正しさの理解

バブみ道日丿宮組

お題:正しい人々 制限時間:15分

正しさの理解

 正しいことが決して正しいとは限らない。

 それは脳が正しいと判断するのがその生物がそうと判断したからで、否定という判断はしない。

 食物連鎖。

 肉食動物は狩りに失敗すれば、死ぬ。

 草食動物は狩られれば、死ぬ。

 では、人々はどうだろうか。

「……ん」

 転がる死屍の数々は正しいことをした人々だったもの。

 私はなんだろうか。

 手に持つナイフは血で固まってもう使い物にならない。ただのゴミになった。ここに転がってる人は何になったんだろう。

 私は正しいことをした。

 反社会的勢力を潰した。

 悪を滅ぼした。

 泣いて抗議した人もいた。踏みつけて、指を1つ1つ切り取ってみた。けれども、正しいことをした間違ったことはしてないと言い続けた。

 どんなに痛みを与えても、悪を白状しなかった。

 国を裏切ったものが何を正しいと思うのか、それは脳がおかしいから。

「また酷くやったものだね」

「……そうですか。処理しやすくなっただけじゃないですか」

 肩越しに振り返れば、壁に背中を付けた白衣を着た男が立ってた。私の主治医。正しいことを教えてくれて、正しいことのやりかたを教えてくれた人。

 食物連鎖の仕組みを正しく教え、人の生まれ方、人の生きること、人の死ぬことをたくさん見せてくれた。

「んー、実に結構。感情の高ぶりもなし、心も極めて冷静」

 にっこりと主治医は笑うと、指を鳴らした。

 黒いスーツ姿の男たちが入ってくると、すぐに死屍の片付けを始める。

 数分後には元通りのキレイな大広間に戻った。

「……さすがですね」

 血生臭さすらしない。むしろ爽やかな気分になる匂いが周囲からしてくる。

「テキパキと正しいことはしないと君に教えたことが間違いになるからね」

 そう、主治医はいって注射器を取り出す。

「そろそろ『点滴』の時間だよ」

 はいと、差し出した腕に針の痛みを感じると、私の意識は闇に落ちていった。

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正しさの理解 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

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