提案と環境の変化
次の日、学校に行くと昨日の非日常が嘘だったかのように今までの日常に引き戻された。
「柊さぁお前みたいなやつの分際で食べていいものとかあると思ってんの?それ俺にちょーだい」
お昼ご飯を食べようとした時、中川に声をかけられ購買で買ったパンを取られた。いくら人間と言えども食べないと生きていけないのに。
お前みたいなやつの分際とはどーゆー意味だろうか。僕は何も入学してから中川に危害を加えるようなことも気分を不快にさせるようなこともしてないのに。なぜ自分がこんなことをされないと行けないのか。この考えだけが自分の頭の中をぐるぐると回っていた。
自分の中でふと、岩崎さんもこんな気持ちなんだろうかと思った。岩崎さんはどう思って自分の環境に耐えているのだろうか。誰も逃げることを許してくれない。あの環境で。
僕はいじめは受けているが家庭環境は普通だ。強いて言えば優しい両親に心配をかけたくないからいじめられていることは言ってないということが両親に隠している事だ。それ以外は不自由なく生活をさせて貰っている。
そんなことを考えていたら昼休みがすぎ、3時間目が始まる時間になってしまった。
当たり前だがお昼ご飯を食べていないので授業に集中出来ず、ぼーっとしていたら帰りのHRになっていた。
いつの間にか当たり前になった会話をしに屋上に向かうと彼女は先にフェンスに寄りかかって本を読んでいた。
「あ、柊くん」
彼女は日曜日の時と違い手に沢山の絆創膏をつけていた。
「岩崎さんその手どうしたの?」
「これ?昨日帰ったらまた八つ当たりされてさー」
八つ当たりでそんな傷ができるのかと思うほど沢山の絆創膏で隠そうとしているのが分かった。
「八つ当たりでそんな傷…つかなくない?」
「他の人から見たらそうかもしれないけど、私からしたら普通だからさ。」
「でもおかしいって認識してるならどうにかするべきだよ。」
「え?いつもならそんな事言わないじゃん。どうしたの?」
確かに僕はそんなこと普段は言う人間ではない。それは1番自分がよく分かっていたけれどここで言わなければ彼女の環境は何も変わらないのでは無いかと思ってしまった。
「岩崎さんの話を聞いて死にたいって思うのは当然だと思う。そんな環境にいてそんなことを平気でするひとたちと一緒にいたら尚更。でもそれがおかしいって認識出来れば死ぬ前にやれるだけやってみるのもアリだと思うんだけど。」
「ほんとにいつも言わないようなこと言うじゃん。何かあったの?」
「思ったことを口にしただけだよ。」
彼女は呆気に取られたように頭にハテナを浮かべている様子だったが真っ直ぐに話を聞いてくれた。
「その考え方は分かったけどさ、あの親をどうすればいいの?家出するとかにしてもお金とかないよ?」
確かに口に出したはいいものの考えが何も無いまま言ってしまった自分に後悔した。
「それは…その…これから考えるとして…」
「え?言ったのに何も考えてなかったわけ?ちょっとかっこいいと思った私の感動返して?」
「マジでごめん…なんか急に言わなきゃっておもって…つい」
「柊くんってそんな思ったこと口に出す人だったっけ?いいけどさぁ。でも確かに死ぬ前なんだもん。やるだけやるってのはいいかもね。」
「でしょ?だからどうにか出来るか考えてみようよ。」
良かった何とか話がまとまった。でもこの次の発言で僕は凍りついた。
「あ、でもってことは柊くんのいじめもどうにかするってことだよね?」
「え?」
「え?じゃなくて人に提案するんだから私が提案しても良くない?」
確かにそうだと思う。でもこのままの方がいい気がしていたのだ。
「柊くんも今の自分の現状に疑問を持ってるんでしょ?ならやるだけやってみないと、でしょ?」
ついさっき自分が言った言葉をそのまま使われて死にたくなった。
「いや、確かに疑問は持ってたけど、それでどうにかなるとは…」
「人にはやるだけやれって言って自分の時になると拒否するのズルくない?ほら死なば諸共ってやつだよ。」
「え、僕死ぬつもりないんだけど…」
「じゃあ決定ね。お互いのためにがんばろー!」
「人の話聞いてる?」
こうして僕たちの関係は1歩進んでお互いのためにお互いが協力をすることになった。自分たちの現状を変えるために。
君死に給う隣には 真白 @hiruro0122
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