君を抱きしめる理由をくれ

藍ねず

君を抱きしめる理由をくれ

 ――動物と人の間に愛があるなら、異形と人の間にも愛があっていい筈だ。


 そんな声明を発信したのは何年も前の誰かだ。たった一人の声に賛同が集まり、潜んでいた異形が姿を見せ、人と共に歩み始めた。愛が世界を変えるとは正しく、愛で世界は変貌したのだ。

 異形と人が手を取り合い、見染めた相手と一緒に過ごす。誰にも後ろ指をさされることなく、誰もが愛した相手の傍にいられる。そんな世界になったのだ。


 これだけ聞けば健やかな美談かもしれないが、現実は少々血なまぐさい。異形と人の価値観は大いに異なっていたため、失踪・殺害・心中などなど、愛憎劇が多発したのだ。

 社会はそれでも愛を捨てられず、互いの価値観をすり合わせること幾数年。異形に人が混ざったのか、人に異形が混ざったのか。よく分からない世代が始まり、私もその世代の一人となった。


 我が母は人間である。人間であった。おそらく人間だった。父と恋に落ちた時点で母の人間という括りは破綻し、彼女は父に寄り添った何かになった。人というには少々ズレ始めており、母をなんと表していいのか私には分からない。


 我が父は異形である。銀色の長髪に真っ黒な肌。髪の奥には闇に浮かぶような赤い目が四つあり、巨大な両手は硬い鱗と爪に覆われている。下半身は蛇を彷彿とさせる姿をしており、我が家は父が這いずれるような設計だ。


 父は母を深く愛している。常に彼は母を屈強な腕に抱き、どこに行くのも一緒だった。父に口はないのだが、空気や態度が忙しなく母への愛を物語っている。


 母は母で父を愛しているので幸せそうだ。たとえ、その髪が根元から銀色に染まっても、目が赤くなっても、両足の内側が癒着し始めても、母は笑っていた。

 歩けなくなる母を見た父は大変嬉しそうだったと幼少期の私は記憶している。


 二人を見て育った私は、常々感じていた。愛は盲目であり、虚ろであり、危険なのだ、と。


 父の想いが深すぎて母の姿は浸食された。かつての母の写真を見れば黒髪黒目の可愛らしい人だったのに、今の彼女は人の姿すら保てずにいる。だが、本人は現状に満足しているようだ。父しか眼中にないのだから。娘の私でさえその瞳に映るのは極たまにしかない。


 昔の物語では異形が人の姿になって幸せになりました、なんて話も多くあったらしいが、それはやはり妄想に過ぎなかったのだろう。人から見た人の幻想。異形が全てを人に合わせることはなく、人も異形もそれぞれに合わせて歪んでいった。


「お父さんはね、本当はもっと体が大きいの。月光の下でしか会えなかったし、力加減も下手だったのよ。それでも、たくさん頑張って、お母さんの傍にいてくれるの」


 微笑む母は幸せそうに父の話をする。父の話しかしない。最近では父の話しかできないようになっているのではないかと怪しむのだが、彼女の傍には必ず父がいるので確認はしない。流石に命が惜しい。あの腕に掴まれたら秒で捻り潰される。冗談とかではなく本当に。

 母しか愛していない父からすれば、私なんて簡単に潰せるだろう。


「よかったね、お母さん」


 夢心地な母にはいつも決まった言葉を返す。これは会話ではない。決まったマニュアルを読んでいるようなものだ。母に私の返事が届いている気なんてしないもの。別にいいけど。


 基本的に私は溺愛夫婦の傍にはいないようにしている。いたところで私は空気になるのだ。だから自室か学校か市立図書館にいることが多い。街を歩けばおかしな姿ばかり見るが、自分も人のことは言えないのが現実だった。


 私の両腕は父と瓜二つだ。爬虫類よりもしっかりした鱗で覆われ、爪はすぐに物を壊す。両目は赤いし、髪の毛は伸びるにつれて毛先が白くなる特典付きだ。幸いなことは父と違って口があり、足は人間のそれと同じことだろうか。

