7 自宅にて
「お帰り、ケータくん」
「ただいま、母さん」
僕の母――影咲希
肩のところで切りそろえた黒髪に清楚な雰囲気。
今年で五十歳になるんだけど、すごく若く見える。
だから父さんと母さんが並ぶと、あんまり十二歳歳差って感じに見えない。
せいぜい母さんの方が二、三歳年上かな? くらいで、下手をすると母さんの方が年下に見えてしまうかも――。
それくらい若々しい。
周りからは美魔女みたいに言われてるとかなんとか……。
サラリーマンをやっているコータ父さんはまだ帰っていないようだった。
同期の出世頭らしく、かなり忙しそうにしている。
なんでも年上の母さんを心配させないために、社会人になったころから同期よりもずっと努力して、出世していったんだとか。
その辺は本当にすごいなぁと思う。
僕なんて、父さんに比べるとかなり流されやすいからね……。
サッカーだって主体的に始めたわけじゃなく、テレビを見てなんとなくの憧れと、あとは昔から足が速くてフォワードに抜擢されて、そのまま続けてる感じ。
「もっとこう……『自分』を強く持ってたほうがモテるのかなぁ」
花音さんに対する受けもよくなるだろうか。
夕食を終えるころ、
「ただいま~」
と、父さんの影咲希コータが帰ってきた。
「お帰り、父さん」
父さんは母さんより十二歳年下の三十八歳。
この年の差を乗り越えて二人が結婚した経緯には結構興味があるような、でも両親の恋愛事情なんて聞きたくないような……微妙な感情がある。
僕も父さんほどじゃないけど、年上の女性に恋してるからね。
眼鏡をかけた知的な中年男性って風貌だ。
実際頭がいいし、大学も一流のところを出ている。
仕事ができて出世も早いし、会社では専務の懐刀みたいに言われてるって聞いた。
すごいなぁ。
「ケータ、今度の週末はサッカーの試合があるんだったか? がんばれよ」
「うん、春の大会の予選なんだ」
「俺も応援に行きたかったけど、仕事がな……いずれ時間を作って見に行きたいから、それまで勝ち進んでくれよ」
「どうせなら決勝戦を見てもらいたいな」
僕は父さんに笑った。
「去年はベスト8だったよな……今年は行けるといいな、決勝」
「うん、がんばるよ!」
仕事で忙しくてあまり接する時間はないんだけど、父さんは僕のサッカー部の活動とか学校での生活のこととか、すごく良く知ってる。
ちゃんと気にしてくれてるんだな、と思うとやっぱり嬉しい。
照れくさいから、父さんの前で直接『嬉しい』なんて言えないけどね。
……僕にもこんな関係になれるような相手が、いつか現れるんだろうか?
もし現れるとしたら、それは誰だろう。
すでに出会っている誰か?
それとも、これから出会う誰か?
今はまだ分からない。
けれど、いつかは――。
***
いったん、ここで一区切りです!
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