ある日、ヤンキーに絡まれていると、クラスメイトの金髪ヤンキー女子が助けてくれた。

りょあくん

ある日、ヤンキーに絡まれていると、クラスメイトの金髪ヤンキー女子が助けてくれた。

「見てよアレ。」

「また顔に傷がついてる。」

「今日の朝も他校の人と喧嘩したんだって。」

「噂によると、西高の奴らを1人で返り討ちにしたらしいよ。」


 そのように指をさされながら言われている人物。

 それは、金髪の長髪のとある女子高生。

 名前は、山崎。

 いわゆる、ヤンキーという奴だ。


 周りの人達は、彼女を恐れている。理由は怖すぎるから。


「出来ることなら、関わりたくない人ランキング第1位だな。」

「おい、岡本。全部聞こえてるぞ〜。」

「あれ、また声に出てた?」

「ホントお前って、考えてることが口に出るよな。」

「そうかな······。」

「それに今の会話、山崎に聞こえてたら不味いんじゃないか?」


 その時だった。

 若干だが、山崎さんがコチラを睨んだ気がしたのだ。


「こ、怖い。」

「だから、お前はもうこの話題を考えるんじゃないぞ。」

「そ、そうするよ。」




◇◇◇◇◇




 数日後。

 俺は、学校から家に帰るために、横断歩道で信号が変わるのを待っていた。

 その時だった。


――ドンッ


 誰かが俺にぶつかってきたのだ。

 

「あ? 何すんだよテメェ。」

「い、いやぶつかってきたのは、そちらですよね?」


 俺は、相手がどんな人なのかを確認せずに、そう言いながら、相手の顔を見た。


「って、ヤンキー!?」

「あ? 悪ぃかよ。」

「ど、どうしよう。」

「あーあ、なんだか肩が痛てぇわ。お前、慰謝料よこせよ。」

「そんな、子供みたいなことするわけないじゃないですか······って、コレはミスミス! つい本音が······。」

「はは! 俺を怒らせたいみたいだな! お前は!!」


 その時、ヤンキーの拳が振り下ろされようとしていた。

 殴られる!

 俺はそのように悟った。


 だが、しばらくしても俺にヤンキーの拳が襲ってくることはなかった。


「あれ。」

「あ······あ······。」


 俺は、恐る恐るヤンキーの様子を確認した。

 すると、なぜかヤンキーはとても怖がった様子で俺の後方を見ていた。

 俺も、後ろを振り向いた。


 そこには、奴がいた。

 そう、金髪の彼女。山崎さんが。

 山崎さんが、俺を殴ろうとしていたヤンキーの右手首を掴んでいたのだ。


「あ? 私に何か用?」

「い、いえ! 大丈夫です!」


 俺にぶつかってきたヤンキーはそう言うと、すぐに逃げていった。

 信号無視をして。


「信号無視は、良くないよ。」


 と、俺は呟やいた。

 そして、改めて山崎さんの方を向いた。


「······!!」


 俺の瞳に映る山崎さんは、なぜかカッコよく見えていた。


「や、山崎さん。ありがとう!」

「おう。」

「カッコよかったよ!」

「お、おう。」

「ホント、ありがとう!」

「分かったから! さっさと帰れ。」

「うん、ホントありがとう!」


 俺は、そう言うと家に向かって帰ろうと歩き出した。

 その様子を見た山崎さんも、帰ろうと歩き出した。


 その時、山崎さんが道端に落ちている石に躓いてしまい、体が大きく傾いた。


「うわっ!」


――トンッ


 だが、そんな山崎さんの体を俺が優しくキャッチした。


「だ、大丈夫ですか? 山崎さん。」

「······おう。」


 山崎さんは、顔を赤らめながら元の体勢に戻った。


「あり······がと······な。」


 そして、横の方を向きながらそう言った。

 照れているのだろうか。


「山崎さん。」

「なんだよ。」

「なんか、可愛いですね。」


 言ってから気づいた。

 また考えた事が口に出てしまっていたと。


「い、いやゴメン! 深い理由は無くて!!」

「かわ······いい。」


 山崎さんは、手で口元を隠しながらそう呟いた。

 瞬間、更に山崎さんの顔が赤くなった。


「あー!! 帰るからな。」

「うん! バイバイ山崎さん!」

「······おう。」




◇◇◇◇◇




 次の日の学校にて。


「見てよアレ。」

「誰アレ?」

「山崎だよ、あのヤンキーだった。」

「嘘ぉ、別人みたい。」


 その日、学校にやって来た山崎さんは、まるで別人のようだった。

 金髪だった髪はそのままに、その他が全く変わったのだ。

 まるで、ヤンキーを彷彿させないように。


 山崎さんは、教室へ入ると真っ直ぐに俺の席の前までやって来た。

 そして、


「お、おはよ······。」


 と、言った。


「お、おはよー。どうしたの? なんかいつもと雰囲気違うね。」

「これは、その·····イメチェンしたいなって。」

「へぇ、そうなんだぁ。その格好も可愛いよ。」

「······!! あ、あまり可愛いとか言うな!」


 山崎さんは、そう言い捨てると自分の先に戻って行った。

 その後、しばらくクラス内で質問攻めを受けた。




◇◇◇◇◇




 数日後。

 あの日から、なぜか山崎さんが俺に話しかけてくる事が増えていた。

 理由は分からない。


 だが、今日はいつもと違った。

 今日は、なぜか山崎さんが学校に来なかった。


「今日、休みかぁ。」


 俺は、そのように呟いていた。




◇◇◇◇◇




「なぁ、なぁんでヤンキー辞めたんだ?」

「うるせぇ。」

「チッ、ホントつまんねぇ奴。」


 岡本が学校にいるのと同じ時間。

 とある路地裏にて。


 山崎は複数人の男たちに囲まれていた。


(なんだよコイツら。パパっとボコして学校に行くか?)


