海編

第36話



 過去トラウマを植え付けられていた期末テストが終わり、夏休みがやってきた。

 セミの鳴き声が当たり前のように聞こえる真夏。

 自分の部屋でクーラーを効かせ優雅にアイスを咥えながら映画を見ていると、スマホに一通の通知が来た。


「なんわなんわ」


 通知は紗千と結梨、藤原、ギャルとのグループラインから。

 このグループラインは毎日のように紗千と結梨の絡みを見るとこができるので、餌に群がる魚のように慌てて確認する。


「な、な、な、なんふぁって!?!?」


 日陰から出たら焼け死ぬんじゃないかというほど、強い日差しが降り注いでいる。

 ザァーザァー、と一定のリズムで鳴る波の音が耳に残り潮の香りが直で来る海岸。


 シートを敷いて、少しは緩和されたが熱を吸収した砂が感じ取れる。とてもじゃないが俺はこの砂を裸足で走るような人間にはなれない。


「うっひょー! 兄貴もこっち来てみてくださいよ! めちゃくちゃ砂ですよ砂!」


「へぇーそりゃあすごいな」


 どうやら藤原は平気らしい。

 もうあいつも高校生だというのに、海に来たというだけでこの騒ぎようである。落ち着きがないが、ある意味それが藤原の良いところなのかもしれない。


 紗千と結梨は砂で城を築きあげようと何度もトライしている。


「うち、絶対ふーちゃんみたいなことできないわ」


「同じく」


 子供のように遊ぶ3人とは裏腹に、俺とギャルはパラソルの下で寛いでいる。


 藤原の提案で行くことになった、二泊三日の旅行。

 一日目は海で遊びつくという計画になっている。

 正直、海なんて暑いだけだから嫌い。けど紗千は白。結梨は黒のビキニを合法的に見ることができるので、暑さなんて吹っ飛ぶ。


「なんか変な事考えてる気がするんだけどぉ〜」


 鋭いギャルの指摘。


「別にただ暑いな……って思ってただけ」


「ふぅ〜ん。暑いんなら海で泳いできたら?」


「ふっ。俺が水の中を泳げるとお思いで?」


「そんなこと言うんなら泳げなそ。ま、うちも泳げないから何も言へふぁ〜い」


 ギャルはアイスを口に咥えながら、後ろにある荷物に背中を預けた。

 俺もだらけるため持ってきた座椅子を広げる。


「ふぅ〜」


 楽。暑いけど夏って感じがしていい。

 けどこのまませっかく海まで来たのにやってることが、普段と変わらない気がする。


「よし。俺らもなんかするか」


「えぇ〜うちのこと振ったのに、二人で遊ぶの?」


「別にそんなこと言ってないわ。それを駆け引きに出すのずるい気がするんだけど」


「ふははっ! 告白したうちよりキョドっててうけるんですけど。……よし! みんなでビーチバレーやろぉ〜って声かけてくる!」


 振り回されるっていうのはこういうことを言うのか。


 

 

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百合アニメのヒロインを寝取り、関係を破滅させる悪役になりました。百合好きの俺は何が何でもリアル百合を見たいので、二人がくっつくためなら何でもします。 でずな @Dezuna

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