須賀の素早い行動
須賀は内陸へ向かうように命じた。
「戦力の逐次投入は危険です」
だが大隊幕僚が反対する。
部隊全ての上陸は終わっていない。
一部だけで進出するのは敵に叩かれる危険がある
「いや、内陸に降下した彼らが今必要としているのは装甲と火力だ」
須賀は上陸した戦車で内陸へ向かうことを頑なに、いや心に決めていた。
「彼らは身一つで戦っている」
精鋭が集まった空挺部隊だが、実態は歩兵部隊。
輸送機の限界もあり、戦車などよほど大型でなければ積み込めない。
空中投下など、ほぼ不可能。実行できても壊れるのがオチだ。
そのため、一部を除いて空挺部隊に装甲車両は配備されていない。
だから、空挺部隊は機甲部隊が合流するまで、ただの歩兵部隊でしかない。
敵の機甲部隊が来たら容易く撃破されてしまう。
「彼らに戦車を提供する」
「航空支援がありますが」
「航空機はいつも上空にいられるわけではない」
航空機は燃料が無くなれば墜落する。エンジンを切っただけでも空を飛び続けられない。
だが車両は、燃料が無くても、エンジンを回さなくても地上に存在できる。
地上部隊が必要とされる理由だ。
「戦車に兵隊を乗せろ」
「跨乗歩兵は危険です」
戦車は目立つし敵の脅威だ。
真っ先に潰そうと砲撃を集中されてしまう。戦車は平気だが、外に乗っている歩兵などあっという間に潰されてしまう。
大隊幕僚はそのことを危惧した。
しかし須賀は命じた。
「移動手段にするだけだ。周囲に敵はいないし、敵に突っ込ませるつもりはない」
戦場の足として使わせ、空挺部隊への援軍に使うつもりだ。
「直ちに出動! 空挺と合流せよ!」
「は、はいっ!」
須賀の命令により、直ちに内陸への進撃を始めた。
橋頭堡の確保が出来ていないとして上級司令部から停止命令が出てきたが、須賀は無視した。
そして接近中に報告が入る。
「この先の空挺第一大隊へ韓国軍の装甲車部隊が反撃に出ているようです! 航空隊は弾薬と燃料切れで今すぐには向かえないそうです」
「やはりな」
航空機は迅速に行動できるが、留まることは出来ない。
やはり、地上部隊には戦車が必要だ。
「敵部隊に包囲されているか」
「いいえ、峠の下の方から攻めてきているそうです。しかし、周りから浸透されつつあります」
「全速で行け! 救出する!」
須賀は命じ、急がせる。
「見えた!」
峠で奮戦する空挺部隊が見えた。
だが、その隣の山に違う制服を着た部隊がいる。
「韓国陸軍か」
既に一部が峠の脇へ迂回して攻撃を加えようとしている。
「戦車砲! 撃て!」
無防備な連中に戦車砲を食らわせ、山の向こう側へ追い返す。
一部を残し、動けなくした後、須賀は主力を連れて空挺に合流するべく急がせた。
「海兵の須賀です。遅くなりました」
「お待ちしておりました」
数少ない対戦車兵器で抵抗していた空挺の指揮官が須賀の戦車を見て感激し、敬礼で迎えた。
「敵に戦車は?」
「いいえ、装甲車のみですが、厳しいです」
「了解! すぐに排除します! 戦車! 前へ!」
命じると七四式戦車が稜線に近付く。
そして油気圧装置で姿勢を高めにして砲塔だけ乗り出すと、攻め上がる韓国軍装甲車に砲撃を浴びせた。
一〇五ミリ戦車砲を受けて装甲車は木っ端みじんとなる。
戦車と装甲車では圧倒的に性能差がある。
その後も七四は砲撃を続け、韓国軍を撃退した。
「よし、撃退できたぞ」
「団長! 後続が追いつきつつあります!」
「良し!」
後続のAAV7水陸両用戦闘車が追いついてきた。
これで迅速に移動できる。
「敵に戦車は居ないはずだ」
韓国軍の戦車は全て北朝鮮に備えて三八度線に置かれており、済州島にはいない。
だから須賀は戦車を前に出し装甲で攻撃をはじき返し、主砲で粉砕しようとした。
だが、韓国軍は陣地を作り上げ抵抗した。
さらに、対戦車ミサイルを放ち一両の七四式に命中した。
「流石に対戦車ミサイルを持っているか」
焦って損害を出してしまったことを須賀は後悔した。
残った戦車が砲撃で反撃し、発射した陣地を撃破するが、後方には、まだ韓国軍の陣地がある。
「砲兵、迫撃砲でもいい、陣地を砲撃できないか」
「稜線が邪魔で砲撃できません」
山の陰に位置する韓国軍陣地のため、直射砲や迫撃砲の射角では攻撃が難しい。
「航空支援を要請しろ!」
須賀の指示を受け、速やかに信濃艦載機へ支援要請が送られる。
だが、信濃の艦載機はすでに攻撃目標を抱えており、即応できる機体は限られていた。
そのため、能登から発艦したスーパーハリアーJが急行することとなった。
スーパーハリアーJ
https://kakuyomu.jp/works/16816927862107243640/episodes/16818093088424759379
二基のペガサスエンジンを轟かせながら現場に到着したスーパーハリアーJは、
ロケット弾による制圧射撃を開始。
韓国軍の陣地を一瞬で黙らせることに成功した。
「敵に反撃の猶予を与えるな! 攻撃だ!」
須賀は好機を逃さず、自ら先頭に立って指揮を執る。
韓国軍の陣地を制圧し、最終的には韓国軍は降伏に追い込まれた。
「降伏しました!」
だが、須賀は満足することなく、次の指示を下す。
「このまま済州市に突入し、全島を制圧する! 峠の確保と捕虜の見張りに一個中隊を残し、残りの戦闘団は突撃を続行せよ!」
須賀の号令とともに、第一海兵連隊戦闘団は空挺部隊や空中機動部隊を引き連れ、済州市へ雪崩れ込んでいった。
三つある海兵連隊戦闘団の中でも、最初に突入を果たした須賀の部隊は、韓国軍の防衛陣崩壊と済州島全島制圧のきっかけを作り上げた。
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