第23話 白狐族

傷だらけの獣人たちの真ん中に降り立つゴロー。


「大丈夫?」


ゴローの言葉に呆然としていた獣人たちも我に返り。


「あ、ありがとう。貴方様がいなければ里は全滅していたでしょう、心より感謝致します。」


里のリーダーなのだろうか?女だてらに屈強な体格で、剣を持ち身体中傷だらけだ。隠れていたであろう者達も森の中から集まり、リーダーがお礼を言うとそれにならい頭を下げていた。


「何人かはやられてしまったのかな?ごめんね、もっと早く気づけば良かったんだけど」


「いえ、助けて頂いただけで十分です。ところで、あなたは………………神の使徒様か何かでしょうか?」


まあ、空飛んで見えない力で冒険者を難なく撃退するなどこの世のものではないと思うのは当然。


「いやいや!そんな大層なもんじゃないよ、ただの人間だよ」


「ただの人間ですか………………」


“こりゃ信用してないな、まあ自分だって超能力がなくてこんなことする人間がいたら怖いよな ”


「それでこれからどうする?」


「そうですね、冒険者が帰って来なければ調査としてまた違う人間が来るでしょうからこの里は放棄しないと…………」


他の獣人たちも一様に落ち込んだ顔をしている、せっかく築き上げた自分たちの居場所を放棄せざるを得ないとなれば当然だろう。移動したとしても、また1から基盤を整えるとなれば時間もかかるし人間が来ない保証もない。


「うちの村に来る?」


「え?うちの村?」


突然のことにそのリーダーも驚きの表情だ。


「そこはほとんどが亜人だから安心して暮らせると思うよ、インフラも整ってるし住居も食料もあるから」


「そんな村が存在するのですか!いや、是非お願いしたいと思うのですが………………よろしいのですか?何のお返しも出来ませんが」


「お返しなんかいらないよ、仲良くしてくれればね」


「それはもう!あの、貴方様のお名前は?私はこの里の長をさせてもらっているシルビアと申します。」


「シルビアさんね、俺はゴローって言うんだ。じゃあ早速行こうか、必要な物を持ってここに集合してくれる?」


「は、はい!よしみんな、ゴロー様の言う通り必要な物を持ってここに集合してくれ!」


傷を負った者が多数いたが、今まさに命の危機という者はいなかったので。


「傷を負った人達は村で治療するから少し我慢してね」


ゴローの言葉にシルビアは不思議に思う。村が近くにあるのか?それに女子供、負傷者もいるのだからそれほど早くは進めない。しかし、それを聞くことはしなかった、今はゴローを信じることしか出来なかった。


そして、しばらくして広場に住民が集まると。


「ゴロー様、全員集まりました。」


「わかった、忘れ物はない?あったら取りにまた来ればいいけど」


シルビアもその他の者たちも頭の中に?マークが出ている感じだ。こんな近くに村などあっただろうか?そんなことを思っていると。


「じゃあうごかないでね、移動するよ」


「え?」


「転移&転送!」


シュン!


一の村の外れにゴローを中心に獣人たちが現れる。獣人たちは突然風景が変わりまたも呆然としていた。


「さて、とりあえず治療かな?他の人達はご飯にしようか」


シルビアは困惑しながらも。


「えっと、あのゴロー様?これは一体………………あれ?」


シルビアは全く状況を掴めていない、その他の獣人たちも同様に何が起こったのか理解出来ないでいる。


「まあ、説明よりもまずはやる事やろう」


「そ、そうですね!まずは負傷者の治療を」


村の中心へと向かう一行はおのぼりさんのように、見たこともない近代的な建物の数々に口を開けて眺めていた。


「ここが病院、怪我した人は中に入って治療してもらってね」


ゴローが指さした建物は3階建ての鉄筋コンクリート製の立派なビル。中へ入るとアルコール臭漂う立派な設備に白衣を着た獣人。


「あ、ゴローさん、その人たちは?」


白衣を着た1人の獣人がゴローに尋ねると。


「この人たちの治療お願いね、ここの住民になる人達だから」


「はい、かしこまりました。さあさあ怪我をしち方々はこちらに、大変だったでしょう」


血を流し怪我をした獣人たちはまだ理解出来ずに呆然としている。シルビアも同様怪我をしているが、痛みなど感じる前に頭の整理が追いついていないようだ。


「はい、ちょっと染みますよぉ、消毒しますからね」


「うひー!しみる!」


怪我をした1人が悲鳴を上げていた。シルビアも消毒されると。


「く!これは?」


「傷口についた細菌を殺さないと感染症にかかりますからね、少し我慢して下さい」


「細菌?感染症?」


そうしているうちにゴローは残りの獣人たちを食堂へと案内する。


「はい、いらっしゃい。あ、ゴローさん」


「申し訳ないけどこの人たちの食事お願い」


「はい!かしこまりました!さあさあ皆さん椅子に座って待っててね、すぐに用意しますから」


食堂の人達はすぐにゴローの意向を察して調理を始める、こういったことは日常茶飯事なのだろうと理解出来た。


しばらくすると色んな料理がテーブルに並べられる、見たこともない豪華な料理の数々に子供たちは落ち着かない様子だ。


「冷めないうちに食べて食べて、まだまだあるから遠慮しないでお腹いっぱい食べてね」


ゴローがそう言うと一斉に食べ始める獣人たち。そのうち治療を終えたシルビアたちも食堂に入ってきた。


「治療も終わったみたいだね、シルビアさんたちも食べて体力回復して」


「こんな食事まで………………ゴロー様ありがとうございます」


シルビアは膝をついてお礼をする。


「うん、とりあえずシルビアさんも食べて。話は明日しよう、寝床用意してくるから」


「何から何まで本当に………………」


涙を流すシルビアの背中をポンポンと叩きながらゴローは席へと案内する。


「リーダーは大変だったよね、いいから食べて元気出して」


労いの言葉に更に泣きじゃくるシルビア、それでも泣きながら食べるシルビアを見て可愛いと思ったゴローだった。




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転移したこの世界では家賃収入でスローライフをしようと思ってます。 プラゴミ @yuiiti9177

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