恋に恋して、恋い焦れる

コウセイ

第1話 

 なつあさから雑木林ぞうきばやしではせみく。



   ・・・ミーン ミーン ミーー 



 高台たかだいにあるいえかって雑木林沿ぞうきばやしぞいのみちを、リュックを背負せおい、スマホをながらある少女しょうじょ。 



   トコ トコ

 


 そのいえでは、朝早あさはやくからとなり部屋へや掃除そうじして、ついでに自分じぶん部屋へや片付かたづけ───


 

   ガサ ゴサ・・・



 ──ゴミやらないものをゴミぶくろれていく。

「これで片付かたづいたかなと・・・なんだかベッドがひろえるな」 

 部屋へや見渡みわたして、カイはった

カイのベッドはせるまえ台形たいけいわせてったもの、だがるには問題もんだいはない。

 現在げんざい、カイは祖母そぼ二人日暮ふたりぐらしをする。おさなころからべることがきで、カイはひとばい間食かんしょくもそれ以上いじょうべた。そうなるとからだおもさもえていく。

 しかし、二年半にねんはんほどまえから親元おやもとはなれ、祖母そぼ管理かんりもと一日三食きちにちさんしょく制服せいふく制限せいげん間食かんしょくめさせた。   

 ゴミぶくろつと──

今日きょうえるゴミのだったけ・・・てにくか」



   ガサ ガサ・・・ 



 ─一階いっかいりて、カイは玄関げんかんようとする。    



   ガラララララ 

 


 引違戸ひきちがいどけ、すと──

   


   ドン! 

 


「きゃ!」 


 

   グラッ



 ──カイのっていたゴミぶくろとぶつかり、少女しょうじょからだうしろへかたむいていく。

 とっさにつかんで──

あぶない!」 


 

   グイイイ・・・  

 


──カイはる。 

「ありがとう」

 と、少女しょうじょ

なんだ、綾乃あやの?」 

 少女しょうじょを、カイはくちにする。

「え?あなたはだれ?」 

 カイのかおて、少女しょうじょった。 

何言なにいってんだよ、カイ、カイだよ。ひさしぶりにったけどづけよ」

 少女しょうじょは、墨崎すみさき 綾乃あやのといって、カイとは従姉妹いとこにあたりおなとし女子高じょしこうかよう。今日きょうから、祖母そぼいえ一週間いっしょうかんほど世話せわになることになっていた。

「・・・カイ!?」

 おどろきつつうえからしたまで、カイをかえるが、とくかお綾乃あやの。  



   ジィー・・・  



「ゴミてるから、ちょっとどいて」

「う、うん」

 綾乃あやのみちゆずると、カイはゴミ置場おきばかう。

 カイのうし姿すがたて──   



   ドキ ドキ・・・



「・・・かっこいい」

 ──綾乃あやのつぶやく。

 二年にねんぐらいまえまで、綾乃あやの身長しんちょうわらないほどであったが体重たいじゅう倍以上ばいいじょう、もう一人ひとり従姉妹いとこ二人ふたりに、カイはよくからかわれていたのだ。しかし、いま身長しんちょうたかせてからだもすっきりと筋肉きんにくがつく。

 荷物にもつき、祖母そぼ部屋へやから布団一組ふとんひとくみはいった大袋おおぶくろって、綾乃あやの階段かいだんがる。 

 だが、おもたくて──

「うーん・・・おもたい」



   モタ モタ・・・  



 ──大袋おおぶくろって階段かいだんがれない。

綾乃あやのってやるよ」

 もどってると、綾乃あやの階段かいだんでもたつくのを手伝てつだって、カイが大袋おおぶくろって階段かいだんがってく。

「ありがと」

 綾乃あやの使つか部屋へや大袋おおぶくろはこぶと──



   ドン



「ここにくけど布団出ふとんだしておこうか?」

「いいよ、それぐらいできるから」

 ──部屋へやようと、綾乃あやのて、カイがおもう。

綾乃あやの・・・ちいっちゃくなったな」

「な、何言なにいってんの!それはカイがおおきくなったからで、わたしだって背伸せのびたよ!」 



   ・・・カチ カチ ゴーン



 あさ再開さいかいからよるになり、各々おのおの自室じしつごしていると──


 

   コン コン



綾乃あやのだけどいい?」

 ──カイの部屋へやのドアをノックする。

「・・・いいけど」

 