 私は這いずるより走る方が好きな性分だ。あと普通に友達とのお喋りは楽しい。もしも口が無くて筆談を求められたら、何十本というペンの先を潰していたことだろう。ほんとに口があってよかった。


「今日の全国人間失踪者……三桁かよ」


 己に口があることに感謝しつつ、私は学校の屋上で呟いた。今日も家にいる時間を減らすため、友達とネットニュースを確認している。


「今日も多いな」


「もういっそ、失踪じゃなくて愛の逃避行とかに言い換えないのかな」


「考えてみろよ。「今日の愛の逃避行者数は」とかニュースで流れるの。おかしいだろ」


「事実を率直に伝えてていいと思う」


「それだと、人側の承諾なしの失踪まで愛に括られるだろ」


「あー、それはダメだわ」


 深く納得し、私の爪でも認識してくれるタブレットを操作する。壊さないように力加減に気をつけるのは慣れたものだ。生まれてこの方、何も気にせず触れたことなど一度もない。


 友達はエナジードリンクのプルタブを開けて雑談的に聞いてきた。


「殺害件数は?」


「二桁だよ。少ないって喜ぶべき?」


「どうだろうな」


 友達が缶に口をつける。彼の体の色は飲み物を嚥下するほどに変わっていった。いつみても綺麗な過程だ。


「それ好きだよねぇ」


「別に味は好きってほどでもねぇよ。色が好きなだけ」


「なーるほど」


 全身を明るい緑に染めた友達。彼はお母さんが硬めのスライムみたいな異形で、お父さんが人だ。彼の体のフォルムは人間と同じだが、皮膚は半透明になっている。

 彼は爪から髪の先まで凝固したジェルのような存在だ。柔らかそうな質感で、口にした飲料によって全身の色が変わる。オレンジジュースを飲んだら全身がオレンジになり、トマトジュースを飲めば真っ赤になるので見ている分には面白い。


 彼自身は「目に優しいから」という理由でよく緑色に染まった。彼好みの緑になるにはエナジードリンクがいいらしく、鞄には必ずストックが入っている。


 緑の体に夕焼けを透かした彼は、エナジードリンクの缶を振った。


「お前は今日も家に帰らねぇの?」


「帰りはするよ。親に会わないよう時間を調整してるだけ」


「めんどくせぇな」


「あの間に挟まれてるよりマシ」


「何時頃にご帰宅予定で?」


「今日は二人して父さんの実家に行く日だから、十八時くらいを狙ってる」


 確認するが、まだ一時間半は時間がある。おやつを持ってきて正解だったな。袋を開けるのってすごく神経使うんだけど。


 鞄からグミの袋を取り出し、破かないよう注意して開ける。爪の先でお菓子をつまむが、形を少し歪めてしまった。まだまだ修業が足りないらしい。

 繊細な神経を使ってグミを口に放り込む。弾力のあるお菓子を咀嚼していれば、友達が真顔でこちらを見つめていた。


「グミ食べる?」


「お前、俺の体見てよく言えるよな」


「グミと君は違うもの」


 寝転がって故意に選んだ緑のグミを日にかざす。私のゴツい爪に挟まれたお菓子は力加減を少し間違えるだけで潰れそうだ。私としては綿毛を掴む程度の優しい感覚なのだが、それでグミが落ちないので正解なのだろう。綿毛なんて掴もうと思ったことないけど。


 足を夕暮れの風が撫でていく。人らしい下半身は微かに寒いと感じているのだが、奇態な腕を持つ上半身はちょっと暑いと思っている。おかしな混ざり方をした体は体温調整も下手くそで、下半身冷え性といえばいいのか上半身火照ほてり症といえばいいのかと悩む所だ。


