アルバートおじさん
地下室への入り口を閉めたのと、ドアを破られたのは、ほぼ同時であった。蹴破られたドアから、牙を生やした怪物パイナップルが侵入してくる。
「よくもドアを壊してくれたな! この鉛玉が請求書代わりだ! 受け取れ!」
アルバートはすかさず散弾銃の引き金を引き、パイナップルを撃墜した。しかし敵はその後ろから続々とやってくる。アルバートは装弾の間を惜しみ、壁にかけてある別の銃に持ち換えて撃った。撃たれたパイナップルは、果汁を噴き出しながら床に転げ落ちた。
取り敢えず、家に侵入してきたパイナップルは全て撃墜に成功した。だが林道の向こう側からは、宙を浮く黄色い豆粒のようなものが近づいてきているのが見える。あれは全てパイナップルなのだろう。
「
家の奥からアルバートが引っ張り出したのは、長大な銃身をもつ大型散弾銃だった。その名をパントガンという。水鳥の群れを一度に仕留めるために開発された旧式の散弾銃だ。
アルバートはドラム缶からスコップで弾をすくい取って銃口に込めると、それを棒で押し込んだ。パントガンは通常、ボートに固定して運用するものである。だが筋肉に覆われたこのタフガイは、この長大な銃を片手で担いで外に出したのであった。そうしてアルバートはドアの前に陣取り、銃口を林道の向こう側に向けた。
「さぁ来い」
銃口が斜め上を向くよう、パントガンの銃身を持ち上げた。近づいてくるパイナップルは、おそらく二十は超えている。
アルバートは限界までパイナップルを引きつけ、引き金を引いた。ものすごい反動が全身を襲う。が、このタフな中年男は、吹っ飛ばされることなく踏ん張ってみせた。
「ガハハ! どうだ見たか! ……ん?」
口を大きく開けて笑ったアルバートだったが、次の瞬間には閉口してしまった。さらに大きな規模の群れが、続々と林道を直進してくるのを見たからだ。
「
アルバートは素早く拳銃二丁を構え、迫りくるパイナップルに向けてひたすら撃ちまくった。パイナップルは次々と撃ち落されてゆくが、それでも数に任せて強引に肉薄してくる。
「
とうとうアルバートの左ふくらはぎに一つのパイナップルが取りつき、ノコギリのような歯で噛みついてきた。この中年男は苦悶の表情を浮かべながらも、抵抗を諦めない。腰からナイフを抜き、パイナップルを刺しまくった。何度か刺してやると、パイナップルは口を離してそのまま地面に転げ落ちた。
だが、パイナップルたちは息つく暇を全く与えてくれなかった。アルバートの目の前には、大口を開けて白い牙を光らせながら大群が迫ってきていた。先の噛みつきによって、左ふくらはぎは血だらけになっている。負傷した状態で、あの大群と正面切って戦えるものか……さしものタフガイも、少しばかり焦りの表情を浮かべた。
だが、この男は決して諦めない。
「目には目を、パイナップルにはパイナップルだ」
アルバートが懐から取り出したのは、
投擲されたマークII手りゅう弾は、まるで吸い込まれるかのように一つのパイナップルの口内に収まった。次の瞬間、パイナップルの内部で手りゅう弾が爆発し、群れごと一気にパイナップルたちを吹き飛ばした。
凶暴なパイナップルの群れたちは、全て討ち果たされた。彼の活躍をその目で見たものはなかったが、このタフな中年男は、まさしく一人軍隊ともいうべき大立ち回りで殺人パイナップルの群れを討滅したのである。
「
立ち上がったアルバートは、左脚を引きずりながら歩き出した。さすがにパイナップルの一撃は、この男の身にこたえていたようである。
「まったく……甘ったるい匂いだぜ……」
パイナップル果汁の匂いが漂う中、アルバートは自宅へ向かった。
キラー・パイナップル 武州人也 @hagachi-hm
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