義務と責務の違いとは

バブみ道日丿宮組

お題:遠い夕日 制限時間:15分

義務と責務の違いとは

 池に写った太陽や月は触れることはできない。実体がそこにはないから虚像であるから。バケツの中に水をはっても同じこと。

 天に手をあげてみてももちろん掴み取ることはおろか、触れることはできない。触れようと思うても近づくだけで死が待ってる。

 幻想は幻想でしかない。

 遠いキレイな夕日はキレイであろうと実際のところ有害な存在でしかない。地球を覆うバリアがなければ、直ちに人間の大半は死に至る。様々な動物、生き物、植物たちに影響が及ぶ。

 それをなくそうと政府は考え始めた。

 専門家たちは、アイスエイジが起こると皆が声を揃えていう。それは図鑑を見るだけでもわかる。太陽の光が大地に恵みを与えてくれてる。

 それがなくなってしまえば、永遠の闇が世界を覆う。池に写る太陽がまさにつかみ消される。馬鹿な話だ。

 その恵みのおかげで今まで生物は進化し続けてここまでたどり着いたというのに、破壊するとは一体何の権利があるというのだろうか。所有権など人間が決めただけで、宇宙人や、他の動物達は認めていない。無論彼らですら名前を認めてすらいないだろう。

 上から下を見るーーそれが私たち人間。

「……」

 そのおかげで大分人は減った。

 ビルから見下ろす大地は、すっかりとひび割れて、大きな穴がまるで槍で穿たれたようにあいてる。反対派の運動と、肯定派の運動……いわゆる戦争のはじまり。

 虚像、現実。

 それをもはや見失って、ただ目標を倒すだけしかこの地球にいる人間は考えなくなった。いや、計画は進んでる。いずれ太陽は破壊される。月も破壊されるかもしれない。

 人工的に有害でないものも同時にうちあげると肯定派の大きな組織はいうが、そんな巨大なものを作る技術がはたして残ってるのだろうか。

 もう一度、あの波紋で揺れる太陽と月を池で見ることができるようになるのだろうか。

「研究室まであと少しだ。全部爆破してしまえば、意味はなくなる」

「……そうね、わずかに残った人間が生き残れるとも思えないけど」

 争いは争いを呼び、地球は地球ではなくなった。

「責任をとるのも我らが宿命」

 そういって、声をかけてきた男は先導し、研究室の扉をあける。

「戦争にしかもう目を向けられなくなった時点で、この計画はおしまいだったんだ」

「えぇそうかもね」


 つかめないなら壊してしまえ、そんなこと考えなければ良かった。結局自己犠牲で終わらすしかない。

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義務と責務の違いとは バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

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