幼女戦記!~幼女は圧倒的な魔力で大陸を統一する!~

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幼女戦記!~幼女は圧倒的な魔力で大陸を統一する!~


とある女性は怒りを滲ませながら、いつもは優雅に歩いている足取りも、ドシドシと地面を踏みつけるように歩いていた。


「あのクソ女神め!何がおたくの世界は停滞して面白くないわね~だ!自分の所なんて魔王が幅を利かせて滅亡寸前じゃないのよ!」


大声で愚痴りながら部屋に戻ると、配下の天使に極上のワインを持って来させた。


ゴクゴクッと一気にワインをらっぱ飲みするとようやく落ち着きを取り戻した。


「ぷっはーーー!!!!とっておきのワインは格別ね♪美味しいわ♪」


機嫌が良くなってきた所で、部下が入ってきた。


「女神ノルン様、いい加減に女神会議(メガカイ)から戻ってくる度にワインを開けるのをお止めください」


冷静沈着なクールで仕事のできる配下アイギスは上司である女神を注意した。


「アイギス……………だって!聞いてよ!?」


アイギスはまたか!?と思った。こうなると女神ノルンの愚痴は長いのだ。


あーしてこーして、こーなったのよ!


アイギスは軽く聞き流してから、一区切り入れてから言った。


「それで、停滞している管理世界をどうなされるおつもりですか?」

「それなのよねー!何回も異世界から『勇者』を呼んでみたけれど、多少入れ込んだ国の領地が増えただけで、文明が向上した訳じゃないのよね~」


全く、何がいけないのかしら?と、ため息をついた。


「地球の『女神イザナミ様』からアドバイスを頂けなかったのですか?あの御方は人格者として有名ではありませんか?」

「そんな事、聞ける訳ないでしょう!ああぁ♪イザナミ様、今回も素敵でしたわ♪」


ノルンは先輩女神であるイザナミを敬愛していた。そんなノルンを冷めた目で見ているアイギスである。


「遠くから見守るだけで、話し掛ける事も出来ないヘタレが」


!?


「酷い!アイギス、酷くない!?」

「どうでもいいですが、どうするんですか?」


ウグッと言葉を詰まらせる女神ノルンに転生候補の資料を渡した。


「はい、これが今度の異世界転生候補達です」


ざっと100名ほどの候補者から選び、転生させて世界に刺激を与えて文明を発展させる計画である。


「私としては今回は粒ぞろいで、こちらの山田太郎丸さんなどオススメですが?」


資料には体力、知力、性格など詳しく書いてあった。


「ふむふむ、アイギスのオススメなら期待できそうね♪ならこの子にしましょう!」

「ノルン様、私が言うのもあれですが、ちゃんと調べて精査してから決めてください。後から私のせいにしないで下さいね?」


アイギスが出ていくと、女神ノルンは酒も入っていて、わかったわかったと言って資料をテーブルに備えてあった、スキャナーの様な所に置いた。


「では、さっさと呼んじゃいましょうか!」


酔っていたノルンは気付かなかった。

転生候補者の資料が二枚くっついていた事に。

そして、下に付いていた方の別の人物を呼び出した事に…………



この行動が、ノルンの管理する世界に多大な影響を及ぼす事にまだ気が付かなかった。




キュィーーーーーン


目の前の転送装置から人が現れた。


「…………ここは何処?」


「いらっしゃい。ここは天界よ。貴女にお願いがあって呼んだの」


キョロキョロする人物に声を掛けたノルンだったが、間違って呼び出した事にまだ気付いていなかった。


「実は──」


ノルンは、かくかくしかじかと異世界転生の話をした。召喚者は聞き上手でノルンはいつの間にか話さなくても良いことまで話していた。


「それは辛かったですね。大丈夫。女神様の想いは私が叶えますから安心してください」

「ありがとう!!!」


ワインを飲みながら、他の女神に馬鹿にされた事や、自分の管理する世界が停滞していて、

転生者を呼び出し、停滞した世界に刺激を与えようとしていることなど話した。


「それで失礼ながら私は何をすればいいでしょう?非才な私では女神様のお役に立てるかわかりませんが…………」


自分の実力不足を悔しがるように表情を浮かべた。その仕草にノルンはここまで慕ってくれている彼女にいつもより奮発して能力を与えようとするのだった。


「ああ、大丈夫よ!私が異世界でも安心して暮らせるように膨大な魔力を授けます。強力な魔法も打ち放題よ♪でも身体が成長するまでは気を付けてね。魔力を使うのに身体ができてないと負荷が掛かって倒れちゃうから」