   カチャ 



あつれないから・・・こっちでていい?」 

 パジャマ姿すがたの、綾乃あやのってる。

扇風機せんぷうきあるだろ?」

 と、カイ。  

「それでもあついよ、こっちエアコンあるでしょ」 

 となりから布団ふとんってると、綾乃あやのなか強引ごういんにベッドのよこ布団ふとんく。 



   ドササ 



 仕方しかたなく、カイはエアコンのスイッチをれた。

 綾乃あやの布団ふとんはいり──  



   ノソリ



  ──カイとはけてる。 

 しばらく沈黙ちんもくつづき──

「カイ、電気消でんきけそうか?」 



   ・・・・・・・



 ──綾乃あやのびかけに返事へんじがない。 



   ムクリ



 綾乃あやのからだこす。

「カイ、てるの?」

「・・・」 

 やはり返事へんじがない。

「・・・ちょっと期待きたいしてたのに」

 綾乃あやのあかりをそうとして──



   ソロリ   



 ──ベッドにしのぶと、カイの寝顔ねがおのぞる。

 

 

   ドキ ドキ・・・  



寝顔ねがおもいい・・・」

 あかりをして布団ふとんはいるも、綾乃あやの女心おんなごころざわつく。



   チュンチュン チュン



 あさになり──



   ドンッ!  



「うあっ!」 

 

 突然とつぜん振動しんどうに、綾乃あやのます。

 かお間近まぢかで、綾乃あやのおおかぶさるように、カイがいきあらくする。

「はっはあ・・・はあ」

「カイ!?」 



   ドキ ドキ・・・



「ごめん、綾乃あやの

「いいよ・・・カイ」

 覚悟かくごして、綾乃あやのじた。

 


   ・・・・・・



 だが、てどもなにもしてこないことにけるが、カイはなくなっていた。



   ムクリ



「なに?どーゆうこと?」 

 からだこすが、綾乃あやの混乱こんらんする。カイが自分じぶん欲情よくじょうしてもとめてたと、綾乃あやのおもったのだった。とりあえず、綾乃あやの一階いっかい居間いまへとかう。

 すると、座卓ざたくテーブルで──



   モグ モグ・・・ 



 ──カイと祖母そぼ朝食ちょうしょくべている。

「さっきわるかったよ。つまずいて綾乃あやのにぶつかりそうになってさ」 

 カイはあやまって、きてからのことをはなす。

 すこ時間じかんもどされ──


 

   キュルキュル キュルル・・・



「んんん!よくた!」

 ──あさ目覚めざめると、カイはベッドからた。 

 いつものように朝食ちょうしょくべるため、カイは一階いっかいこうとした爪先つまさきが──



   トツン



「うあっ!」

 ──綾乃あやの布団ぶとんふちけつんのめる。

 体制たいせいなおそうとからだひねってみるも、綾乃あやのているうえたおむ。



   ドンッ!

 


 とっさに布団ふとん外側そとがわくカイ。



 という情景じょうけい真実しんじつであった。

「(やだ!何勘違なにかんちがいしてんだ!)」 

 勘違かんちがいにずかしくなり、綾乃あやのおもわず口元くちもとりょうおおう。

綾乃あやのぶんもあるからべる?」

 カイが朝食ちょうしょくすすめる。 

「そうなの・・・じゃあべようかな」 

 あらかじめ祖母そぼ三人分さんにんぶん朝食ちょうしょくつくっていたのであった。

 べる用意よういをして、綾乃あやのがテーブルに着く。



   モグ モグ・・・



綾乃あやのいていい?」

「・・・なあに?」 

二年にねんぐらい・・・こっちになかったのに、どうしてきゅうることになったの?」

 と、カイ。

「それは・・・中学二年ちゅうがくにねん模試もしで、今行いまいってる学校がっこうかるかどうかあやしくなでてさ、本腰入ほんごしいれて勉強べんきょうむことにしたんだ。じゅくかようことになって、だからることなくなったんだよ」

「そうだったんだ」

きゅうることになったのは水道管すいどうかん破裂はれつしたらしくて、周辺しゅうへんいえ断水だんすいしちゃてさ」

なにかラジオでってたな」 

 ラジオでいたようなことを、カイはおもす。



   モグ モグ


 

「・・・修理しゅうり一週間いっしゅうかんとか二週間にしゅうかんくらいかかる工事こうじになるかもって、給水車きゅうすいしゃるとかってたけど・・・水運みずはこびが大変たいへんだからってさ。お祖母ばあちゃんのところで、工事こうじがすむまでていいってうからたんだ」

