上陸作戦開始
「中々に壮観な眺めだな」
艦橋にいた須賀は飛んでいった航空隊の動きを見てつぶやいた。
信濃航空団をはじめとする航空部隊が上陸予定地へ空爆を行っている。
偵察により見つけた敵部隊を仕留めているのだ。
空爆が終わると、大和以下の艦艇部隊が艦砲射撃を開始し、上陸地点を制圧する。
彼らの任務は地面を均すこと。
偵察で発見できなかった陣地を破壊し、上陸する須賀達海兵を援護しているのだ。
砲撃が終わると須賀は甲板に目を下ろし、微笑んだ。
ヘリに乗り込む自分の部下達、機敏に乗り込んでいく姿に須賀は満足していた。
須賀の指揮下にある第一海兵連隊戦闘団。
歩兵の海兵連隊に戦車と砲兵、航空部隊を加え増強された総計二〇〇〇名の大部隊。
それら全ての人員と装備を積み込める能登型多目的支援艦、事実上の強襲揚陸艦の能力に満足した。
強襲揚陸と命名すれば、反軍アレルギーの強い日本で受け入れられないという意見から、大規模災害の救援基地としての役割を果たすとして、多目的支援艦と名付けた。
「名称詐欺だ、税金の無駄だ」と野党は反対したが、建造は行われた。
就役直後に台風被害が発生し直ちに出動。
洋上基地として、ヘリ、揚陸艇による物資輸送、入港できることが分かると直ちに入港し、病院、入浴施設、一時避難所として活躍。
その能力を発揮し、能登型は国民に受け入れられた。
能登型
https://kakuyomu.jp/works/16816927862107243640/episodes/16818093087086619914
だが、能登型が真価を発揮するのはやはり上陸作戦だ。
甲板に展開する八機のCH47Jへ完全武装の海兵隊員五五名、迅速に運ぶため機体の中央部に座らせて乗り込む。
彼らが乗り込むと直ちに発艦。
残りも次々と発艦し、上陸地点へ向かって行く。
続いて甲板の片隅で待機していたAH1コブラが離陸し向かう。
発進するのは能登だけではない。
僚艦の由良、根室からもヘリ部隊が発進していく。
しかもヘリの数はそれだけではない。
南東の方角から次々と島に向かっていく。
空中機動師団のヘリ部隊だ。
彼らも重要拠点を占拠するために送られている。
ヘリだけではなかった。
能登の艦尾からは戦車を八両積んだLUC二隻と上陸用舟艇が発進し、AAV7が続く。
彼らが海岸へ白い航跡を突進している間に、後方の通信室から伝令が興奮気味に入ってきて大声を張り上げた。
「先遣隊より報告! 上陸成功!」
報告に艦橋の全員が歓声を上げた。
先遣隊が向かう前に、信濃の艦載機部隊と大村、築城基地、新田原に展開した航空部隊が爆撃を行い、島に点在する韓国軍施設を破壊している。
だが伝令は負けずに大声で通信文を読み上げる。
「橋頭堡確保! 主力の上陸を要請する!」
「良し、後続を投入しろ!」
「はい」
残ったCH47Jも発進準備を行わせる。
艦内のスロープを使い、牽引車によって引き上げられた105mm榴弾砲と弾薬車が四セット、そして七四式小型トラック四両を吊り下げ、人員を内部に載せて向かう。
「では、私も上陸地点に向かいます。お世話になりました」
「ご武運を」
能登艦長に感謝を述べると、須賀は幕僚を引き連れ、ヘリに乗り込む。
朝日が差し込み、島の全容が見える。
標高一九五〇メートルの山、韓国の最高峰を持つ巨大な島だけに、作戦規定に従い一〇キロ沖合に展開発進しても圧倒的な存在感だ。
これだけ大きいと、とても海兵師団だけで制圧できず、空挺師団が降下して島の要所要所を制圧。
韓国軍の移動を阻止している。
奇襲で成功したからだが、反撃される前に制圧しなければならない。
島は火山島で溶岩洞窟が多く、そこに潜まれたら厄介だ。
奇襲で迅速に制圧する必要がある。
だから須賀は早々に上陸して前線で指揮を執ることにした。
「戦闘団長! 上陸は順調です! 橋頭堡の安全は確保されています!」
先に上陸した部下が報告する。
橋頭堡と、そこを見下ろせる高所へヘリを送り、兵を下ろして確保している。
韓国軍の移動も空挺部隊の降下と制圧によって、制限されている。
これで成功しなければどやしつけるし、どやされる。
「直ちに移動する。空挺部隊と合流する」
「しかし、上陸はまだ終わっていません」
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