美味しい味噌汁

#365日ショートショート 095

「うおっ、なんか美味しいな、今日の」

「へへっ、分かるかな？」

「もしかして、これ……。味噌汁なのか？」

「当たり。どう？」

「ちょっと風味が独特だけど、まさか味噌汁が飲めるなんて。どうしたんだよ、味噌なんて」

「ま、ちょっとね。ふふっ」

「う〜ん、美味しい。こんな味付けの料理、いつぶりだっけ。たまらないなあ」

「そうだねぇ、僕らがこの島に漂流して、もう3ヶ月は経つかな」

「色々あったけど、こんな立派な家まで作れたし、なんとかなってるよな」

「僕と君でこの柱を支えながら屋根をかけたりしたよね。あれは大変だった」

「食料問題もなんとかなってるし。お前が料理上手だったのも幸運だよ」

「よせやい、照れるだろ。食材が豊富で助けられたよ、この島には」

「もう救助は来ないかもしれないし、俺たちも諦めかけてるけど……。それでも、生きる希望だけは持ち続けていこうな」

「そうだね、何があっても生きたいって、僕もそう思うよ」

「いや〜、しかし、この味噌汁はやっぱり美味しいなあ」

「味噌がいいんだよ、味噌が」

「ところでタクミは？」

「なんかもうちょっとその辺りを見回ってくるって言ってたかな」

「そうか」

「別の味噌も試してみたいね」