第23話 【エピローグ、そして…。】

 究極奥義【青龍抜刀、胡蝶乱舞飛翔粉砕波(せいりゅうばっとう、こちょうらんぶひしょうふんさいは)】と唱えた技を繰り出す少し前、

「いきなり呼び出したかと思えば、また

えらく切羽詰った状況だな。姫君様。」と

いきなり【上泉信綱(かみいずみのぶつな)】は命道トモエに話しかけた。


「私だけでは、技の制御と精度が追いつきません。信綱様には技の精度、標的の斬撃に力をお貸しください。私は霊力の限界までの解放と標的の照準指示を行います。」と

トモエは自らの中の信綱(のぶつな)に話しかけ

「どういう状況か相手は誰だ。聞きたいことはあるが今はそうも言っていられまい。」

「目標、超巨大隕石の中央!両断と同時に複数の斬撃にてこれを粉砕します。」

「ハ〜ツ」と彼女(トモエ)は霊刀【菊一文字】に霊力を最大限に込めた。


【青龍抜刀、胡蝶乱舞飛翔粉砕波】と唱え

霊刀からは巨大な青白い光りがほとばしり

あたかも巨龍がその口から青い炎のブレスを

吐き巨大隕石の中心に命中させているようだった。

「絶好の位置での命中だな!」と彼(信綱)は叫ぶと命中した【ドラゴンブレス】のような青白い光りを御し【ブォーツ】と大きな音を出しながら巨大隕石を両断した。


「まだまだ!」と信綱(命道トモエの中で)は言うと刀を多種多様の角度で返し巨大隕石を

細切れにし「ドカーン」という巨大な爆音と共に粉砕した。

「お姫様よ。我の仕事は終わったようだな。

次の機会があれば今回の件も含めて聞きたいものだ。」と使命を終えた信綱は命道トモエの肉体より離脱した。


そして自分の奥義の巨大隕石召喚が粉砕され

動揺している黒き魔女に向け命道トモエは

「終わりです!」と今度は命道トモエが叫ぶとトモエ本人は錐揉(きりも)み状に回転しながら青い巨龍の中から飛び出してきた。

「え〜い」と掛け声を叫びながら黒き魔女の

風の防御魔法に切り込み一時の巨大な輝きは失せたものの尚、刃渡り数メートルの青い輝きを放ちながら霊刀「菊一文字」は風の防壁を切り崩しつつあった。

「ガシャーン」という硝子が砕け散るような音と共に風の魔法の防御壁はその効力を失った。


「ごめんなさい。」と命道トモエは言うと

菊一文字の刃を上にして峰打ちのかたちをとり「ドスーン、ドスーン」と複数回に渡り黒き魔女に峰打ちの打撃を加えた。

だが身体強化魔法の効果だろうか、

黒き魔女の意識を完全に刈り取ることが出来なかった。


「まだ浅い!」と咄嗟に判断した命道トモエは黒き魔女の正面から両肩口を掴み倒立し

前方に回転、背に回り互いに背中合わせになると回転の勢いと腰のバネで跳ね上げ

レビテーションで空中に浮遊する

黒き魔女を「えい」と小さな掛け声と共に

前方へ投げ飛ばした。

命道トモエは投げ飛ばしながらプロレスでいうところの「パイルドライバー」のような

かたちで高度数百メートルを落下し始めた。

だがこのままではお互いに命はない。


そう判断し素早く懐に手を入れると陰陽道でいう護符を使用、念を込め護符を数枚まとめて空中に放つとそれらはかわるがわる

足場となりその上を跳躍し最後は数メートル程度となり落下、「フライング・パイルドライバー」とでもいうのだろうか、

そのまま何故かもと通りになっていた草地の部分に黒き魔女を叩きつけた。

「ドスッ」と大きなものが叩きつけられる音がすると「キャッ」と短く大きな声が漏れた。

これには堪(たま)らず黒き魔女カトリーヌ・

フォン・ブレルは意識を失った。


草地が元通りなのはあらかじめGUZE(グゼ)

がある程度の先見の力で大地を再生していたからだ。


黒き魔女が意識を失っていることを確認した

トモエは唇より「ふ〜」と大きな息を漏らした。

稀にみる激闘だったが、いずれにせよ

命道トモエの辛勝(しんしょう)で幕を閉じた。


「やれやれ、やっと終わったようだな。」と

今まで陰から2人の激闘を手助けしていた

GUZE(グゼ)が大地に根でも生やしているのかというくらい堂々と座っていたが、

「ザッ」という音を響かせながら立ち上がった。

そして「ズサッ、ズサッ」という足音を

大地に刻みながら気絶している黒き魔女に近づき彼女の上体のみを起こした。


命道トモエの目の前で黒き魔女の両肩を掴むと「喝」という短い言葉と同時に両肩に掛かった手に何らかの力を注いだ。

するとゆっくりだが黒き魔女は目を開けた。

不思議なことに命道トモエとの激闘の傷も

一切ない。

GUZE(グゼ)は黒き魔女の意識をもどすと同時に簡単な治癒も同時に行ったのだ。


「これでひとまずはよかろう。

黒き魔女よ。何処か体調のおかしいところはないか。」とGUZE(グゼ)が尋ねたが

黒き魔女カトリーヌ・フォン・ブレルは無口であった。

正確には伏目(ふしめ)がちで長い金色のまつ毛を震わせながら意気消沈した状態だった。


「私は負けたのですね。」と静かで穏やかな声で尋ねた。

「ああ。勝敗ということでいえばな。

だが良い戦いだった。」と

GUZE(グゼ)は忌憚(きたん)のない感想を述べた。

「本当にあそこで死力を尽くした奥義を放たなければどうなっていたか。」と命道トモエは決闘による自らの行為を振り返り実直に

感想を述べた。


「いいえ、いかに良い戦いをしようとも負ければ何もならないわ。私の判断ミスもあったし。反省しきりだわ。」

(判断ミスとは相手を侮りあるいは相手を気遣ったのか最大奥義のスーパーノヴァを使用しなかったことだろう。)

更に落ち込むように膝を立て体育座りのようになるとその太ももに自らの顔を埋めた。

(体育座りなどすれば黒の下着が丸見えなのだが本人の気持ちはそれどころではなかった。

1日に2度も負けたからだ。)

 「で、この決闘は勝者は敗者に何でも命令できるとのことだけど、私はあなたのどんな命令に従えばいいのかしら。」と自らの太ももに顔を埋めながら黒き魔女は尋ねた。

「トモエ殿」とGUZE(グゼ)がいうと


「はい、GUZE(グゼ)様」と命道トモエは

それに答え

「それでは…。」トモエが言うと


黒き魔女は自らの太ももに顔を埋め表情が見えない状態で耳を「ピクリ」とさせた。

それは彼女にとっていかなことであったろうか。

そんな状況の中、命道家の自家用ヘリが

数十メートル先に着陸しようとローターを回しつつほどよい風を起こし彼女たちの美しい髪の毛が風になびき陽光に照らされていた。


 そしてここは防衛省戦略情報調査室の

前、ここに何度登場しただろう短髪の清涼感あふれる青いスーツの青年が

「コンコン」とドアを叩く音を響かせた。

「どうぞ、入ってくれ」と部屋の主がいうと

「失礼します。何度も失礼します。

実は室長…。」とドアを開け入ると同時に

話を始めていた。


第23話 完 次週より短期集中連載で少し

お休みします。

再開をお待ち下さい。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

GUZE(グゼ) 三崎和哉 @kazunori615

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