騎士ユリウスは王国に忠誠を誓った、剣の道に生きる者。自分の屋敷中に彩りを与えている花にもとんと興味がない。1番の不得手は「書くこと」。報告書一つにも四苦八苦。
魔人彷徨う辺境で、戦いに身を置くことの方が身体に馴染む。隣国との武術大会ののち開かれた懇親会、煌びやかな場はどうも居心地が悪い。しかし、話といえば戦いの話ばかりのユリウスのことを、目を輝かせて知りたい、という令嬢が1人……。かくしてお互いのことをもっと知りたい、と願った2人は、文通を始める。少しずつ、少しずつ。
このユリウスの立ち居振る舞いにものすごく惹かれます。一つ一つのセリフ、微笑み、その堅固で誠実なさまが目に浮かぶようで、ひたすら真っ直ぐにカタリーナ嬢に向かい合って、自分の感じたこと、考えたことを文章にするためにああでもない、こうでもないと書き続けるユリウスに、好感しか抱きません……。そんなユリウスを後ろからひっそり支えている妹も素敵です。
文章の骨がしっかりとしていて、滑らかに読み進められる作品です。また、キャラクターの作り方がとっても上手です。ぜひ読んでください。