大変たいへんだよね、水運みずはこぶのは」

 むかしたようなニュースで、みずれたポリぶくろひとを、カイは映像えいぞう記憶きおくがあったのだ。

「そういえばさ・・・綾乃あやののおかあさん、久美子叔母くみこおばさんが夏休なつやすまえてたよ」

「そうなの?おかあさん一言ひとこともそんなことわなかった」

叔母おばさんも・・・おれのこと、カイってづかなかったよ、だって・・・まるで別人べつじんえたんだもん」

 カイにとっては、ちよっとせたとおもっているだけであった。

「それにさ・・・いえるとき、おかあさんがたのしんでらでしゃい、だって・・・なんのことだろ?」

 ははった言葉ことば意味いみを、綾乃あやのはわからずにいたのである。

「うーん・・・夏祭なつまつりかな」 

 八月中旬はつがつちゅうじゅん開催かいさいされる地元じもと夏祭なつまつりを、カイおもかべた。 

「おまつりね!むかし三人さんにんってたよね!」

 綾乃あやのは、カイともう一人ひとり従姉妹いとこ三人さんにん夏祭なつまつりにっていたことをおもって、カイがってべるから大変たいへんだったんだよね



   ・・・モグ ゴクン



 あちこちの出店でみせで、カイはってべるをかえす。そうなるとまえすすむことができず、三人さんにんやしろ辿たどけないでいた。

 そこで綾乃あやの奈々ななは、カイのつな出店でみせわせないようにあるく。

「あれははやわないとなくなるとおもって・・・はやめにってべたんだ」

「そんなにはやくなくなるわけないでしょ!かえりもたくさんってたじゃない!」

「そうだっけ」

 カイはとぼける。

 綾乃あやの奈々ななあきかえるくらい、カイがべたことに二人ふたり感心かんしんしてしまうほどだった。

「お祖母ばあちゃんがいけないんだよ!カイをあまやかすから!」

 あそびにるたびに、祖母そぼはたくさんの料理りょうりつくって、カイにべさせた。それもきなものばかりを、とくかえりのさい大量たいりょう駄菓子だがしたせたりしたのだった。

「そうだね、せどいまわったでしょ。綾乃あやのまえの、カイがよかった?」

 祖母そぼう。

ふとっててもせてても、カイはカイだよ」 

「ああ・・・おれもだよ」



   チラ・・・



「(けど・・・いまのカイがいいかも)」

 反省はんせい意味いみめ、祖母そぼ食事改善しょくじかいぜんなどをして、カイはいまいたる。

綾乃あやのまつりまでるつもりなら、あとわたし部屋へやにおで、採寸さいすんして浴衣ゆかたつくろうから」

 と、祖母そぼ。 

浴衣ゆかた?」

「カイとくんでしょ」

「カイと?」

いやかい?」

いやじゃないけど・・・カイは学校がっこう友達ともだちとかでまつりに予定よていがあるんじゃない?」 

 綾乃あやのく。 

さそわれたけどことわったよ。までも・・・綾乃あやのくなら一緒いっしょこうかな」

一緒いっしょくの?」

綾乃あやのだったら・・・たくさんべてもドンきしないしさ」

「そうかもだけど、ぎは駄目だめだよ」

「わかってるよ」

 自分じぶんいましめ、カイはった。

 祖母そぼ食事しょくじをすませるとつづいて、カイに綾乃あやのえる。



   パシャ パシャ・・・



「おいといていいよ、一緒いっしょあらうから」 

「ありがと」

 カイが食器しょっきあらい、綾乃あやの祖母そぼ部屋へやかった。

 食器しょっきあらえると、カイは自室じしつき──



   ゴロ・・・



「・・・・・・・」

 ──ベッドに寝転ねころがる。

 しばらくして──



    ムクリ 



うみくか」

 ──がり、カイは外着そとぎ着替きがえた。

 一階いっかいり、祖母そぼ部屋へやふすまを──


 

   スーーッ


 

 ─―カイはける。

「カイ!」

綾乃あやの!」 

 祖母そぼて、綾乃あやの下着姿したぎすがた

「こら!部屋へやはいるときは一声ひとこえかけなさいってったでしょ!」

 たまに祖母そぼ友人ゆうじんたずねてるこそがあり、カイは注意ちゅういけていたのである。

「ごめん!」

 ふすまめ──

「ちょっと・・・うみまでってるよ」


 

   クルリ



 ──そうつたえ、カイはきびすかえす。 

って!わたしっていい?」



   ピタ



 綾乃あやのめた。 

綾乃あやの海行うみいくの?」

駄目だめ?」

「それなら・・・玄関げんかんってるよ」

「うん、わかった」

   


   スタ スタ

   