 私の顔を覗き込んだ友達は、さも当たり前といった空気で自分を卑下した。


「俺はグミより弱いぞ」


「自分で言うなんて、空しいね」


 空っぽになった口にグミを落とす。透けた緑の瞳と視線を交えながら。綺麗なものだ。


「この軟弱な体を見ろよ。グミよりよっぽど噛み応えがないと思うぞ」


「別に君を噛みたいとか思ってないんだけどな」


「俺だってお前に噛まれたくはねぇよ。死ぬ」


「噛むまでしなくても、ちょっと力を込めたら君は死んじゃうさ」


 グミを奥歯で噛みちぎり、舌の上で転がす。青りんご味だ。エナジードリンクの味ではなかったか。


 無気力に空へ伸ばした両手は歪で、硬く、凶悪だ。


「普通の手が欲しい」


「ないものねだりこそ空しいぞ」


「そうだけどさぁ」


 大人の勝手な愛に辟易する。貴方達はきっと今の状況でいいのだろう。しかしそこから生まれた私はどうだ。友達はどうだ。何も望んでいないのに、人にも異形にもなりきれない何かになって、自分の存在を嫌ってる。


「愛の絞りカスってか」


「どんな愚痴を言ったって、なにもかわら、」


 不意に、友達の言葉が止まる。


 私の頬には勢いよく冷たい塊が張り付き、緑の粘着物で濡れてしまった。


 思わぬ衝撃と柔らかさ。相反する感覚に瞬きを繰り返し、寝転がった姿勢で友達がいる方を見る。そこには制服を着た緑の体があり、頭部は跡形もなく弾け飛んでいた。緑の粘着物が飛んでいる方向からして、衝撃を受けたのは後頭部から。


「あららら、ら」


 体を起こした私の頬から、緑の塊が滑って落ちる。


 べちゃりと落ちて、とろりと歪む。


 私は優しい緑から視線を外し、屋上の入り口に立つ異形を見つけた。


 全身を柔らかそうな毛に覆われた異形。先の丸い手足は二本ずつあり、真っ黒な爪がそれぞれ三本生えている。頭部にはねじれた角が二本生え、六つの見開かれた目がこちらを凝視していた。


 可愛くない異形は、なんとか意味の分かる話し方をした。


「おぉ、ななかか、すすいぃたた」


「あ、そう」


 私は友達の粘液を髪からそいで屋上に落とす。忙しなく瞳を動かす異形の口は、巨大な顔を端から端まで横断していた。大きな口だ。涎も垂れて、よほど良い匂いでもしたのだろう。


「そそ、れれ、たたべべるる」


「これか、これは駄目だよ。私の友達だから」


 私は友達と異形の間に立ち、背後では頭部のない体が力なく倒れた。音は静かな屋上に沈み、異形は口を大きく開ける。私の言葉など聞いちゃいない。


 ――これは一種の、愛の弊害だ。


 異形との共存を望んだ人と、賛同した数多の声。それが全て純粋な気持ちから沸き起こった筈もなく、異形が人を食べる案件ないし、異形が異形を食べる案件が多発した。


 誰かの愛にかこつけて、堂々と世界を物色して胃を満たす。人がそれを糾弾しても、異形から「食べることが愛なのだ」と言われれば行き止まりだ。先ほど友達と見た殺害件数にも「食べる愛」は含まれている。殺す愛も、隠す愛も、毎日必ず報道される。歪な話だ。


 殺害件数の報道を、人の危機感がまだ残っている証拠だと評価したのは誰だっけ。


 異形からすれば人と違う愛情表現なんだって、熱弁したのは誰だっけ。


 口づけだって相手を食べないように堪えてる。ちょっと齧ってしまうのは相手が愛しいから、なんて。


 ほざいた異形に、私は唾を吐きかけたい。


「彼に一目惚れでもしたのかな?」


「ああぁぁ、おおいいししそそうう、おおいいししいい、ぜぜっったたいい、おおいいししいい、ししっっててるる、おおいいししいい、ししっっててるかからららら」


 異形の口角が一気に上がり、六つの目が弧を描く。


 私は瞳孔を細め、異形の足が前に跳ぶと判断した。


 異形の足が地面から離れる。しかし前方には進ませない。近づかせる気など毛頭ない。


 異形の突進に合わせて駆け出した私は、右腕で茶色い頭を鷲掴みにした。


 暴れる異形を問答無用で地面に叩きつける。ちょっとだけ力を込めた右手の中では、異形の瞼から白い塊が零れていた。一つくらい目を潰したのかもしれない。私の握力は強いから。


