第2話待っている誰か

誰かが自分のために雨の中を歩いてくる。そんな気配がしていた。

ざあざあという水音に足音は掻き消され、周りの様子などほとんど見えない。しかし、うっすらと影が見える気がする。

はて、あれは誰であろうか。

知っている人のような、知らない人のような。


雨が止まない。やってくる誰かを朧に見せて、歪ませる。


あれは、誰であろうか、

誰であったらいいのだろうか。


あの人であったらいいのになあ。傘を持ち、自分をこのどしゃ降りの中から救い出してくれる、あたたかいあの人を思い浮かべる。優しいその手を思い浮かべる。馴染んだ声を、思い、浮かべる。

それなら、自分はここだよと顔を出して迎えなければ。誰かが帰ってきた時に、自分がそうしていたように迎えに出なければ。自分が帰った時に、誰かがそうしてくれたように迎えに出なければ。

「おかえりなさい」「ただいま」

あたたかく光の灯った家を思い出す。

ああ、早く帰りたい。

近くに来てくれているその人を、自分は迎えに出なければ。

きっと、その人も笑顔で迎えてくれるはず。会いたいその人を、自分はお迎えしなくては。

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