 そう考えた山崎は、拳を構えた。

 だが、そんな山崎にとある1つの言葉が浮かぶ。


「山崎さん、なんか、可愛いですね。」


(いや、私は可愛く生きるって決めたんだ。だからこんな事は、もう二度としないって誓った。)


 山崎は、構えた拳を下ろした。


「お前らに構ってる暇はないんだ。じゃあな。」


 山崎は、そう言うと路地裏から出ようとした。

 だがその時。


――ドンッ!


 いきなり、後頭部を殴られた。


「いってぇ。」

「おい、逃げんなよ。あの日のリベンジをしに来たんだよ。だから、俺たちと戦え。」

「うるせぇ、今はそんな気分じゃねぇんだよ。」

「第一、なんだよその格好は。まるでヤンキーじゃないみたいだな。」

「もう、ヤンキーなんて辞めたんだよ。」

「はぁ? あまり俺たちをガッカリさせんじゃねぇよ。」


 直後、山崎は複数人の男たちの攻撃受けることとなった。

 なるべく避けるが、それでも全てを避けられる訳では無い。

 次第に、山崎の体力が減っていくのを感じた。


「殴り返してこいよぉ。山崎さんよォォ??」

「うる、せぇな。」


 殴り返したい。

 何度もそう思った。

 でも、それをしてはいけない。

 何度もそう言い聞かせた。

 いま、ここでコイツらを殴ったら、きっと今までの自分に戻る。

 それは、嫌。


 あの日あの時、岡本が言った······人生で初めて言われた「可愛い」を失いたくない。

 「可愛い」を壊したくない。

 だから······だから······もう、人は殴らない。


 ひたすらに痛みを耐える山崎。

 限界が近づいて来ていた。


(もう、ダメだ······。)


 抵抗を辞めてしまおう、そう思った時だった。


――バタンッ


 ヤンキー達の中の1人が突然倒れた。

 いや、倒れた訳では無い。飛ばされていった。


 何が起きた? それを確認しようとした時だった。

 突然、何者かに腕を引っ張られた。

 思わず、目をつぶった山崎。ゆっくりと、目を開けるとそこには······


 岡本がいた。


「お前ら、こんなに可愛い山崎さんを傷つけて何が楽しいんですか?」


 岡本がそう言った。


「んだと、なんだ? テメェ。」

「俺たちに勝てると思ってんの?」

「殺されたいのかなぁ?」


 山崎はとっさに岡本に言う。

 やめとけ、と。だが、その言葉は声にならなかった。


「ゴメン、俺は、クラスメイトが傷つけられているのを黙って見ていられる程、大人じゃないんだ。」

「······!?」


 山崎は、その言葉を聞くと、一気に体が熱くなるのを感じた。

 だが、ヤンキーはそんな事を言った岡本を笑った。


「ははは! なんだよそれ。」

「かっけぇな! 厨二病かなぁ?」


 そして、ヤンキーがいっせいに飛びかかってきた。

 だが······。


――バタンッ


 次の瞬間には、ヤンキー達は全員倒れていた。


「え。」


 驚く山崎に岡本は言う。


「大きな怪我とかないですか?」

「う、うん。大丈夫······。」

「遅くなって本当にゴメンなさい!」

「······おう。」

「じゃあ、学校に行きましょう、山崎さん!」


 岡本は、そう言うと路地裏から出ていこうとした。


「ま、待って!」

「なんですか?」

「なんで、この場所が分かったの? 学校は? なんでコイツらに勝てたの?」

「質問が多いですね。」

「ご、ゴメン。」

「場所が分かったのは、この前交換した位置情報のアプリからで、学校は抜け出してきて、そんで俺は元々柔道を習ってたからですね!」

「そ、そっか。え、でも柔道をそんな風に使うってヤバいんじゃ······。」

「確かに······ですけど、クラスメイトが傷つけられる方がもっと嫌なんで。」


 岡本は笑ってそう言った。

 

 その笑顔を見た山崎も笑った。


「そんじゃあ、学校に行きますよ。」

「おう!」




◇◇◇◇◇




 この日、私はヤンキーを卒業した。

 そして、決めた。

 いつか、きっと、岡本に振り向いて貰えるような女になってやるって。




◇◇◇◇◇




 あの日あの時助けて貰ったし、お返しになったのかな······?

 アレ、もしかして今回この件で、俺が山崎さんの事が好きなのバレちゃったんじゃ······。

 口が滑っても、クラスが一緒になって初めて顔を見た時に、可愛すぎて一目惚れしちゃったって事だけは言えないよ。




――2人の想いが交差するとき、物語は始まる。




「ある日、ヤンキーに絡まれていると、クラスメイトの金髪ヤンキー女子が助けてくれた。」

   〜FIN〜

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ある日、ヤンキーに絡まれていると、クラスメイトの金髪ヤンキー女子が助けてくれた。 りょあくん @Ryoakun

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