「駄目だって言ったじゃん」


 指先に力を入れて異形の頭の形を変える。掌の筋肉を使って口を圧迫する。いつも外れないように注意しているストッパーが一つずつ緩んでいく気がした。


 異形が振り回した手から弾丸のように黒い爪が飛んでくる。盾にした左腕が痺れたが、友達のように弾けることはなかった。やはり彼は繊細なのだろう。


 異形を掴んだまま右手を上げる。浮いた異形は足も暴れさせようとしたが、私には関係ない。


 躊躇しない私は、再び異形を地面へ叩きつけた。


 地面が放射線状にへこむ。それに合わせて異形の後頭部も平らになる。腐葉土に似た香りの液体が流れたが、それが異形の血液らしい。透明なんだ。


 異形を離した右掌にも液体がつく。拭くのに使ったハンカチは捨てようと決めた。洗っても再使用には気が引ける。雑巾にでも変身させられるかな。


 痙攣している異形はもう暴れないだろう。私の手に掴まれたのに死んでないんだ。見かけによらず頑丈なのね。


 踵を返した私は、友達の頭部に集まる緑の物体を見下ろした。


 ずるずると這いながら友達の首から上に再計されていく頭部。ナメクジが集まるような光景に口の端を曲げれば、すぐに友達は体を起こしたのだ。


「あー、びっくりした」


「おはよう。再生遅くない?」


「突然だったからな、自分の状態を把握するのに時間使ったわ」


「その間に私は異形を壊しちゃったじゃん」


「さすが」


 軟弱な友達が拍手をくれる。私はため息を禁じえず、鞄を持って帰ることにした。何か美味しい物を食べて気分を変えたいのだ。


 友達も同様に鞄を持って立ち上がる。潰れた異形を置いて校舎に入れば静けさが耳を満たした。部活という文化を継承できなくなった学校では、留まる生徒の数も知れている。


 明日、屋上の破損について先生に言わないとな。


 ぼんやり考えていれば、繊細な友達が隣に並んだ。


「助けてくれた礼に、何か奢ってやるよ」


「やったねー。カフェの新作が飲みたいんだー」


「仰せのままに」


 歩くたびに体がちょっと波打つ彼は、弾ける前より髪が短くなった印象だ。さすがに完全再生は無理だったか。あれだけ勢いよく頭を飛ばされたからな、消失した部分もあるのだろう。