「ありがとうございます♪流石は偉大な大女神ノルン様ですね!」

「あら♪そんな~♪ならもう1つ、とっておきの能力をあげちゃうわ♪」


「きゃー♪素敵です!ワインおつぎしますね」


こうして上手く持ち上げられた女神ノルンは、上機嫌で異世界イストワールへと転生させるのだった。


「いってらっしゃ~い!」



「ノルン様?もう召喚者を異世界へと送られたのですか!?」


アイギスは転生者を異世界へと送った魔力で気が付き、慌てて戻ってきた。転生者を異世界へ送る時、すんなりいく場合と、転生者がゴネてモメる事もあるため護衛と補佐を付けてから召喚者を呼ぶのが普通なのだが、酔っ払ていたノルンはそのまま召喚者を呼んでしまったのだ。


「大丈夫よ♪凄く良い子でね~♪色々とサービスしちゃったわ~」

「何が大丈夫なんですか!いったい誰を召喚したんですか!」


アイギスは召喚者の名前を見て叫んだ!


「何よ?あなたが勧めた山田太郎丸って子だけど?」

「その子は男でしょう!召喚者は女性ですが!?」


「あれ?そう言えば………あの子は誰?」


ノルンはハテ?と首を傾げた。その仕草にアイギスがキレた。



「このポンコツ駄女神(ダメガミ)がーーーーー!!!」



いつもはクールに毒舌を吐くアイギスが珍しく叫んだ事で、ノルンは一気に酔いが覚めた。


「な、なに?どうしてそんなに怒っているの?」

「貴女が呼んだこの女は召喚者候補の中ではポテンシャルは1番ですが、性格に問題がありネタとして入れておいただけの候補だったんですよ!」


!?


「性格に問題?凄く良い子だったけど?」

「彼の者はA国で英雄と呼ばれた軍人でした」


資料を見ながらアイギスはポンコツ女神に言った。


「凄いじゃない!」

「はいそうですね。しかし彼女は自身の崇める『正義』のためならどんな事でもやってしまう異常者でした」


ゴクリッと喉を鳴らしてノルンは聞いた。


「例えば?」

「味方や知り合いが殺されれば、相手の組織を丸ごと惨殺するくらいには。1人味方を殺されれば報復として100人殺すような人物です」



ノルンは身震いをして青ざめた。そんな異常者に膨大な魔力を与えてはどんな事になるのか、わからないからだ。


「た、大陸に血の雨が降ったらどうしよう…………」


女神ノルンは異世界が滅んでしまわないか『神』に祈るのでした。


しかし、その召喚者の彼女はもう一度の人生をくれた女神ノルンを意外にも、心の底から感謝して崇める事を誓っていた事で、後にノルンの評価が上がるのはもう少し先の話であった。




こうして新しく転生した人物は、大陸の北東に位置する小国レグルス王国の長女として産まれ、シオン・レグルスと名付けられた。

正室の王妃から産まれたシオンの後に側室から長男が産まれた事で、後継者争いが勃発し、王妃派と側室派で派閥争いが激化していった。


「ふむ、ようやく3歳になったのぅ」


この3年間は命を狙われる事も多くあったが、女神ノルンから貰った取って置きの能力『神眼』で切り抜けることができた。

神眼は鑑定の上位互換の能力で、相手の名前や能力、敵意があるか無いかなどもわかる優れものであった。


そして膨大な魔力の扱い方も学んでいた。


「しかしこんな裏ワザがあるとはやってみるものじゃ」


魔力を使う時、子供の身体では負荷が掛かるので確かに強力な魔法など使えなかった。しかし、肉体強化の魔法を使ってからならある程度、強力な魔法の行使ができることに気付いたのだ。



そして試行錯誤している間に4歳になった。



「そろそろ行動を開始するかのぅ?」


ようやく動き廻れる様になったので、

この派閥争いを収めようと動きだした。

大陸を統一するのに国内の内乱など持っての他であるからだ。


「姫様!危険です!?」


側使えのメイド達が止めるにも関わらず、側室の部屋へ向かった。


「おや?第一王女殿下ではございませぬか?いったいどのような御用ですか?」


態度と口調は丁寧だが、目が笑っていなかった。


「うむ、そろそろ妾もこの面倒な派閥争いを終わらせようと思うてのぅ?」


!?


