見えない刃

幽美 有明

言葉

見えない刃として有名なものをあげるなら。言葉がそのうちの一つなのだと思う。

もちろん毒や薬なんて言うものもあるかもしれないけど。


誰もが扱えて誰もが知らないうちに投げているもの。

それが言葉のナイフ。

形のない触れないナイフ

それが言葉。


もし、言葉のナイフが見えるメガネでも発明されたら。世の中大変なことになるだろう。

なんて考えた過去の人間がいたら、それには大正解と答えてあげる。


言葉のナイフが見えるメガネ。

それは2022年より20年後の未来に現れた。

デジタル技術の延長線上で。

傷ついたと本人が思った時、その眼鏡をかけてる人間だけに見えるナイフが体に刺さるというものだった。

人に埋め込まれたマイクロチップによって、感情の揺れなどから検知するのだ。


さて、世界はどうなったか。

誰が誰にナイフを投げたか、それが分かれば当然。投げた人を避難するようになった。


開発目的が、人が言葉で傷つかないことを目的としたもののはずが。

その真逆、さらに人を傷つける言葉が飛び交うようになったのだ。

自殺者は右肩上がり。うつ病などの精神疾患を患う人間も増えた。


やがてそのシステムは廃止となったが。1度増えた物が減らることはなく、今日も言葉のナイフが世界中で飛び交っている。


ほら、また私にナイフが飛んできた。何気ない一言の、宛名の無いナイフが。

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見えない刃 幽美 有明 @yuubiariake

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