6 自分で自分の気持ちが分からない


「……行ってきたら? 微笑ましいね、学生らしくて」


 花音さんがにっこり笑う。

 うーん……嫉妬とか、してくれないのかなぁ?


 やっぱり花音さんにとって、僕は子どもなんだろうか。


「りっちゃんにもチャンスを上げるべきだと思うな?」

「花音さん、大好き~!」


 律が花音に抱き着いた。


「ふふ、りっちゃんは可愛いね」


 と、花音さんが律の頭をなでなでしている。


 まるで姉妹みたいで微笑ましい。

 ……なんて和んでる場合じゃない。


「デート……デートか……」


 ただし、僕が恋してる相手じゃなく、別の相手とだ、


 しかも、そのデートを勧めてきたのが当の花音さんだというのは――。

 ああ、もう気持ちがグチャグチャになってきた。


「別にケータくんとりっちゃんなら普段から友だちとして付き合ってるんだから、その延長でちょっと遊びに行くだけ、って考えたら?」


 花音さんが言った。


「ケータくんなら女の子に乱暴な真似や卑劣な行為はしないでしょ?」

「うん、影咲希先輩なら絶対大丈夫……っていうか、先輩になら多少されても……ふふ」

「あ、りっちゃん、高校生らしい節度ある交際をしてね?」

「はーい」

「りっちゃんったら」

「あたし、けっこうエッチですからね。知識だけだけど……ふふふ」

「もう」


 もはや僕そっちのけで、完全に二人だけで盛り上がってる感があるなぁ……。




 ……結局、僕は律とデートすることになった。


 あくまでも『友だちとして』遊びに行くだけだ、と強調したけれど。


 律はすごく喜んでたし、花音さんもにっこり笑っていた。


 ああ、なんか罪悪感があるなぁ。

 きっぱり断るべきだったかもしれないけど、こうやって押し切られてしまうのは僕の悪癖だ。


「どうしたの、ケータくん? 悩んでるみたいだけど」


 律と別れた後、僕らは帰宅路をふたたび二人で歩いている。


「……花音さんは何も思わないんですか、僕と律がデートして」

「? いいと思うよ」


 花音さんはキョトンと首を傾げた。


 あー……この反応は。

 僕は内心でがっくり来てしまった。


 花音さん、僕の気持ちに全然気づいてない。


 あるいは気づいているけど、僕なんて子どもすぎて相手にしていないのか。


 眼中に、ないのか。


 それを自覚するのは、とても寂しい――。






***

いじめられっ子の俺が【殺人チート】で気に入らない奴らを次々に殺していく話。

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