このレビューは小説のネタバレを含みます。全文を読む(499文字)
ある意味「問題作」です。ものすごく、不条理で悲しくて、そして気持ち悪くて悍しい。後から背筋を上って、胃に落ちてくる怖さ。違う世界。物語の世界。でもひょっとしたら私たちの未来に起きることかもしれない。そんな怖さをこの作品に感じました。
世の中には名作とか傑作とか言われる作品が多々ありますが、「問題作」と呼ばれるものもありますよね。本作はまさにその「問題作」です。第一部分、第二部分の読後感はかなり重く、非常に暗い気分にさせられました。そこは最後まで読み切っても晴れることが無かったのですが、確かな感動は得られました。悲惨な社会状況の中で弱者がわずかな爪痕を残していく、その様はハートにくるものがあります。土地とか会場が生々しいのもリアルさを感じられます。「あの国」、つい先日北海道の領有権を主張したんですよね。
奇想天外な着想といい、無茶でありつつもなんかありえそうな感じがしてくる丹念な描写といい、どこをとっても第一級のディストピア文学。おすすめです。