側室の目の色が変わった。そして、たかだか4歳の子供がそんな事を言うのに内心驚いていた。


「実は妾には隠していた事があってのぅ?その秘密を公開すれば、必ず妾が次期女王になるのが決まってしまうのじゃよ」

「秘密ですって?」


「そうじゃ。母君にも秘密にしておるのじゃが、そろそろ秘密を打ち明けようと思っておる。しかし、側妃殿よ。妾の提案に乗るのであれば、この国の次期国王に弟を推すことに協力するのじゃ」


側室、または側妃と呼ばれる存在は愛妾とは違い、政治にも口を出せる地位にある。正室が病気や他国へ行っている間に、代わりに仕事を受け持つ存在である。


頭の回転の早い側妃はシオンの提案を聞くことにした。


「その秘密と提案とは?」

「うむ、それはこれじゃ」


シオンが魔力を込めると、シオンのエメラルドの瞳が黄金である金色に変わった。


!?


「まさか!それは!?」


この世界で女神の寵愛を受けた者に、『黄金の瞳』の者が産まれるのは有名な話であった。

その瞳を持つ者は何かしらの凄い力を持っているため、各国で囲い込むのが当然となっていた。

しかし、その国の王族がその力を持って産まれたとなれば話は変わってくる。


その力を国のために自由に使えるし、今後の婚姻も政治的に有利に申し込めるだろう。

もしかしたらその子供にも遺伝するかもと期待出来るからだ。


そして厄介なのは、病気ならともかく、女神の寵愛を受けた者を暗殺などしたものなら、周囲から責められるのは必至であり、毒杯を賜る事案なのである。


「さて、この瞳で説明は要らぬな?そろそろ妾の命を狙うのは諦めて建設的な話をしようかのぅ?」


シオンは目に前に出された飲み物を側妃に投げ付けた。


「きゃっ!?何をするの!」

「こんなに堂々と毒を盛ろうとするからじゃ。それにわかっておらぬのか?妾に女神の加護があるとわかれば、おぬしの派閥から抜ける者が必ずでるであろう。そう、女神の怒りを恐れ妾に毒を盛ろうとした者とかのぅ?」


ニヤリッと笑ったシオン側妃は嫌な汗を描いた。


「さて、脅すのはこれくらいにして置こうかのぅ。本題じゃが、実は隣国のクレスト王国を潰そうと思っておるのじゃ」


「はっ?」


側妃は間の抜けた声を出してしまった。


「簡単なことじゃ。この国は弟に継がせる。そして妾は隣国を滅ぼし、そこの女王となるのじゃ。どうじゃ?円満解決じゃろう?」


側妃はいとも簡単に言いのけるシオンに改めて恐怖心を抱いた。


「本気で長年争っている隣国を滅ぼせると?」

「無論じゃ。滅ぼすと言っても『無能』な王侯貴族のみじゃ。妾の【神眼】があれば可能じゃぞ。側妃殿には妾を旗印として進軍する許可を得る為に口添えをして欲しいのじゃ」


隣国は国力こそは同格ではあるが、軍備に力を入れており、裕福な我が国に定期的にちょっかいを掛けてくる困った国だ。しかも、民に圧政を敷いており、裕福なのは上級階級のみで民は困窮している。


『とある理由』から我が国は降りかかる火の粉は払うのみで留めていた。

しかし、短期で倒せるのであれば逆侵攻も可能である。


話し合いが終わった後、側妃は椅子に持たれ掛かる様に姿勢を崩した。


「あ、あれは化物だ。手を出してはいけないモノだわ…………」


ドット疲れた様子で、床に散らばった微量の毒の入った飲み物に目をやった。


「あの年齢で駆け引きまで出来るなんてね………」


自室で姫が死ねば私が疑われる。だから自分も同じお茶を飲んで体調を崩す事で、二人とも狙われた事にしようとしたのだ。子供には致命傷でも大人であれば体調を崩すぐらいの毒だったのだ。


