イマジナリーフレンド

第9話 心の中にいるよ

　秘密基地に着いた。

　「アスカ、アスカ、出てきて」

　悠也はキョロキョロと辺りを見回し呼びかけた。しかしアスカは呼びかけても、呼びかけても、現れなかった。

　悠也はガックリと肩を落とした。

　「アスカ、お願い、出てきて。アスカに会いたいねん」

　悠也はアスカに会いたかった、そして話をしたかった。なんでもいいから。

　でもアスカは現れなかった。

　悠也にこくこくとプールの時間が迫っていた。

　沈黙がしばらく場を支配した。

　悠也はアスカに会うのをあきらめた。

　悠也は帰ることにした。

　そして里山から帰ろうとしたとき、風が吹き、木々がざわめいた。そのざわめきの中からアスカの声が聞こえてきた。

　「悠也くん。あなたはひとりじゃないよ。アスカはあなたの心の中にいるわ」

　悠也は後ろを振り返った。

　しかしそこにはアスカはいなかった。