灼けるようその瞳に

「ひ、陽奈……?」


 動揺している雪乃を見るのは、思ったより楽しいかもしれない。


(作成成功、かな?)



◇◆◇◉◇◆◇



 付き合ってから、雪乃との初めてのデート。雪乃はあまり興味がなさそうだったけれど、陽奈が見たいと言ったイケメンがたくさん出てくる映画に付き合ってくれて、映画を見た後は一緒に盛り上がってくれた。


 そして、そのままの流れで以前のように雪乃の部屋まで来ていた。今日の雪乃の格好には驚かされたけど、実は陽奈もサプライズを用意していたのだ。


「ねぇ、雪乃」

 映画の感想を言い終えて落ち着いた頃、隣に座っていた雪乃に思い切って切り出してみた。


「なに?」

「この格好、好きだって言ってくれたよね」

 そう言って改めて、服をしっかり見せるように雪乃との距離を詰め直した。


「うん」

 少し戸惑う雪乃の瞳を見つめながら、もっと距離を詰めていく。


「でも、こういうのも好き……?」

「えっ?」


 言いながら、自身の上着のボタンを少しずつ外していく。


「ひ、陽奈……?」


 動揺している雪乃を見るのは、思ったより楽しいかもしれない。


(作成成功、かな?)


 今回の陽奈の服は着脱可能なタイプになっていた。だから、上着のボタンをすべて外してしまえば、いつも通り胸元が大きく開いた服になる。次にスカートに手をかけると、雪乃はまたさらに声を上げた。


「ちょ、えっ!?」


 戸惑いながらも、視線は雪乃のスカートに釘付けだ。その視線がなんだかとても心地良い。焦らすようにロングスカートのボタンもすべてとってしまえば、こちらもまたいつものようなミニスカートになる。


「じゃぁ〜ん。どう? これ、こうやって外せるんだよね〜」

 手を広げて、抱きしめられるような距離で見せつける。


「……最高です」

 雪乃は何故なぜか両手で顔を覆いながら、絞り出すように答えた。


「よかったぁ〜」

 雪乃は露出が少ない方がいいと言いながらも、いつもの露出が高いう服も好きなんじゃないかと思って、ちょっとしたサプライズを仕掛けてみたのだが、正解だったようだ。


「じゃあ、もっと脱がせてもいいよ?」

「っ……!」


 耳元で囁けば、すぐそばで息をむような声が聞こえた。


「で、でも……」

 良い雰囲気だと思ったのに、雪乃はなかなか触れてこようとしない。


「ふ〜ん。嫌なの?」


「だ、だって、こないだ私抑え効かなくて……! 無理はさせたくないし!」

 そう言って俯く雪乃の顔を、前と同じように人差し指で持ち上げる。


「無理、ねぇ? いつ、誰が無理してるなんて言ったぁ?」


「そ、それは……」

 揺れ動くその瞳には微かだが、燃えるような炎がちらついている気がする。


(……もうひと押し)


「ねぇ、雪乃。忘れてない?」

 雪乃のちゅう彷徨さまよっているその手を掴み、自身の胸元へ招き入れる。


「あたし、こういうことするのだぁ〜いすき、なんだけどなぁ」


「っ〜〜!!」


 胸元に触れる熱い手が震えたかと思った瞬間、もう片方の手で背中を思いっきり引き寄せられた。


「ゆきっ、んんっ!」

 その熱い唇が、陽奈の唇を食い千切るように奪う。


(あ、スイッチ入ったぁ……)


「陽奈っ……!」

 少し唇が離れた瞬間、あのときと同じ瞳を見つけた。


「ぁ、や……、もっとぉ……!」

 少しでも離れるのが嫌で、自分からさらに雪乃を求める。


(あぁ、これだ……)


 これが、ずっと欲しかった。普段の雪乃からは想像がつかない、そのけるような瞳。

 その瞳が、陽奈だけを映し出している。陽奈だけを必死に求めている。


 ――それが、本当に堪らない。


 雪のように白いその綺麗な肌を、自身の熱で赤く染めながら、その雪を溶かす快感に溺れていった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ダメな君のそばには私 蓮水千夜 @lia

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