まだ信じた訳ではないが、取り敢えず協力関係で行ったほうが利益があると判断した。

それから間もなくシオン姫殿下が女神の寵愛を受けし者とお触れが配布された。



そしてまだ4歳です。



「う~む………?これは思った以上に酷いのぅ~?」


シオンの目の前には約3千の兵士達が整列していた。しかし、どう見てもやる気や覇気にない落ちこぼれの兵士達だった。

これには訳があり、母親が女神の寵愛を受けているとしても、まだ子供の娘に危険な事をさせたくないと思っており、やる気のない兵士を集め、パレード行進をさせる程度にしておこうと画策したからだった。


「しかしこれは使えるのぅ?下手に忠誠心のある者より扱い易いかも知れぬな」


シオンは高台に座っており、兵士達を見渡しながら魔法を使った。


「我が新しく新設された騎士団の皆よ!妾がシオン・レグルスである!」


映像魔法ヴィジョンで兵士達の上空に大画面でシオンの姿が映し出された。


ザワザワ

ザワザワ


兵士達に戸惑いのざわめきが起こった。


「慌てるでない。妾はここにいる兵士達を英雄にすると約束する!妾に着いてこれば女神様の加護を持って全戦全勝を約束するのじゃ!!!!」


シオンの声もマイクの様に増幅され、広間にいた兵士達にしっかりと聞こえるのだった。


「しかし、ここにいるのが似つかわしくない者がいる!流石に犯罪者は英雄にする訳には行かぬので、ここで断罪する!」


ざわめきが大きくなった。そしてシオンはそんな声を無視して手を前に出し、何かを掴む動作をした。

すると丁度、中央ぐらいにいた兵士が空中に浮かんだ。


「おい!何だよこれっ!!!」


驚きと恐怖でジタバタと暴れるが、何か目に見えない力で抑え付けられて動く事が出来なかった。シオンがクイクイッと手招きすると、空中でシオンの方へ移動していった。


10メートルほど前に来た兵士にシオンは『黄金の瞳』を発動させた。


「聞くが良い!この女神様から頂いた【神眼】から逃れることは出来ぬ!」


兵士達はシオンの黄金の瞳に釘付になった。神秘的で目が離せないと言った方が正しかった。


「貴様は私利私欲の為に殺人を犯したな?」


!?


シオンの言葉にいつの間にか周囲は静かになっており、不思議と声が通った。


「な、なんの事だ!そんなことしてねぇよ!」


明らかに動揺している兵士にシオンは続けた。


「妾の神眼に視えぬものなし!貴様、トレース村のギャランドよ。麗しい女人(にょにん)がいると、拐って犯し殺した。その数4人もじゃ。貴様に犯され、悲観して命を断った者が2人いるので6人も殺した罰で死刑に処する!」


ギャランドと呼ばれた兵士は真っ青になりながら必死に首を振った。


「そんな事はしてない!?証拠はあるのかよ!」


王族に対する口調では無かったがシオンは聞き流して、手を向けた。


「言ったはずじゃ。神眼の前に隠し事は無駄じゃ!」


シオンがかざした手に魔力を込めると、ギャランドの記憶から取り出した映像が上空に映し出された。

声(音)こそ無かったがその映像を見た周囲の者が呟いた。


「酷い…………」


ガタガタと顔色が青から真っ白になり震えているギャランドに死刑宣告をした。


「もう喋るな。ゲスが!女神様から頂いた神眼はその名の通り、神の眼である!女神様を謀るとは度し難いクズがっ!地獄で死なせた女性達に詫びるがよいわ!!!」


かざした手を握り締めるようにするとギャランドの身体も締め付けられるようになり苦しみの声を上げた。


「ぎゃっ!!!!た、たすげ…………でっ!?」


他の兵士達も真っ青になった。

空中で目に見えない力に握り潰され、周囲に血を撒き散らしながら息絶えたのだ。


その虐殺を僅か4歳の少女がやった事に肝を冷やしていた。


「さて、ここにいる者で、生きる為に盗みをした奴は多くいるようじゃが、それくらいは目を瞑ろう。しかし、正当防衛以外の殺人を犯した者は許さぬ!死にたくなければすぐに後ろにいる衛兵に自首するのじゃ。さすれば強制労働の罰で済むじゃろう。黙っていた場合はこの後に同じように【神罰】を与えるのじゃ」


シオンの言葉に、数人が猛ダッシュで自首しに行った。


「ふむ?そろそろ良いかのぅ?妾は平民でも実力のある者、真面目に勤勉に励む者には出世させるし恩賞も与えるのじゃ。妾の初代騎士団に配属されたことを感謝せよ」


先程の惨殺ショーを見せられては感謝も何も無かった。そしてシオンは最前列にいた者を指名した。


「そこにいるサウスト町のクロードよ。御主をこの騎士団の団長に任命する!」


!?