 玄関げんかんがりぐちで、カイはってつ。  

 浴衣ゆかた採寸さいすんがすむと自室じしつかい、ふく着替きがえ、綾乃あやの階段かいだんりる。



   ・・・トタタタン



「おたせ!」

 しろのワンピースであらわれ、スニーカーをき、綾乃あやのう。

こっか」

「あ、ああ・・・」

 祖母そぼいえ高台たかだいにありくだるようにして、二人ふたりうみかってあるく。



   トコスタ トコスタ



 突提とっていくとなみおとこえ──



   ザザーーッ



かぜ・・・気持きもちいいね」

 そうつぶやく、綾乃あやの横顔よこがおるカイ。



   チラ   



「・・・」 

したまでこうよ」

 綾乃あやのさそう。

くの?」

「うん」

 カイがくと、綾乃あやのうなずく。

おれはあっちの階段かいだんからりるけど、綾乃あやのこうのスロープからきなよ」

 心配しんぱいして、カイがった。

なんで?わたしだって、むかしはあの階段かいだんからったよ」

 階段かいだん垂直気味すいちょくぎみ足幅あしはばせまあぶないと、カイはおもってったのである。そのてん度々たびたびうみっていたカイは、この階段かいだんれていたので問題もんだいはない。 

「でもあぶないからさ」 

平気へいきだよ」

 そこはゆずらず、カイのうしろをいて、綾乃あやの階段かいだんく。

 リズムよく、カイ階段かいだんり──

 


   タンタンッ



 ──綾乃あやの横向よこむきに階段かいだんりてく。



   トタ トタ・・・



 カイは早々そうそうしたき、綾乃あやののこ十段じゅうだんとなったとき──



   ズルッ



「あっ・・・」

 ──階段かいだんはずす。

綾乃あやの!」



    ドッサン



 とっさに、綾乃あやのめるもそのいきおいで、カイはうしろへとたおむ。 

「ご、ごめん・・・」

 カイのむねうえで、綾乃あやのあやまった。

なんともない?」

「・・・うん」

 カイがくと、綾乃あやのうなずく。

「よかった」

 安堵あんどして、カイはおもわず──



   ギュウウウ



「(カイ・・・)」   



   ドキドキッ



 ──綾乃あやのめた。

「(これなに?玄関げんかんのときとちがう・・・)」

 むね違和感いわかんに、綾乃あやのおもう。

綾乃あやの、ちょっとのいてもらっていい?」

「え・・・う、うん」

 綾乃あやのむねうえからはなれると、カイはがる。

「カイは大丈夫だいじょうぶ?」

 綾乃あやのわれ──

 


   グググ・・・



「痛い《いた》いところはないし・・・大丈夫だいじょうぶだよ」

 ──カイは左右さゆうからだひねってたしかめてみた。

「よかった」

 綾乃あやのむねろす。

「それはこっちの台詞せりふだよ」

 カイの言葉ことばに──

    


   ショボン・・・



「・・・」

 ──綾乃あやのうつむく。

 不意ふいに──



   ギュッ



「え?」

 ──カイが綾乃あやのにぎる。

くよ」

 一瞬いっしゅん綾乃あやの戸惑とまどう。

うみるからしたまでたんだろ?」

「うん」

 波打なみうぎわまでこうとするが──



   ピタ  



 ──カイはあしめた。

 だが、綾乃あやのあしすすめ──

綾乃あやのれちゃうぞ!」



   クルリ



「へへーん、れないもん!」

 ──うみにしておどける。

「なに子供こどもみたいーにはしゃいでんだよ」

 いながら、綾乃あやのあゆるカイ。



   ザザーーンッ



綾乃あやの!」



   ガパアッ



 突然とつぜん、カイにかかえられ──



   オタ オタ・・・

 


「ちょ、ちょっと!」

 ──お姫様抱ひめさまだっこ状態じょうたいに、綾乃あやの混乱こんらん

「ほら・・・れたじゃないか」

 なみで、カイのくつれてしまう。

「なんかたすけてもらってばかりで・・・ごめんね」

 再会さいかいしたときからたすけてもらっていることに、綾乃あやのわるおもう。

「いいよ、それより・・・綾乃あやのっておもいよな」

 カイがちょっとおちゃらかす。 



   ムッ



「そんなにおもくないから!」 

 綾乃あやのふくれる。

身長しんちょういくつ?」

「えっと・・・158」

「・・・45はあるな、48?」



   ドキン  



「・・・」

 カイの推測すいそくに、綾乃あやのこたえない。

「いや・・・50・・・52・・・53かな」

「そんなにないわよ!」

 しかし、カイが数字すうじに、綾乃あやのつよ否定ひていする。

絶対ぜったいあるよ」

「ないよ!このまえはかったら48だったもん!」

 綾乃あやのはついくちすべらす。 

「48なんだ」



   ニヤ



 その表情ひょうじょうに、綾乃あやのかったとおもい──

「あっ!やだ!しゃべちゃったじゃないのよ!」



   ポカッポカッポカッ・・・

  


