ラブラブ山羊さん 🐐🐐

上月くるを

ラブラブ山羊さん 🐐🐐




 山のふもとの農家に黒山羊が1頭おりました。

 街にほど近い農家に白山羊が1頭おりました。


 2軒の農家は有機栽培の仲間だったので、黒い山羊と白い山羊も顔見知りでした。

 ちなみに、黒山羊は自分のことを「おれ」、白山羊は「あたし」と呼んでいます。



      🏞️



 春たけなわのある日、黒山羊さんから白山羊さんに手紙が届きました。

 白山羊さんはなぜか胸をドキドキさせながら、封筒を開けてみました。



 ――お元気ですか。長かった冬がおわり、もうすっかり春ですね。

   こちらは山のふもとの菜の花畑が満開で、それはみごとです。

   山桜もきれいに咲いて、さみどりの山がぐっと近づきました。

   


 手紙には、たったそれだけしか書いてありません。

 なにこれ? 黒山羊のトウヘンボクったらないわ!


 白山羊さんは大いにガッカリして、こんな味もそっけもない手紙、食べちゃおうと思いましたが、いやいや待てよと思い直し、いたって短い(笑)返事を書きました。



 ――ま、ご冗談でしょう、山が近づいたなんて、うそばっかり! 

   あたしのところから見える山は、むしろ、遠ざかりましたよ。



 たったこれだけってどう思うかしら? 

 あたしのこと、きらいになるかしら? 


 きらいになるなら、なったでいいわ。

 あたしはなんとも思ってないんだし。



      🪄



 まるで挑戦状のような返事を受け取った黒山羊さんは途方に暮れてしまいました。

 おれ、わるいこと書いた?(いいえ、書かなかったのがいけないのですよ(笑))



 ――ごめんなさい、自分勝手な見方をしていたこと、あやまります。

   おかげで、住んでいる所によって見え方がちがうと知りました。

   もうそんな間違いはしないと思うので、友だちでいてください。

   


 考えにかんがえ、悩みになやんだ末に、黒山羊さんは二度目の手紙を出しました。

 受け取った白山羊さんは思わず噴き出しましたが……なぜか、とてもうれしそう。



      🛻



 それから3週間ほどして、白山羊さんは軽トラックの荷台につながれています。

 「行く先はふもとの村だよ」白タオルの鉢巻きをしたおにいさんが言いました。


 軽トラの荷台でゆられながら、白山羊さんは胸のドキドキをおさえきれません。

 だって、ぼんやりなところがかわいい黒山羊さんのこと、大好きなんですもの。


 

 






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ラブラブ山羊さん 🐐🐐 上月くるを @kurutan

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