第3話その誰かは

雨はその影を虚ろにする。雨に限ったことではない。例えば夜の闇や、冬の吹雪。霧や霞。数知れぬ噂。

遮る薄い扉が一枚あるだけで、その誰かの真意は此方から見えなくなってしまうものなのである。


名前を呼ばれて、安易に振り向くな。呼び鈴を鳴らされて、安易に入り口を開くな。

如何なる時も、人を信じすぎてはいけない。信ずるに足りるものももちろん世にはたくさんある。しかし、中にはあなたを欺くものも少なからずあるのだ。




雨は止まない。

誰かがすぐ側までやって来る。それが誰なのか、あなたには見えているだろうか。


あなたは、本当にそれをお迎えしなくてはならないのだろうか。




お迎えにいくモノも、お迎えにくるモノも、それらは必ずしもいいモノとは限らない。どうか、手を取る前に一度思い出してほしい。


お迎えにきた誰かは、本当にあなたの待ち人であったのかを。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

待ち人来るか 犬屋小烏本部 @inuya

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画