済州島制圧の衝撃

「済州島に日本軍が上陸だと……」


 報告を聞いた全大統領は呆然とした。


「何かの間違いでは無いのか! 独島にやってくるのでは無いのか!」


「間違いなく済州に来ています」


「防衛部隊は?」


「圧倒的な戦力を前に崩壊しています」


 最重要である三八度線から遠く、昔から反乱が多かったため、郷土予備軍の数が少ない。

 装備も下等なものしか配備されておらず、戦車など一台もない。

 事実上の機甲部隊である日本海兵師団を前に崩壊するしかなかった。


「増援は?」


「送ろうにも日本軍の航空部隊が強く、輸送機を送れません」


 迅速に部隊を移動させようにも、F14をはじめとする戦闘機部隊が遥か彼方から攻撃を仕掛け、撃退している。

 援軍を送ることは事実上、不可能となっていた。


「なんてことだ……」


 独島を奪回したのに、済州を奪われるという大失点を起こしてしまい、全大統領は恥辱で身体を震わせ、怒鳴った。


「世界は何をしているのだ! 韓国の領土を再び日本が侵略しようとしているのだぞ! 国連は何をしている! 日帝共を懲罰しないのか!」




「ミスター佐久田、今回の作戦行動に米国は非常に大きな憂慮を抱いております」


「憂慮とは?」


 ホワイトハウスでレーガンに尋ねられて佐久田は、とぼけた声を返した。

 一度日本に戻った佐久田だったが、作戦準備、各省庁との調整を終え、発動と共に再びコンコルドP型政府専用機で成田を出発。

 最初の攻撃と共にワシントンに入り、ホワイトハウスに行く。

 日本の作戦行動についてレーガンに説明するためだ。


「韓国を再び侵略し、併合しようとしているのではないかと疑念を抱いている。

韓国大使も日本の侵略主義が再び復活したと言い、国連の敵国条項を発動し日本を成敗するべきだと訴えている」


「これはおかしな事を言われますね」


 佐久田は心外とばかりに嘆くように言う。


「日本は韓国の侵略に対して、自衛行動を、侵略に対する防衛行動を起こしているに過ぎません」


「韓国本土を攻撃した上、攻め取られた島と反対の海域にある島を攻撃する事がか?

戦闘地域の拡大と領土拡大を狙っているように見えるが」


「日本の目的は侵略に対する防衛、奪われた領土の奪回です。

しかし、奪回の為に出撃したところを横から攻撃される事を防ぐ為に、韓国の反撃拠点を奪い、有利な地点を制するのは軍事行動の基本です。

日本はそれを行っているだけです」


「だが、韓国本土など戦域を拡大している。このまま韓国を征服するのか?」


「それは決してありません。日本は戦争を短期間で終わらせるため、最適な軍事行動を行っているに過ぎません。韓国の領土を奪う意思がない事は、明言させていただきます。

また、被害を出さないように攻撃は最小限に済ませています」


 佐久田の言ったことは本当だった。

 韓国軍の基地破壊は最小限で納めていた。

 米韓連合司令部の指揮下にある韓国軍基地は米軍の影響力が強く動かずにいたため、攻撃していない。

 その意味で抑制していた。


「占領した済州島はどうする気かな?」


「戦争終結後、然るべき時に韓国へ返還致します」


「然るべき時とは?」


「韓国が竹島を日本領土と認め、二度と侵略行為を行わないこと。

これが保証されれば、現地住民の意思が返還であれば返還致します」


「住民投票で帰属を決めさせ、日本に併合するのか?」


「それはありません。 韓国への返還が嫌なら独立して貰います。 日本に併合する事はありません」


 近い領土とはいえ、言語も文化風習も違う土地を併合するなどコストが掛かりすぎる。

 そのことを明治以来日本は骨身に染みて理解している。

 面倒な事などしたくなかった。

 だが、韓国が手を引くまでの切り札として保持はするつもりだった。


「日本が求めるのは何だ?」


「東アジアの秩序と平和です。武力で現状を変更し、傍若無人な行動を行う事は許してはなりません」


「ふむ」


 佐久田の言葉にレーガンは満足した。


「日本の言葉を信じよう。だが、言葉を違えないで欲しい」


「勿論です。

アメリカは理解し協力してくれると信じております」


「できる限りの事はする」


 日本と韓国の間を取り持つ。

 万が一韓国が約束を違えたら、アメリカは日本を支援しろよ、と言っているに等しい。

 完全に巻き込まれたことにレーガンは苛立った。

 しかし日本を失うことは出来ないし、理は日本にある。

 ここは日本の言い分を聞くしかなかった。


「早期に戦闘が終結することを」


「はい」

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