第3話 魔王アーノルドの死とウィリアムの追放
バラバラで纏まりが無く人間や家畜を襲い肉を食らい国土を荒らす魔族がパタリと現れることがなくなって数千年。人間たちは魔族は滅びたと思い生活してきたが実際はそうではなかった。魔王アーノルドは人間との共存を夢見て魔族の国を建国したが、魔族は下等な種族であると考えている者が多く人間と仲良くすることは不可能であった。そこで、実力のある魔族を四天王に実力のある人材を置き睨みを利かせることで人間を襲うことは無くなった。過去にはこっそり出国して人間をくいに言った魔族がいるのだが見せしめに親類を含めて皆殺しにして首を晒したらしい。この一件以来アーノルドは恐怖の象徴として恐れられることになった。度々下剋上や内乱はあったみたいだが打ちのめして来たらしい。アーノルドは笑いながら「あの頃は若かったからのう」と懐かしんでいたが、自分は「このじいさん、怖いな」と思った。
そして、魔王アーノルドに四天王に誘われて200年が経過した。あんなに元気だったじいさんも寿命で死んでしまった。その後を継いだのが養子のアルヴィンであった。子供のいなかったアーノルドは若く手強い魔族を自分の養子に迎え入れ後継者として教育してきた。
「私は父上のように人間と仲良くしていこうとは思わない。あの頃のように人間を殺し領地を広げるぞ!」
「「「「「おーーーーーー!」」」」「「「「「魔王様万歳!!」」」」」
父の前では人間と友好関係を結ぶやら何とか言っていたのだが、全て噓だったのだ。これにはウィリアムもドン引きだった。
「こいつらマジかよ。じいさんの前で言ってたことは嘘だったのかよ」
チラリと他の四天王である剛腕のカーティス、鉄壁のロドニー、賢者ライオネルも声を上げて喜んでいた。
ウィリアムが四天王に就任したとき四天王は2人のじいさんとばあさんしか生きていなかった。そして、アーノルドは息子に元気だったころに王位を譲り四天王に若い魔族が就任したのだ。
「まず最初に攻めるのは魔物が多く生息する危険地帯を越えた先にある小国エンバスを攻めようと思う。エンバス侵攻はカーティスに一任する。頼んだぞ!」
「はっ、このカーティスにお任せください」
自信たっぷりなカーティスの返事を聞いた魔王は満足そうにうなずき退出した。その後、カーティスは軍を率いて出立した。
1か月後、カーティスは右腕を失い軍も死者を多く出して戻ってきたのだ。ウィリアムが回復魔法を行使して欠損や死者を蘇生させ回復させたお陰で全員助かった。
兵士から何があったのか聞いたところエンバス攻めも最初は順調だったのだが、超強い冒険者が何人かおり一気に逆転されたらしい。
「強い冒険者といったらSランク相当だろうな。というかSランクに押される四天王とか大丈夫かよ」とウィリアムは思ったが自分には関係のないことなので忘れることにした。それは何故かというとウィリアムの雇用条件にある。罪のない人間を殺す趣味はないので自分は絶対に人間界侵攻に手を貸さない、裏方に徹することを約束していたのだ。
「ウィリアムはロドニーと共にエンバスへ侵攻せよ」
アルヴィンは四天王全員を執務室に呼び寄せた2人に命令を下したがウィリアムは契約に従い拒否した。
「自分はアーノルド様との契約に従い侵攻には手を貸すつもりはありません」
「貴様、魔王様になんて口を聞いている」
「落ち着けロドニー」
激昂するロドニーを魔王が沈めた。
「魔王様、私から一つ提案があります」
賢者ライオネルから提案がるということで魔王が耳を傾けた。
「ライオネル何か良案があるのか?」
「はい、私は伝説の秘薬と呼ばれるエリクサーの試作品の生成に成功いたしました。四肢が失われても再生し、死んで直ぐなら蘇生することが可能となりました。ですから、回復しか能のないウィリアムは必要ありません。エルフであり魔族ではない彼を追放するのはどうでしょうか?」
ライオネルもウィリアムと同じ全属性魔法を使いこなし薬品や魔導具の開発等も行うことから賢者と呼ばれているが、実力はウィリアムより下である。
そんなライオネルに他の四天王も賛同を示す。
「ライオネルの言う通りだ。魔王軍に敵を殺すことが出来ない弱虫など必要ない」
「俺も同感だ。確かに回復魔法を使わせたら右に出る者がいないのは承知しているがライオネルがエリクサーを作った以上お前は邪魔者でしかない。ウィリアムを追い出し新たに力のある魔族を四天王にするべきだ」
ウィリアムが四天王に就任してから戦うこともなかったため、彼らは先代から彼は強い侮るなと聞いていたが、信じていなかった。
魔王としても魔族ではないハイエルフが気に食わなかったし、回復の手段が確保できたので戦力にならない者を置いておくよりも力のある者を入れるということには賛成だったのでウィリアムを追放することにした。
「お前たちの意見はわかった。ウィリアムお前を魔王軍から追放する。人間と戦うことが出来ないような者が魔王軍のトップなど恥でしかない。好きなところに行くといい!」
「分かりました。では、失礼いたします」
ウィリアムはこいつ等が自分のことを嫌っていることを知っていたので喜んで出て行くことにした。あっさり上手くいったのでウィリアムが去ったあと執務室に残った4人は大爆笑をしている。
「はっはっはっ、やっとアイツを追い出すことに成功しましたね」
「あぁ上手くいって良かったよ。これで本格的に進行に乗り出せるというものよ」
彼らはウィリアムがいなくなったことを後悔するのだがそれは先の話である。
元魔王軍の四天王だった凄腕ヒーラーは魔王軍に四天王最弱は必要ないと追い出させたので大人しく出て行きます!後で後悔しても戻ってやらないからな? 猿のコルク @www123
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