「わ、私がですか?」


戸惑っているクロードにシオンは無論じゃ。と、頷いたが、しかし隣にいたクロードの知り合いが声を上げた。


「姫様!御言葉ですが、こいつは近衛騎士をクビになったヤツですよ!また何かやらかすに決まってますよ!」


その言葉にシオンはまた手をかざし、クロードの隣にいた男を空中に浮かせた。


「うわわわっ!?どうして!」


「煩いぞ!妾の神眼に視えぬものなし!クロードは平民ではあるが、強く賢かったため近衛騎士まで登り詰めたが、それを心よく思っていなかった上官に嵌められたのじゃ!」


ザワザワ

ザワザワ


「そして、その上官にクロードに妬みと劣等感を持っていた貴様が上官から金を貰いクロードを嵌めたのじゃ!この裏切り者がっ!」


シオンは力を入れて殺そうとしたが──


「お待ち下さい!どうかコイツの命は助けて下さい!」


裏切られたクロードが助命を願い出たのである。


「なぜじゃ?コイツのせいで貴様は地位も名誉も無くなったのじゃぞ?悔しくないのかぇ?」


「確かに、一時期は酒に溺れた事もありました。しかし、それも姫殿下の元で働ける試練と思えば悔しくありません!姫殿下は公平に人を判断してくれる素晴らしい方と思います。こんなヤツでも同郷の者なので何とぞ寛大な処置をお願い致します!」


シオンは少し考える仕草をしてから答えた。


「そこの者よ。クロードに感謝するがよい。命は助けよう。じゃが、罰は受けて貰うのじゃ」


その男の腕を折ってから開放し、二度と目の前に現れない事を約束させ退場させたのだった。


「他にも免罪などあった者は妾に言うが良い。配下のメンタルのケアは上司の務め故な。我が神眼にて真実を映そうぞ」


こうしてこの場にいた約3千の兵士達は畏怖の念を懐きながら、シオン・レグルスと言う少女に忠誠を誓うのだった。


そして今までやる気の無かった兵士達は、恐怖心から真面目に訓練に励む様になる。

しかし、訓練中に良く差入れを持ってやってくる姫殿下の可愛さに恐怖心が薄れ、忠誠心が勝って行くのに時間は掛からなかった。



そして約1年が経ちシオンは5歳になりました。


「さて、すでに聞き及んでいると思うが、ようやく隣国のクレスト王国が攻めてきたのじゃ」


昔と違いシオンの話の時に無駄口を叩く兵士はいなかった。


「我がレグルス王国は国境にある難攻不落の城塞【グラース砦】にていつもの様に耐える作戦で行くそうじゃ。我々、【ノルン騎士団】は遊撃隊となって、砦を攻めている敵の背後をつく!」


真剣にシオンの言葉を聞いていた兵士達はゴクリと喉を鳴らした。


「初めての戦争経験者もいるじゃろう。じゃが、安心せよ!妾が大魔術を使い敵戦力を混乱させるのじゃ。御主達はいつもの訓練通りに剣を振るえば問題ない。必ず全員でここに戻ってくるのじゃぞ!」


オオオォォォォ!!!!!!


