ホルムズのF14トムキャットJ
梶谷が操るF14トムキャットJの場合、空中給油なしでも二時間以上、空中給油を受ければ最悪六時間も空の上だ。
F14トムキャットJ
https://kakuyomu.jp/works/16816927862107243640/episodes/16818093087532554926
第二次大戦中、ラバウルからガダルカナルへ連日出撃したという零戦隊が、いかに過酷か分かるというものだ。しかも零戦は一人乗り。ト
ムキャットは複座なので、後席のRIO、レーダー士官が雑談やコーヒーを提供してくれるが、一人で長時間は厳しい。それだけに帰還後の食事が楽しみだ。だが管制官の返答は冷たい。
「終わって帰ってきたら食事を用意してやる。遅れたら飯抜きだ。食いたかったら二四時間営業のお隣さんに行け」
管制官の冗談に梶谷は笑う。
信濃は食堂が開く時間が決まっており、予約しなければならない。
食材を無駄にしないためだ。
一方、共同作戦で参加しているニミッツは、カフェテリア方式で二四時間開いていて豊富だ。
しかし、大量の料理を用意するため、大量に仕入れられる低価格の食材しか使えない。
だから質が悪く、味がひどい。
いつでも食えるのはありがたいが、信濃の飯の方が美味く気分が良い。
「時間通り帰るから、つまみ食いするなよ」
梶谷は言い返した後、チャンネルを変えて問いかけた。
「イーグルアイ、こちら海猫05。聞こえるか? 見えるか」
「こちらイーグルアイ。海猫05見えているし聞こえている。歓迎する」
レーダースクリーンに映った梶谷の機影を確認してイーグルアイは答えた。
「ありがとうイーグルアイ。そちらの指揮下に入る。指示を求む」
「エリア88に行け、そこが担当のCAPだ」
「了解イーグルアイ。これより向かう」
指定された座標、ホルムズ海峡の上空へ。
予定通りの空域に到着すると梶谷は旋回飛行を始める。
ただの旋回ではない。
僚機と共に互いの背後を見張り合い、相手を監視するCAP――戦闘空中哨戒を行う。
「全周囲異常なし、味方だけだ」
「了解」
後席がレーダー画面を見て報告した。
最大探知距離二〇〇キロ以上。
その中から最大24の目標を同時追尾出来るF14の火器管制システムは早期警戒に最適だ。
だが、ミサイルを多数放たれたらすぐに飽和してしまう。
専門の早期警戒機の支援が必要だ。
この空域は味方が殆どだが、相手は戦争中。
軍用機がよく飛び交っているので、敵味方の識別は重要。
しかも真下の狭いホルムズ海峡はタンカーがひっきりなしに通っている。
それを狙って攻撃しようと北のイランは考えている。
だからこそ母艦のE2Cは勿論、ドバイを基地にしているアメリカ空軍のE3Cセントリーの支援も受けている。
映し出される情報を取捨選択しながら梶谷はぼやいた。
一通り回ると、他のチームと交代して空中給油へ向かう。
武装を最大限にまで積み込むため燃料を減らして発艦している。
あっという間に規程である残燃料三分の二に達してしまい、早めに給油を受けに向かう。
KA6Jを見つけ、漏斗の付いたホース、ドローグに機首から展開させたプロープを梶谷は突っ込ませる。
接続されると燃料が送り込まれ、減っていたトムキャットのタンクに燃料を満たしていく。
同時に、梶谷の滞空時間が延び、梶谷の腹も減っていく。
しかも、危険に満ちた空域を飛ぶため余計に緊張する。
「まったく、面倒なところで戦争をしてくれる」
四十年ほど前に日本がひどい敗北を喫したことは学校で習っている
梶谷もベトナムに参戦しており、戦争がひどいもの、碌でもないことだということを良く知っている。
街角で反戦デモを行い、自分を人殺しと叫ぶ人間、現地に行ったこともない人間より梶谷は戦争を知っているし、戦争反対の気持ちも強い。
だからこそ長期間戦争を続ける連中が愚かに見える。
付き合う必要は無いと思う。
だが国家的観点、国際政治上の義務から日本は中東、ホルムズ海峡へ艦隊を、梶谷を送り出していた。
「おまえたちが勝手に始めた戦争で、遠くから送られる、こっちの身にもなってくれ」
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