メスイキ太夫の「桃太郎」
高橋 白蔵主
「艶話 ももたろう」
えー、毎度ばかばかしいお話でござんす。
古今東西、伝説とか御伽噺というものはいろんなアレンジ、解釈が入り乱れておりますね。
例えば雷様ってえ、これは流石に無教養のお大尽でもご存じだと思いますが、え、ご存知ない?
雲の上に乗ってゴロゴロ、雷を鳴らして人間のヘソを取っちまう鬼の高木ブーです。対になるのは風神様だ。こちらは扮した方はいらっしゃいませんが、屏風絵なんかで見たことある方もいらっしゃるんじゃないですか。俵屋宗達さんですね。
アハハ、廓に来てバカになって帰ろうってのにひとつ賢くなっちゃうんじゃ世話ござんせん。え?賢くなるのは賢者タイムだけで結構?ああこりゃ、出過ぎたことを申しました。
ともあれその雷様のお弁当なんかは三段の豪華なお重なんですってね。一番上のお重には目ん玉がコロコロ、煮っ転がしてあるそうで、これがまた美味いんだそうです。わっちは食べたくないですけどね。雷様の子供、ちび雷様がやっぱりこれを美味い美味いって召し上がって、さあ二段目だ。
見るとこいつはしっかり煮締めたヘソがみっちり。いやね、煮物ばかりだなんて文句言っちゃいけませんよ。甘辛く煮たものはこの時代、どれもご馳走でござんす。
そんでやっぱりちび雷様、二段目も美味い美味いってペロリだ。
「次の段は何が入ってんのかなァ」って無邪気に開けようとしたら雷様が急に大人の顔になりましてね、ばかもん、って手でお重を押さえちまったんです。なんだろって見上げるちび雷様を睨んでひとこと。
「子供のくせに、ヘソの下を覗く奴があるか」
……。
………。
あれ?
お分かりになられない?お大尽、わっち、これまだ枕なんですが本当にお分かりになられない?
だからですね、目ん玉、おへそ、ときてその下に詰めてあるものが何なのかって見当おつきになられない?
やだな、臍の下ですよ、お大尽、わっちの臍の下なんて何回もご覧になってるじゃござんせんか、言わせんなバカ恥ずかしい。
え?マジで分かんないの?
……。
ああ、まあいいです。じゃあもうほっといて本題の桃太郎の話しましょうか。落語で桃太郎を演るってあんまり聞いたことないでしょ。知能が犬以下のお大尽でも流石に桃太郎のお話くらいはご存じでがんしょ。
桃から生まれた桃太郎が、犬猿雉を引き連れて鬼ヶ島行って財宝ぶんどってめでたしめでたしってアレですよう。
っていけない、一息で全部喋っちまったけど、まあそんな御伽噺ですけどね、夜伽の前なんでこれをもうちょっと色っぽくアレンジしようって寸法です。
いいですか、まず、わっちの桃太郎はね、女の子なんですよ。もうこれがピチピチピーチの弾けるようなキュアモモ太…え?なんです?形容詞がオッサンくさくて没入できない?
あのねえ、お大尽の終わってる知的レベルに合わせてんのにこれはひどい言い草ですよ。まあようがす。もっとレベル下げますね。
モモ太郎は鬼も恥じらう18歳、法的にも問題ない成人年齢です。
都合のいいことにその辺の木と比べても木のほうがまだ賢そうな知的レベルでおっぱいはドーン、扇情的な薄着でっていうか、いいや、もってけ、ビキニアーマーだ。もちろんお供の犬猿雉も全員女の子にしちまおう。人妻、ロリっ子、ツンデレです。全員、法的には問題ない成人年齢だ。どいつもこいつもきび団子とか媚薬でうまいことキャイキャイやって鬼ヶ島に到着です。
でもって展開の都合上、尺のほとんどをエロ漫画の鬼退治プロットでクリアしましょうか。2ページ目からは濡場展開、エイエイ、フンフン、アンアン、最後はお決まり、途中まで鬼の側が攻めだったのにモモ太郎の底なしのスケベに搾り取られて「もう許してくれえ」で干からびてシオシオ、平和なワニマガジンエンドです。
でも、わっちの桃太郎は、コンビニエロ漫画のオチよりもうちょっとだけ続くんですね。
鬼を無事に退治してきた桃太郎、時の帝に迎え入れられました。おう、モモ太郎オブジョイトイ、でかした、褒美を取らせる。
帝、なんかフランクですけどまあ小切手をポン、お前の働きの値付けだ、好きな額を書けって寄越してくれたんですね。「遠慮すんな、おれ帝やからな!」って、さすが帝、男前ですね。
モモ太郎、しばらく思案して自分のつけ値を書き始めるんです。それを見ていた犬猿雉、ひそひそと幾らなんだろうね、通貨どこのにするのかな、やっぱドルよね、なんて盛り上がっております。
でもなかなかモモ太郎が書き終わらない。ゼロ何個書くんでしょう。流石に痺れを切らして犬が覗きに行こうとしたら帝がピシャリ。
「やいバター犬、モモのつけねを覗く奴があるか」
え?
お大尽、マジで分かんないの?
ほら、モモと腿がかかってんの、腿、ふともも!ここのつけ根に何があるかなんて、
あっ、ダメ、お大尽、ダメでござんす、やっ、あん、あああ
(了)
メスイキ太夫の「桃太郎」 高橋 白蔵主 @haxose
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