第16話 結局は自己満足だけど

 ――つまるところは我儘なんだと思う。


 そもそもVとして活動する事にメリットはない。

 いや、スパチャとかして貰えれば懐が潤うけど、だけど個人勢でそのレベルに至るのはそうとうの努力と運が必要だろうし、そしてそのレベルまで頑張ろうという意欲を俺は持っていない。

 じゃあ何でやるのかと問われれば、それはもう「楽しそうだったから」としか言いようがない。

 南海灯、彼女。

 いや、この場合は星見ゲッカと言うべきか。

 そして彼女と一緒に活動をする同じ箱のVtuber達。

 俺は彼女達に沢山の笑顔を貰った。

 

 だから、とは言わない。

 それだとまるで恩着せがましいし、今回のこれはあくまで俺が好きでやった事だ。

 ただまあ、そう。

 憧れはしたのだ。

 あのキラキラ煌めく――本当はそんな事はない事は分かっているけれども。

 きっと本人達は俺の見えないところできっと苦労しているだろうし、辛酸を幾度となく舐めて来た事だろう。

 一筋縄でいくはずもなく、あの場所に至るまでには何度も高い壁を乗り越え、あるいは恐し、踏破する必要があったに違いない。

 そして、今の俺にそのような覚悟があるのかというと、まあ、ないのだろう。

 俺はあくまで彼女達の綺麗な上澄みしか見ていないし、それをちょっとだけ味見したいって気持ちでVtuberになろうとしているのだから。


 人が見たら俺を「舐めている」「現実を見ろ」と口にするかもしれない。

 事実、彼等の主張の方が正しいのだろう。

 遊び感覚でメリット度外視での活動、なるほどそれはVtuberを舐めていると取られても仕方がない。

 それでも、と俺は主張する。


 憧れに手を伸ばし、マネをするという行為は多分、きっと尊くはないけれども間違いではないのだと。


 だから、俺は始める事にする。

 彼女から続き、彼女が見て来た景色を俺も味わいに行くとしよう。

 さあ、まずはその第一歩を――












「……ん?」


 なんか、配信開始まであと23時間って文章が現れたんですけどこれってバグですか?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る