第4話

翌日は早朝から移動し始めた。ゴルドーと一緒に暮らしているときに訓練の一環として二泊三日のサバイバルを何度かしたことがあったためベッド以外で寝ることは初めてではなかったものの訓練サバイバルの時は周りにある草を布団代わりにしてた。

しかし今回は布団代わりになる分だけのの草が無い。

毛布があったのが唯一の救いだったが、地べたで寝ることになり少し寝不足気味になった。

そのため大きなあくびが出てきてしまう。

「夜はよく眠れなかったみたいだな。」

「地面で寝るのは初めてだったからね。」

「まあ、あと一泊すれば王国につくからあと一日の辛抱だ。」

「リュウガは野宿になれてるのか?」

リュウガはエインと話すうちに『さん』を付けて呼ばれることがむず痒くなってきたため、「呼び捨てでいい」と言ったのでエインはリュウガを『さん』付けで呼ばないようにしたのだ。

「向こうの修行で野宿は何度もさせられたから慣れたもんだ。」

そこから極東についての話を聞いているとお昼手前になってきた。

「だから、俺の師匠が極東の中で最強の剣士ってわけだ。」

リュウガは彼の師匠が若いころに山ほどの大きさのある龍を一人で倒したことや山を丸呑みできるほどの大蛇を倒したことなど師匠の武勇伝をたくさん聞かせてくれた。

「そういえば、エインに師匠みたいな人はいるのか?」

リュウガは、次はエインの話が聞きたいというように話を振ってくる。

「僕の師匠といえば山にある小屋で住んでいた時の……どうしたんだリュウガ?」

先ほどまで笑顔で話していたリュウガの顔が一瞬にして険しいものに変わったのである。

「エインはここで待っていろ」それだけ言うとリュウガは御者の方へ移動していく。

おかしいと思ったエインは無属性魔法の『サーチ』を発動させる。すると今走っているこの馬車の周りに人の反応が80近くあった。

(エイン、これは盗賊の類だ)

(やはり出てきたか。僕とリュウガで対処できると思うか?)

(リュウガの実力はおそらく君と同じかそれ以上だ。めったなことがない限り余裕で対処できる。)

(お前も少しは力を貸してくれ。単純計算でも一人あたり少なくとも40人はやらないといけないんだからな。)

(了解した。)

エインは自身に宿っている神【フォルトゥ】と賊の対処の相談をしていると馬車が止まり、リュウガが前から戻ってきた。

「賊が来た。エインは馬車に残っていろ俺が賊を追い払う。」

リュウガはこの旅の途中で二回賊に襲われたことがあり悉くを討ち果たしてきたと昨日聞いたため、このような申し出をしてくるのは想定の範囲内だった。

「僕も戦うよ。リュウガほどではないけれど対人戦は得意なんだ。」

「ダメだ。一歩間違えれば死ぬんだぞ。武器も持たないエインでは危なすぎる」

「そのことも分かっている。そのうえで戦うと言っているんだ。」

エインの真剣な眼差しを見てリュウガは一つため息をすると

「そこまで言うなら一緒に戦おう。賊は恐らく馬車を囲むように接近してきているはずだ。狙いは馬車の積み荷のはずだから直接馬車を狙ってくることはない。二人で協力して馬車が通れるだけの道を作り一気に駆け抜けて逃げる。この作戦で行こう。」

リュウガは最小限の戦闘でこの状況を切り抜けようとしている。

「その作戦は戦闘は最小限で済むが、安全性がない。安全にここを切り抜けるなら賊を全員倒して進んだ方がいい。」

「どっちでもいいから早く賊をやってくれ。積み荷が盗られたら俺の責任になるんだからな!!」

御者は早くこの状況を脱したいらしくエインとリュウガを急かしてくる。

「エイン、お前の力信じるぞ。」

そう言うとリュウガは外に出る。それに続いてエインも外に出る。

「賊を全員仕留めてここを脱出する。いくぞ!」

「僕は西から北にかけて敵を殲滅する。リュウガは東から南にかけて敵を殲滅してくれ。」

「了解。」それだけ言うとリュウガは東の方へかけていった。

残されたエインは無属性魔法の『ブースト』を発動させると西に駆け出した。


~西側の森~

「ガキが一人こっちに来るぞ」

「何!?どういうことだ!こっちの情報が漏れたのか?」

「とりあえずその話はあとだ。ガキ一人に狼狽える必要はねぇ。お前ら早く片付けてこい。」

馬に乗った大男が近くいた仲間にエインの相手をするように指示を出す。

指示を出された賊たちは武器を構えるとエインに向かって駆けていく。

(エイン来たぞ。)

(目視でも確認できた。援護を頼む。)

(了解した。後ろは任せろ。)

エインはさらに加速して賊に近いていく。加速と同時に右手に魔力をため『インパクト』を発動できるようにする。

「こっちに来るぞ!矢を放てー」

一人に対して過剰と思えるほどの矢がエインに降り注ぐ。

盾も何も持たないエインは飛んでくる矢を防ぐすべがない。

と賊たちは思っていた。エインが使用する無属性魔法は無色透明な色をしているため遠目からでは発動しているかすらわかりずらいため賊は魔法で守るという選択肢を除外していた。

エインは右手を矢が飛んでくる方向へ向ける。すると矢は吹き飛ばされ、エインに届くものは一本もなかった。

「ちゃんとやつを狙え。ポンコツども‼」

「ちゃんと狙ったぞ。矢が勝手に曲がったんだ‼」

「くそが‼やつを直接狙え‼囲んでタコ殴りだ。」

大男は剣を抜くと馬を走らせる。それに続いてほかの賊も走り出す。

「ガキだろうと容赦しねーぞ。」大声を出しながらエインに斬りかかる。

大振りの一撃を軽々避けると馬の脚に一撃いれる。

体勢を崩した馬は勢いよく倒れこみ、上に乗っていた大男は振り落とされる。

そのまま勢いを殺し大男の方を向くとそのまま殴り掛かる。

「卑怯だ……ごぁふ」

ブーストをかけた一撃は容易く大男の意識を刈り取る。

遅れてやってきた、残りの賊たちは大男が殴り倒されているのを見て固まる。

「嘘だろ……隊長があんなガキに……」

「隊長が敵わない相手に俺らが勝てるわけねぇ」

「逃げろーーー」

賊は勝算が無いとわかったとたん来た道を戻って逃げていった。

エインは大男が使っていた剣を持つと逃げていった賊を倒しに向かう。

戦意の無い敵を葬るのは容易く、全滅するのに時間はかからなかった。

(私の援護もいらないようだね。)

(油断はしてられない。戦闘は何が起こるかわからないからね。)

(わかっているよ。後ろの警戒はしているから安心して。)

(了解。)

エインは大男の剣を持ったまま北に移動していった。

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終焉の先の物語 @569312

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