ここ1年でどこの騎士団よりもやる気に満ちたノルン騎士団はメキメキと実力を上げていき、レグルス王国でも屈指の騎士団となっていた。


「さてと、母君に見つかる前に出発するのじゃ!」


どんなに強くとも母親には勝てないシオンであった。



「姫殿下、本当に大丈夫でしょうか?敵の数は約3万とのことですが…………」


騎士団の団長となったクロードがシオンに尋ねた。


「心配要らぬ。砦には約2万が詰めておるし、そこに妾達、3千の騎士団が奇襲を掛けるのじゃ。砦に閉じこもっておる腑抜け共は無視して、妾達だけで敵を撃退するのじゃ!」


屋根のない馬車………『チャリオット』と呼ばれる【戦車】の上で腕を組んで、わはははっ!と笑うシオンにクロードはヤレヤレと首を振るが、顔は笑っていた。


「姫殿下、そろそろ見えてきます!」

「うむ、このまま進軍するのじゃ」


シオンは『身体強化』の魔法を自分とノルン騎士団に使い、さらに魔力を高めた。


「さぁ!今こそ3千の兵で3万の敵を打ち破り、歴史に名を残すのじゃ!この戦いに参加した皆が英雄である!妾に続けーーーーーなのじゃ!!!!!!」



砦を攻めていた敵軍の背後から強襲した。


「先手必勝じゃ!」


騎士団の馬にも身体強化の魔法を掛けていたため、普段の3倍の速度で駆け巡った。


『ここは風魔法で障害物をなぎ倒すべきか?火の魔法はなしじゃな。突入する時に炎に包まれてはかなわんしのぅ?』


「目の前の陣形を崩すのじゃ!神風よ!我が願いを聞き届けたまえ!目の前に立ち塞がりし愚かな者を吹き飛ばせ!バースト・ストーム!」


敵軍に竜巻が発生し、多くの敵軍を薙ぎ倒した。


「よし!今じゃ!敵軍を突っ切るのじゃーーーー!!!!!」


オオオオオォォォォォォ!!!!!!


ノルン騎士団は猛スピードで突入した。


「流石は姫殿下様だぜっ!」

「ああ、こんな凄い魔法を1人で使えるんだもんな!」


敵軍を槍で薙ぎ倒しながら進んで行く。


「クロード!この軍の指揮官は何処じゃ!」


混乱している敵軍を突っ切り、反転して最突入しようとした時、シオンは団長に尋ねたのだ。


「はっ!右側のやや後ろにあるあの大きな馬車の所ではないかと」


突入時に周囲を見渡しながら敵の指揮官の場所を探していたのだ。


「よし!目標!敵、総司令官の首じゃ!進めーーーーなのじゃーーーーーーー!!!!!!!」


いきなり巨大な竜巻が軍の中心に現れ、陣形をバラバラにされた所に騎馬隊が突入してきた事で立て直しが不可能なほど混乱していた。


「敵の騎兵が反転してきたぞーーーー!!!!」


敵兵が叫ぶが、周囲の味方は対応出来なかった。


ドドドドッ!!!!!!


敵兵を薙ぎ倒しながら目標のターゲットの所まで突撃していった。敵の指揮官である将軍は、味方を見捨てて逃げようとしていた。


「軍の長でありながら味方を見捨てて逃げ出そうとするとは何事じゃ!!!」


シオンの指示に従い、クロードが前に出て敵の将軍の首をハネた。


「クレスト王国の将軍をノルン騎士団団長、クロードが討ち取った!!!!!!」


「勝鬨を上げるのじゃ!!!」


オオオオッォォォォォォ!!!!!!!


シオン達は虚ッを付いたとはいえ、3万の敵軍の中を突っ切り、3千の騎兵で敵軍の将を討ち取ったのだった。


「姫様、この後はどうされます?」

「取り敢えず、グラース砦に入り負傷者の手当をするのじゃ。それにしても、友軍が外で戦っていると言うのに、砦から討ってでぬとは腰抜けな者たちめが」


シオンの言葉にクロードは苦笑いをした。


「それは仕方ありません。数で劣っている場合は籠城するのが定石ですので。兵の運用としては優秀な将軍が護っておいででしたよ」


敵兵はすでに慌てて撤退を初めていた。それを見たシオンは小さく呟いた。


「さて、これで布石を打つことに成功したのぅ。後は速攻で敵国に攻め入り、王都を攻め落せば第一関門はクリアじゃな」



すでにシオンの意識は次の戦に向いていた。


「妾の戦いはこれからじゃ!」

「はっ!どこまでもお供致します!」


こうして後にシオン・レグルスの歴史書に刻まれる初戦の戦い、『神風の戦い』が終了したのだった。


まだ大陸統一の戦は始まったばかりである。









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