韓国艦隊全滅
「ミサイル多数接近!」
「迎撃しろ!」
レーダー手の悲鳴のような報告に司令官は即座に反応し、直ちに迎撃を命じた。
しかし、近代化を始めたばかりの韓国海軍に対空ミサイル搭載艦はほとんどいなかった。
駆逐艦とフリゲート艦が放つ七六ミリ砲が唯一の対抗手段であり、残りは各艦の三〇ミリ機銃だけだった。
創設されて日が浅いこともあるが、北朝鮮小型艦との小競り合いだけで本格的な空海戦を経験していないため、このような設計、装備になってしまった。
さらに、追い打ちを掛ける事態が発生する。
「新たに北方にミサイルを探知!」
「味方の援護か!」
「いいえ! 反応なし! 敵の潜水艦発射ミサイルと思われます!」
無線傍受で味方の攻撃を知った黒潮が放った対艦ミサイルだった。
出撃に際して、補給部隊を半ば脅して深谷が積み込ませた潜水艦発射型ハープーンだった。
位置が露見するため、使用は制限されているし、潜水艦長は使いたがらない。
だが深谷は使いどころがあると判断し、載せた。
そして今こそだと判断し発射させた。
「迎撃しろ!」
その時、外周部にいた駆逐艦が一隻吹き飛んだ。
船体の中央から突然水柱が立ち上がったと思ったら、船体が二つに分かれ沈んでいく。
「何だ!」
「分かりません! 突然爆発しました!」
一瞬事故かと司令官は思った。しかし違った。
「あ、また一隻! 爆発沈没しました!」
今度はフリゲート艦が爆発。同じように沈没した。
「敵の攻撃だ」
事故による誘爆だとしても連続で起きることはあり得ない。
そして、司令官の予想は正しかった。
それは深谷が予め放った魚雷だった。
ミサイル攻撃に先立ち、五本の魚雷を発射して密かに接近させていた。
そしてミサイルを再装填させ発射。
攻撃に先立ち魚雷が到達するように仕掛けていた。
ミサイル攻撃が始まる前に陣形を混乱させるための魚雷だった。
だが、ミサイル攻撃を回避するため高速を出しており、魚雷を探知できなかった。
魚雷の整備不良もあり二発しか命中しなかったが、それでも韓国海軍は大混乱状態に陥った。
「ミサイル防空網を突破!」
ほとんど迎撃されずミサイルが到達した。
韓国艦艇のECM、電波妨害により四分の一が目標を見失い墜落。
残りは初期故障、韓国軍の迎撃により墜落。
だが残り約半数、四六発が韓国艦隊に殺到した。
真っ先に駆逐艦蔚山へ三発のミサイルが命中。
朴正熙によって始まった海軍近代化計画の一番艦だった。
しかし、十分な対空装備がなく、ミサイルを迎撃できなかった。
艦首に一発、艦尾に二発受け、弾薬庫が誘爆し瞬時に沈没した。
浦項はもっと悲惨だった。
回避しようと回頭したため、ミサイルにレーダー投影面積を増大させてしまい、四発のミサイルを引きつけてしまった。
蔚山級より小さいフリゲートでは耐えられるはずはなく、全艦にミサイルを受けて大爆発。
瞬時に沈没、いや消滅した。
残りの護衛艦も二発以上のミサイルを受けて、沈没した。
「ミサイル本艦に近づく!」
残った李舜臣へ八発のミサイルが集中した。
韓国海軍最大の艦艇であるため大きく目立ち、標的になってしまった。
メルボルンから残されたボフォース機銃で迎撃し一発を撃墜したが、それが限界だった。
前部に二発、中央部に一発、後部に三発命中し、速力が低下。
復旧しようにも司令部である艦橋に一発が命中。
艦橋が吹き飛び艦隊司令部及び艦首脳部は全滅。
命令を出せる者がいなかった。
機関指揮所の副長が気が付き、応急指揮を執ろうとしたときには手遅れだった。
これまでの戦例通り、ミサイルの残存燃料により艦内は大火災が発生していた。
消火しようにも発生した浸水により電源系統がショート。
海水ポンプが停止し消火装置が機能不能。
炎上するしかなかった。
退艦を命じたが、艦内放送も停止し、命令は伝わらなかった。
しかし、その前に大火災によって持ち場に残ることのできなかった乗員が次々と海に飛び込んでいった。
沈没まで二〇分と短かったが、一〇〇名以上が生存したのは、そのためだ。
韓国艦隊は文字通り全滅した。
だが日本への牙は、まだ残っていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます