青い空に白いタオルと
おくとりょう
ふたりで登る
「もう!しっかりしなよ!」
リズムよく階段を登りきったタツキは振り返って、声をあげた。ギラギラとした夏の陽射しが、彼の健康的な日焼け肌に反射する。
「ちょっ……ちょっと休憩しようよぉ……」
彼の後から階段を登るヨウコ。汗だくで疲れきった彼女はゼェゼェと息を切らして、そう言った。
『いつもは偉そうにお姉ちゃんぶるくせに!』
思わず飛び出そうになったその言葉。でも、彼女の必死な様子に呑み込んだ。
彼女のいつも涼しげな頬は高揚して紅く染まり、髪から滴る汗の雫が眩しい陽射しに鈍く輝く。お気に入りだというグレーのTシャツはびっしょり濡れて、黒く染まっていた。流れる雫はそれでも止まず、石段にぽつりぽつりと染みを残す。
タツキは何を思ったのかピョンピョンと軽快に数段降りると、彼女の手をスッと握った。
びしょびしょに濡れた手に、小さな温かい手が絡みつく。
「……え?何?何?
暑いから引っつかないでよー」
拒絶されたタツキは少し口を突き出して、不満げな顔をすると、白いタオルを乱暴に彼女に押しつけた。
「あとで、水分補給もした方が良いよ」
タツキは再び階段を駆け上がる。トコトコトンっと、小柄な身体で愉しげに。
ピョコンと跳ねた寝癖頭が、彼の動きに合わせてゆらゆら揺れた。それを見たヨウコは、クスッと笑って口の中で小さく呟く。
「転けないように気をつけなよ」
二人に向かって、風がぶわっと吹き抜け、ヨウコの首元のタオルがふわっとあおられた。パッと掴んだ拍子に振り向くと、眼下に彼らの街が広がっていた。
鮮やかな青空の下。今日も穏やかに照らされていた。
青い空に白いタオルと おくとりょう @n8osoeuta
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