7.赤い火
竜也の脳裏に忘れ去っていた過去が一気によみがえった。
赤い火が見えた。火が『宇和海』の中で燃え広がっていた。赤い火の中に二人の女が倒れていた。
いまの女房と婚約していた竜也はおびえた。この店で三人で話をしていたが・・・話がこじれた。竜也がウイスキーの瓶で和代と真希を殴ると二人とも簡単に床に倒れてしまった。灰皿が倒れて、たばこの火がソファに燃え移った。ソファの赤と火の赤が重なった。店内に火が広がった。恐怖にかられた竜也はそのまま逃げた・・・新聞に事件が報道されたが、どうしたことか失火で終わってしまった。
竜也は思わず立ち上がって叫んでいた。
「うわーーーーー」
頭を掻きむしった。
マスターの声が聞こえた。
「もう時効です。でも、あなたの罪は消えませんよ。罪のない二人の女性の無念の想いはまだここ三番町に残っているんですから」
マスターの姿が消えた。灰皿が倒れた。あのときの『宇和海』と同じだった。ソファの赤と火の赤が重なった。店内に火が広がった。
了
記憶屋 永嶋良一 @azuki-takuan
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
関連小説
のんびり古都散策/永嶋良一
★75 エッセイ・ノンフィクション 連載中 35話
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます