第8話 違和感の…

 波のさざめき、太陽の輝き、それを反射し夏場限定の強い輝きを放っている海、そして鳴り響く人々の話し声。

 これぞ夏の海、シーズンをすぎると釣り人しか来ることのないこの海も、夏になると人で賑わう。


 そして俺も普段は来ないこの海に来ている。

 それはなぜか、姉さんとの約束を守るためだ。

「ごめん歩!待った?」


 そう謝りながら現れた姉さんはスケスケのTシャツを着ており、そのスケスケのTシャツからはタンクトップビキニが薄っすらと見える。

 頭にはスポーツキャップをかぶり元気な笑顔を浮かべている。


「全然待ってないよ」


「そっか、よかった!」

「それじゃあ早速泳ごうよ!海!!」

 勉強は苦手だがスポーツは得意な姉さん、勉強は得意だがスポーツは苦手な俺。

 趣味も真反対で姉さんは外で遊ぶのが好きだが俺は家でゲームをしているのが好き。


 さて問題です、俺は泳げるでしょうか?泳げないでしょうか?


 そう、泳げません。

 ということで”速く海で泳ごうよ!”と誘ってくる姉さんを置いて俺は浮き輪に空気を入れる。

 が、どれだけ息を吹き入れても浮き輪は全く膨らまない。

 心配そうに見ている姉さんに意地になって助けを求めることもせず頑張り続ける俺。


 とうとう姉さんから、

「大丈夫?全然空気入ってないけど…顔真っ赤だし」

「僕がやろうか?」

 と提案される。

 俺は渋々助けを受け入れた。

「うん…」


 姉さんが空気を入れ始めると先程までは全く空気の入らなかった浮き輪はみるみるうちに膨らんでいく。

「何故だ…さっきまでは全く入らなかったのに」


「肺活量が足りないんじゃない?」

「あ、これ間接キスだね?」


「……」

 言われて気づく、俺は恥ずかしさと悔しさで何も言い返すことができなかった。

 そんな俺の姿を見てニシシといたずらっ子な笑顔を浮かべる姉さん。


 だったが少し冷静になって間接キスの部分に自分で恥ずかしくなりどんどんと顔が赤くなっていく。

「ほ、ほら浮き輪も準備できたし速く泳ごう海!」


 恥ずかしさを紛らわすように姉さんは走って海に急ぐ。

 その後ろを早足で追いかける俺は、やはり姉さんだな…。

 という安心感と恥ずかしくなるなら言わなければいいのに…という呆れを感じながら笑顔になる。

「やっぱり姉さんは姉さんだな」

 とつぶやいて気づく、俺は段々と兄さんが姉さんになったことへの違和感が消えていったいることに気づいた。

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兄さんが姉さんになって彼女になった話 真堂 赤城 @akagi33229

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