いたいって!やめろよ!」

 ──カイのむねたたく。

 するとお姫様抱ひめさまだっこしたままで、カイはうみほうへとすすめ──



    ザブーーッ



「このままうみとしちゃおうかなあ」



   グル グル グルン



「やめて!ろしてよ!」

 ──自身じしん回転かいてんさせ、綾乃あやのまわす。

 よろこんでいるのかいやがっているのか、綾乃あやのわめく。

「ごめんごめん」

 カイはなみないところまでもどり、綾乃あやのろす。

 


   ドザン



 そのたのしそうにはしゃぐ二人ふたりを、自転車じてんしゃ突提とっていからながめていた少女しょうじょた。

「あれって・・・藤巻ふじまき カイ?それにあの・・・」

 少女しょうじょ二人ふたりのことをっている様子ようすだった。

 そんなあさ一時ひとときからよるけてゆき──



   カチ カチ・・・



 ──時間帯じかんたいになり──    



   コン コン



「ちょっといいかな?」

「いいよ」



   カチャ



 ──カイの部屋へやに、パジャマ姿すがたでクッションをいて、綾乃あやのはいってる。

今日きょうもこっちでね るの?」

 と、カイ。    

「う、うん、まよってるんだけど・・・ちょっとカイとはなしをしようとおもって」


   

   モジ モジ・・・


 

はなしはなしねえ・・・いいよ」

 ベッドでよこになっていたからだこし、カイがすわりなおすととなりに、綾乃あやのすわった。

「あのさ・・・カイは、奈々ななわたしのことってどうおもってる?」  



   ドキ ドキ・・・


 

「うーん・・・従姉妹いとこ二人ふたりとはおなとしだから、兄弟きょうだいとかってかんじじゃないよね。でも・・・きらいだったよ、あのころは」

「え・・・(きらい・・・カイはわたしのこときらいなの!)」  

 カイのった“きらい”という単語たんごが、綾乃あやのあたまなか渦巻うずまく。  



   グルン グルン・・・ 



「・・・低学年ていがくねんころって平気へいきでずけずけってくるから、クラスのみんなってわけじゃたいけど・・・きらいだった。だから・・・奈々なな綾乃あやのふとっちょってからかってから、二人ふたりともきらいだったよ」

 カイはわらはなしのようにはなすが、綾乃あやのみみはいってこない。   

「私・・・のこときらいなの?」

「まあ・・・正直しょうじきえばきかきらいかってったらきらいかな」   

 また、わらばなしのように、カイがはなす。

「・・・こうにくね」

 そうげると、ベッドからこしげ、綾乃あやの部屋へやこうとする。

 だが、カイはづく──



   グイ・・・



「どうしたの?」 

「・・・はなしてよ」

 ──うでつかみ、綾乃あやのめた

なんいてんの?」  



   ジワ・・・  



「・・・いてないもん」 

 カイもベッドからち──



   ギュ



「ちゃんとって・・・なんいてるの?」

 ──綾乃あやの両手首りょうてくびにぎり、カイがう。 

「だって・・・だってきらいって、カイがきらいってったから」

 必死ひっしなみだこらえ、綾乃あやのうったえた。

馬鹿ばかだなあ、それはむかしで・・・小学生しょうがくせいときだよ。いまちがうから」

「ほんと?」

 うるんだひとみで、綾乃あやのつめる。



   キュン!  



 そのひとみに、おもわずキスしそうになるが──



   プイッ! 


   

「・・・あ」

 ──寸前すんぜんで、カイはかおそむけてしまう。

 だが一瞬いっしゅん二人ふたりくちびるれる。

 まずいのか、カイはそっぽをき、二人ふたりあいだ沈黙ちんもくつづく。



   ・・・・・・



「わ、わたし・・・今日きょうこうでるね」

  


   ソソクサ

  


 クッションをに、綾乃あやの部屋へやる。

 


   パタン


 

ドアをに、クッションをめ── 

「・・・キスされた」

    


   ドキドキドキッ!   


  

 ──綾乃あやのむね高鳴たかなりがまらない。




  





 








 





   




  




   








   



 



 








 











  









 



  



  





   









  








 



  








   



   



  



  













  



  



 





   




 

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