-23- 真夏の真昼

真夏は、やっぱり、大星のことが好きだと感じた。いつも、どこにいても、大星の残像を感じることがあった。海で大星に声をかけられた時に、

「やっと再会出来た。」

と、思った。高校時代に、大星のLINEと真夏のLINEを交換出来なかったのも、真夏が大星のことを諦めきれなかったので、昌彦に不誠実だと思い交換出来なかったのだった。思えばユウナのLINEも知らなかった。


でも。今は、真夏には裕太がいる。真夏はもう、加藤真夏ではなく、安西真夏だ。このふたつだけで、真夏は自分にブレーキをかけられる。

それに、今、真夏は昌彦に対する感謝の気持ちでいっぱいだった。


ユウナが、茶髪の束をくるくると手で回しながら、言った。

「真夏って、真昼が似合うよね。やましいようでいて、やましくない。夜とか、ぐっすり眠っているようなイメージ。」

「子育てがあったからね。でも、私にも子供が出来るまでの時期があったから。」

「そういうことは言わない。もうさ、うちら、これからも会ったりしようよ。みんな、片想いで、みんな、まだ未練はあるかもしれないけど、浮気はなしで。だって、片想いだったから一生会えないとか、悲しすぎるよ。」


真夏は、にっこり笑ってユウナに言った。


「ユウナ。今度、編み物を教えて欲しいな。」


- 真夏の真昼。 完 -

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真夏の真昼。 鈴木すず @suzu_suzuki

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