香笛春風(かふえ はるかぜ)は、養父に代わって喫茶店『ミニドリップ』を経営する女子高生である。コミュ障を自認し、どうにも人と距離感を置きたがる彼女だが、訪れる人々との交流する中で少しずつ成長していく。
マスターが女子高生でコミュ障で、しかもかなり変わった性格の持ち主。キャラものかと思いきやそうではありません。春風さんの背景には重い背景があって、そのギャップが軽やかな物語へずしりと効かされているのです。こうしたお話はタイムリミットを設け、楽しさの裏に緊迫や悲哀を醸すことが多いのですが、だからこそ主人公そのものをもって醸す本作の仕掛けは本当におもしろい。そして主人公に焦点が合わされていることで、『ミニドリップ』という場でなければ出会うことのなかった登場人物と関係を結び、結果として彼女がどう変わっていくかも鮮明化され、ドラマとして際立っているのです。
軽くて甘い読み口にはしる刺すような苦み、この極上の味をぜひご賞味ください。
(「喫茶店へ行こう」4選/文=高橋 剛)
言葉を紡ぐというのは、すなわち心情ないし情景を「言葉」という記号を繋ぎ合わせて表することです。WEBという特質上、画一した字体で綴られてしまう分、紡いだ者の息遣いや体温というのはなかなか感じにくい、どこか冷めたものが出来上がり勝ちです。
でも、この物語は違います。
17歳、花も恥じらう女子高生な店長:香笛 春風さんと彼女にもとに集う常連さんや仲間たち。彼女たちの何気ないやりとりや会話には「生」というものが感じられます。活字だけで創られた世界なのに、なぜか感じられる"温もり"や"息遣い"。全く不思議ですねぇ~
読んでいてその世界に入り込めるというか、気づいたらわたし:春風さんになった気分でいるんですよ。一心同体? 憑依的な? とにかく、PCないしスマホの画面上に広がるだけなのに、脳内にその情景が浮かんでいつの間にかそこに息づいているみたいな? そんな感覚になります。個人的に、第1話から3話にかけてがヤバいです。
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また、文章表現ないし言葉選びもいいですね。某軽快な曲調で女性のリアルな心を謳う、春風さんも大好きな某歌姫がごとく、飾り気がないのに味気ないわけでもない。春風さん視点で紡がれた"素直な気持ちを素朴な言の葉"がステキです。
字下げや改行についてはあとからいくらでも手心を加えて軌道修正可能ですが、こういう"言葉の紡ぎ方"はセンスがないとなかなかうまくできないところですからね。文末を「です」「だ」で占めるのではなく、体言止めや対句を用いてリズム感を出して小気味良く仕上げたり、文章を敢えて途中で止めてあとを想像させる技法かなんかは、相当ハイセンスだと思いますよ。
これからも自分のペースで物語を紡いでくだされ。応援しています。
たまには真面目に感想を述べてみました、副店長よりw