 ……やっぱりあの異形、腕の一本くらい引き抜いておくべきだったか。


 やめろ、そんな思考は好きじゃない。


 意見を即座に潰して下駄箱に着けば、友達が声のトーンを一気に下げた。


「悪かったな、驚かせて。お前の顔も汚れたし、嫌なこともさせた」


 友達は謝罪の目でこちらを見つめて、空気さえも真剣に塗り替える。そんな空気、私は嫌いなのだが。


 私は視線を斜め上に向けて、聞こえるようにため息を吐いた。


「別に、何ともないよ。自己中な相手が狙ってきたんだから。私も君も気づかなかったし」


「俺を置いて行ってもよかったんだけど?」


 力を抜くように、彼は笑う。友達に夕焼けが透ける。私はローファーの爪先を地面に打ちつけ、汚れなかった左手を彼に伸ばした。


 指で触れれば潰れそう。爪が当たれば壊れそう。鱗がかすれば破れそう。そう思うほどに柔らかく、繊細な友達。とっても弱くて、簡単にひねってしまいそう。


 私は彼に触れないギリギリで手を止めて、緑の瞳に微笑した。


「ズルいなぁ。置いていけないって知ってるくせに」


「あぁ、ズルいよ。その言葉が聞きたかっただけだ」


 悪戯っぽく目を細めて、友達は私の手の甲に触れる。冷たい水風船のような質感が鱗を伝い、私の背中を撫でていった。


「怪我するよ。君は弱いんだから」


「してもいいさ。すぐに治すから」


「こっちの気も知らないで」


「お前だって、俺の気なんて知らないだろ」


 彼の手が私の手を動かしてしまう。掌は彼の頬に触れ、私の巨悪な手が柔らかさに挟まれた。


 振りほどけば彼は怪我をする。少しでも動けば傷がつく。彼がしたいようにさせるのが最善で、どちらも傷つかない最良だ。


 分かってる。分かってる。あぁ、でも駄目だ。この時間を続ければ、火照った私が彼を蒸発させてしまうかもしれない。


 だからどうか、私を君に触れさせないで。


「行こうよ。奢ってくれるんだよね」


「そうだな、行こうか」


 潔く手を離される。後ろ手に組んだ掌は左ばかりが熱い気がして、私は自分を嫌悪した。


 愛は盲目だ。相手のことしか見られなくなって、他は二の次になってしまうんだから。


 愛は虚ろだ。視認できないのに誰もがあると叫ぶから、色んな形で具現化された。


 愛は危険だ。愛した者の為ならば、誰かを傷つけることを正当化してしまうのだから。


 だから私は愛が嫌い。両親の愛も、世界の愛も、大嫌い。


「げ、新作っていい値段するじゃねぇか」


「命より安いじゃん」


「そりゃそうだけど」


 スマホ片手に友達が唇を尖らせる。小さな文句は聞かないふりをして、伸ばされた手にも気づかないふりをした。


 空を切った彼の手なんて知らない。怪我をするかもしれないものに自分から触れようだなんて、被虐趣味でもあるのかな。


「おーい、」


「怪我するよ、弱っち」


 振り返って口角を上げてやろう。呆れた彼は私の隣に追いついて、ポケットに手を入れた。


 それでいい。手なんて繋がない。腕がぶつかる距離になんて入らせない。それが互いにとって適正距離。


 だって手を握れば潰してしまう。腕がぶつかればへこんでしまう。抱きしめたら弾けてしまう。そんな目に見えた愚行を起こす気なんてさらさらない。

 まず易々と触れ合いなんてしないだろ? 友達同士で。だからこれは、友情を壊さないための、当たり前の線引きさ。


 愛なんて嫌いだ。愛を真似た何かもどうでもいい。真なる愛など何処にもない。


 今の世界が物語る。世界を変貌させた、異形と人の愛憎劇。その皺寄せに順応したのが私達。愛が溢れている筈なのに、何処を探しても愛がない。


 あぁ、皮肉だ、滑稽だ、無様だ……吐き気がする。


 だから私は友情を選び、守るのだ。友達が怪我させられたら怒るだろ。狙われたら苛つくだろ。それは普通の反応で、素直な私は、友達の傍にいたいだけ。


 それだけだよ。それだけだ。


 柔い奴と友達になったのが間違いだったかと聞かれれば、首を横に振っておこう。


「意固地だよなぁ、お前も」


「なんのことだか」


 夕焼けに向かって笑っておく。友達の顔を見たところで、どうせ不貞腐れているのだから。


 硬い手を持つ私は、柔らかい友達が買ってくれた飲み物を、大事に大事に受け取った。


――――――――――――――――――――


母を愛した父。

父を愛した母。

忠実な食欲に従った異形。

弱い自分を受け入れている少年。

強い自分を律し続けている少女。


ここに、誰か間違った感情を持った人はいたのでしょうか。


綱渡りのような友情を大事にしている二人の子ども。

彼女達を見つけて下さって、ありがとうございました。


藍ねず

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