人公がこう、ちょっと悲しいというか……。
完全に彼自身の主観のみで描かれるため、誰の評価がどこまで正当か断定できないのが救いであり、また悩みどころでもあります。
自分に甘いようにも読めますし、逆に自己卑下がすぎるようにも受け取れる。
想像の余地、というのとは少しニュアンスが違う気もしますけれど、でもこの辺の解釈の自由度のようなものがとても好きです。
この辺、変に穿ちすぎたりせずにパッとそのまま受け止めた印象だと、特に最後なんかは本当に主人公が悲しすぎるのですけれど……。
彼に何かいいことあればいいな、と、ついそう願ってしまう作品でした。