第9話 心 機 一 転
「昌輝…夏蓮を…お願い出来るか…?」
「…えっ…?」
「今日は俺と一緒にいない方が良い…」
「…分かった…夏蓮…」
「………………」
昌輝の元に行きたいけど、私の身体が言う事を利かない。
昌輝は、私の異変に気付き歩み寄る。
優しく抱きしめるように私の体に触れる。
ビクッ
肩が強張る。
「大丈夫。俺は何もしないから。そのまま、ゆっくりで良い」
私はゆっくりと頷く。
「…すまない…夏蓮…」
広志は謝る。
私は首を左右に振るのが精一杯だった。
そして私は昌輝に支えられ抱きしめられるように、昌輝の部屋に移動した。
入ってすぐ私は今迄の緊張感と恐怖感が、プツンと糸が切れたようになり、一気に崩れ落ち涙が次々に溢れた。
「夏蓮っ!」
「…っ!」
昌輝は、しっかりと抱きしめた。
「俺が傍にいるから大丈夫」
私は気付けば泣き疲れ――――
「夏蓮…?」
彼女から寝息が聞こえてきた。
俺は彼女をベッドに乗せた。
離れようとすると、グイッと引っ張られた。
「夏蓮?起こした?」
「…傍にいて…」
無理もない。
彼女は怖い思いをしたから尚更だろう。
「…一緒にいて…」
「えっ…?」
「…お願い…」
「夏蓮」
俺はベッドに入る。
彼女は抱きつくように俺を抱きしめた。
俺は彼女のオデコにキスをすると、ぎゅうっと抱きしめる。
彼女も更に俺を抱きしめた。
「夏蓮…大丈夫か?」
「…うん…大…」
俺は、彼女の事が愛おしく、ついキスをした。
「悪い…」
夏蓮は、微かに微笑み、俺の胸に顔を埋めた。
気付けば俺達は、いつの間にか眠っていた。
その後。
私は、離婚をし、実家に戻る事にした。
離婚の話を昌輝含め、話を持ち出した時、その時、私達は意外な事を聞き、判明した。
お義母さんの旦那さんも実は酒乱だった事を聞いた。
昌輝が、お腹にいる時は、広志を連れて実家に戻る日々だった事が分かった。
広志も小さい時から暴力を振るわれていたとの事だった。
小さい体ながら母親を守ったり成長していくに連れて、親子喧嘩が絶えなかったという事を――――
そんな私は実家に戻ると毎日のように昌輝から送られてくるメール。
時々、デートを重ねていた。
高校を卒業し、昌輝は就職。
私達は半同棲生活中――――
「夏蓮、仕事が落ち着いたら俺と結婚して!」
ドキン
「えっ?」
「兄貴よりも絶対に幸せにしてやるから!」
「昌輝…」
「だから結婚して下さいっ!本当は指輪買ってプロポーズすべきなんだろうけど…今はまだ、指輪買ってあげれなくてごめん!指輪買ってまた改めて、きちんとプロポーズする!」
「分かった!必ず幸せにしてね♪」
「もちろん!」
私達はキスをした。
「夏蓮」
「何?」
「もし結婚して兄貴みたいな事あったら俺と別れて良いから」
「…昌輝…」
「まあ、そうならないように、お酒は飲まないけど。だって、どんだけ年を取っても、ずっと夏蓮と一緒にいたいし!」
「ありがとう!」
〜 F i n 〜
幸せな結婚、隠された真実 ハル @haru4649
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