日本の韓国艦隊攻撃

「韓国艦隊を確認しました」


 六本木に設置された統合作戦司令部の幕僚の一人が報告した。


 国防軍は一軍制となっている。

 だが陸海空と各専門領域は分かれている。

 調整、統一指揮のために各部門より派遣された幕僚からなる司令部が作られ、作戦の調整を行っていた。

 特に緊急事態の対処では重要だ。

 計画通りに進んでいたら問題は無い。

 だが戦場では何が起きるか分からない。

 突発的な事態に対処するには、適切な助言が必要だ。


「何処から来ている」


 韓国艦隊の発見も緊急に対処すべき事態だ。

 戦力は日米に比べ小さくても、対艦ミサイルを食らったら危険だ。

 特に多数の上陸要員が乗り込む揚陸艦艇が撃破されたら犠牲者が出過ぎる。

 百人を超える死者を出せば、例え勝ったとしても、国会で追及されるだろう。

 大戦や極東戦闘の時と違い、日本国民は戦死者に敏感になっている。

 制限が加えられるのはきついが、人命を粗末にするよりマシだ。

 だからこそ、脅威に対しては徹底的な攻撃を加えたかった。

 なので部下も正確に報告する。


「対馬海峡北東五〇海里より対馬海峡西水道に向かっています」


「射程内に入ったか?」


「間もなく入ります」


「攻撃可能な全部隊に攻撃用意を命じろ。攻撃は一五分後に設定」


「了解」


 指示と共に攻撃に参加する部隊が幕僚たちに設定される。

 予め対艦ミサイルを搭載していた震電改やF4ファントム、そしてミサイルを積むだけならとT1練習機が準備されていた。

 信濃でも、空母決戦だと制空のためにF14が緊急発艦し、攻撃機が飛び立った。

 だが、韓国への攻撃を行っていたために空母攻撃に発進できた機体は少なかった。

 その代わり、攻撃の主力になったのは国防軍陸軍部及び陸上自衛隊だった。


「全部隊準備完了! 着弾調整良し」


「各隊ミサイル発射!」


 命令と共に発射命令が出された。

 航空機から発射されると共に、日本海、対馬海峡沿岸から多数の噴煙が上がった。

 八〇式誘導弾改、地対艦ミサイルだった。

 度重なる戦争で東側の対艦ミサイルの威力を見せつけられた日本は、自らも装備するべく航空機搭載型の対艦ミサイルを開発した。

 それが八〇式対艦誘導弾だ。

 初めての国産対艦ミサイルで信頼性は高かった。

 だが、推進方式が固体ロケットモーターのため、射程が五〇キロと短く、攻撃機は敵の対空ミサイルの中に飛び込み、大損害を受ける事が予想された。

 そのためアウトレンジ可能な長射程にするべくターボファンエンジンに切り替えた改造型が完成。

 元々、ターボジェットエンジンタイプの開発も行われており、開発期間は短く済んだ。


 完成したミサイルは射程は一五〇キロ以上と、最低限の安全距離から発射できるようになった。

 だが、射程が延長された分、陸上からでも発射できないかと提案がもたらされた。

 東側の着上陸作戦が想定される中、迎撃に出る陸上自衛隊は自らも沖合の揚陸艦艇や船団を攻撃できる手段を模索しており、地上発射型の対艦ミサイルを求めた。

 独自に攻撃できるのは勿論だが、陸上ならば隠匿、敵に見つかりにくく偽装する事が可能であり、生存性が高い。

 航空部隊や海上部隊にとっても、幾重にも防空網が構築されているであろう揚陸部隊へ貴重な装備を危険に曝して攻撃する必要がなくなるので、陸上自衛隊の申し出に協力した。


 こうして陸上発射型が完成し配備された。

 当初は牽引式だったが、やがて小型化してシステム化した八八式対艦誘導弾が開発されるが、その先駆けとなるミサイルだった。

 当初は、宗谷海峡封鎖、津軽海峡警備のため北海道に集中配備されていたが、韓国との戦闘が始まると直ちに九州方面へ移動が命じられた。

 高速自動車道と鉄道を利用して移動し、部隊は作戦開始に間に合った。


 直ちに対馬海峡周辺に封鎖するように日本海に面した北九州及び山陰地方配備。

 作戦開始の時を待った。


八〇式対艦誘導弾について

https://kakuyomu.jp/works/16816927862107243640/episodes/16818093089823594288


 そして、韓国艦隊が発見されると、全力で発射された。

 参加したのは三個中隊、三六発。

 これに航空機発射の二四発と導入されたばかりのハープーンも航空隊から二四発放たれ、韓国艦隊に襲い掛かった。

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