第17話 昼空ティー
「――はい、という訳で初手で初配信を失敗した訳ですが」
コメント:草
コメント:(笑)
コメント:配信初心者かー?
コメント:初心者なんだよなぁ
流れるコメントは思ったよりも早く目で追うのが大変だ。
低速モードって奴は最初流れる速度が遅くなるのかと思ったが、しかしどうやらこれは連投防止のもののようだった。
俺みたいな勘違いしている人、多分何人かいるんじゃないかな?
まあ、なんにせよ結構な視聴者が集まっているのは驚いたが、しかしこれはあくまでクリスタサイト、特に星見ゲッカの影響だろう。
俺はあくまでそのおこぼれをいただいているだけだし、そしてそもそもVtuberとして本格的な活動を狙っている訳ではないので、別に配信していた時にリスナーが一人であろうとも特に気にはならなかっただろう。
ああ、いや。
多分0人だったら多分心が折れて配信を終わらせてたと思う。
誰も見ていないのに配信を続け、誰も聞いていないのに言葉を発し続ける事の出来る配信者はマジで尊敬する。
……実際、Vtuberの事を考えるとそういう方の方が多いだろう。
ツブヤイターなどのSNSを用いて宣伝をし、他の配信者への挨拶も欠かさず行い、沢山自分への導線を引いたとしても全然視聴者が集まらないなんて人は沢山いる。
だから、Vtuberとして活動し始めた以上、緩い緩くない以前にここまで沢山の視聴者が集まった事に関してはまず感謝しなくてはならないだろう。
なんて、思ったりしたり。
兎に角俺はまず最初に「ごめんなさい」と謝罪する。
「まさか配信機能が有効になるまで時間が掛かるとは思ってもみなかった。とはいえ、知らなかったでは済まないだろうし、きっとみんな期待していただろうから、まずはその事を謝ろうと思う。ごめんなさい」
コメント:いえいえ
コメント:謝れて偉い
コメント:問題ないよ
コメント:素直に謝れるのは良い事だ
そんな風に肯定的は反応が返って来るが、しかしまあだからといって自身を許す訳にもいかないだろう。
Vtuber全肯定兄貴は一定数いるだろうし、それに勘違いしていたら絶対に失敗する。
むしろそんな風に肯定してくれる人がいる以上、自分に厳しくしていかないと。
「と、言う訳ではい。イラストレーター兼新人Vtuberの昼空ティーです。イラストレーターやってます」
コメント:知ってた
コメント:知ってる
コメント:へー、そうなんだぁ(すっとぼけ)
「すっ呆け兄貴、実はそうなんだよ。そして実はあの有名Vtuberグループクリスタサイト所属三期生の一人、星見ゲッカのママでもあるのだ。男なのにママって意味分からないな。俺はお前を産んだ覚えはねえ」
コメント:いきなりのネグレクト発言は草
コメント:不味いですよ!
コメント:お前の方が不味いだろ
星見ゲッカ:へー
コメント:本人おるやんけ!
そしてコメントが俄かに騒がしくなったのを見てどうやら彼女、星見ゲッカが見ているらしい事に気付く。
いやまあ、彼女の事だからどうせ見ているんだろうなとは思っていた。
俺は苦笑する。
「うっすおっす、ママでちゅよー」
コメント:うわきつ
コメント:チャンネル登録ボタン押しました
コメント:それは……どっちだ?
コメント:きつすんぎ
星見ゲッカ:そんなてぃーくんも好きだYO!
コメント:大胆は告白は美少女の特権
「はいはい、ありがとうなー……って事で」
俺は早速、配信画面に今日決めるべき事のリストをまとめた画像を移す。
今回は初配信なのでファンネームとか配信タグ、後はファンアートタグなどを決めなくてはならない。
とはいえ、まあ、それに関してはこちらで既にある程度決めてあって、あとはリスナー達がそれを了承してくれるかが問題だった。
「はい、という訳で既にいろいろと決めてあるんだけど。ファンネームは『昼ボーイ』、配信タグは『白昼夢観察中』、そしてファンアートタグは『ティーアート』にしようと思うんだけど、どう?」
コメント:おけまる!
コメント:良いじゃん
コメント:流石はって感じのセンス
コメント:Kネキはもっと見習ってもろて
コメント:Kネキは爪の垢を膳してください
コメント:ボコボコで草
コメント:本人がいないところで散々である
茲米子ch:私がなんだって?
「草」
おるやんけ。
ちなみに彼女のネーミングセンスはコメントで突っ込まれているところからも分かる通り、壊滅的である。
最初のファンネームは『ここ推し』でした。
あれ、今考えてみると結構良いネーミングじゃね?
「ていうかクリスタサイト三期生わらわらやんけ。こんな配信見てないでもっと配信してくちゃって良いんだぞ? 俺も配信止めて見に行くから」
なんて、冗談言いつつもコメントでは俺が提案したタグに異論はないようなので、ひとまず今回の目的は完了した事になる。
とはいえ、まだ時間は残っているな。
好きなものとか話すか?
星見ゲッカ:ティーくんの好きな者は超絶美少女ゲッカたんなんだよなぁ
「……お前、いつの間にそんな言葉遣い覚えたんだ。お母さん悲しい」
そう言いつつも訂正しなかった事にコメントで突っ込まれたので、俺は渋々「いや、別に嫌いではないよ」と答える。
それが失敗だった。
コメント:マジすか!?
コメント:両想い……ってコト!?
コメント:ここが式場配信ですか?
茲米子ch:爆ぜろリアル
コメント:Vtuberがリアルは草
「あーあーあー! お前等好き勝手言いやがって! 今回の配信はこれでおしまい次いつやるか分からないけど決まったらツブヤイターで宣伝するからその時もよろしくなっ」
俺は急いで配信を切り、配信が切れた事をしっかりと確認した上で「ふう」と息を吐く。
まずい、頬のニヤニヤが止まらない。
思った以上に俺の言葉を反応してくれる人が沢山いるという事が嬉しかった。
なるほどこれは、中毒になってしまいそうだ……
幼馴染がVtuberになった、何故か配信の度に俺がトレンドに上がるようになった。 カラスバ @nodoguro
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