第7話 それは父を超える挑戦
朝、日が昇る少し前に起床する。
部屋の隅に置いてある大きい箱に向かい、箱の中に大量に詰め込まれている紫玉をいくつか桶に移し、桶と布と剣を持って家を出る。
家の前に出ると、素振りを始める。
特別な事はしないと決めていた。
王侯貴族の様に、特別な何かによって60階層を超えたとしても、それはリオが試練を乗り越えた事にはならない。
命より大切なこだわりだ。
装備を整え、塔に向かって走り出す。
今日は台車を借りる事はしない。門番との戦いの時は、いつもただそれだけに集中するため、紫玉集めも積極的にはしないようにしているからだ。
60階層に到着すると、中心地に向けて歩いていく。
60階層は山の地形になっていた。
「結構急な斜面だな、スライム踏むとそのまま転げ落ちそうだ。見つけ次第処理しておくか」
しばらく進むと、黒い渦巻き状の角を生やした羊に遭遇した。
「一戦してみるか...」
剣を構えると、羊は俊敏な動きで突進を仕掛けてきた。限界まで引き付けて突進を避けながら胴体に剣を振り下ろす。すると、妙な手応えがして、そのまま振り切るも、通り過ぎた羊は何事も無かったかの様に振り返った。
「そうか、毛量が多いだけで本体はもっと小さいのか」
毛量の多い羊毛で胴体を、渦巻き状の角で首を守る防御型の生物のようだ。
羊は再び突進してきた。
「それなら!」
リオは同じ様に避けると、顔面に剣を突き刺してから上に振り抜いた。
羊はそのまま通り過ぎると、バランスを崩して倒れた。
「なるほど、門番はこれに雷を纏っているのかな?」
リオはそのまま羊を放置して中心地に向けて歩き出した。
それから、羊を何体か倒しながら進むと、遠くに青白い光が見えた。ある程度近づくと、それは雷光である事がわかった。
「あれが、60階層の門番...」
その個体は通常個体と違い、鈍重な動きをしていた。体高は2mほどあり、見た目は羊毛の塊が雷光を纏って動いている様にしか見えない。
「頭部は、辛うじて見えるな...」
さらに近づくと、突然雷球が飛んできた。
「っ!?」
ギリギリ避けるが、雷球は止まる事なく放たれ続ける。
一旦リオはその場を離脱した。
「なるほど、貴族が接近戦を諦めるわけだ...」
リオは少し目を閉じて、覚悟を決めた。
全身と剣に紫の光を纏い始める。
「僕に遠距離攻撃なんかない」
そして、門番に向かって真っ直ぐ走り出す。
「お前の攻撃、全てを切り捨てて殺す!」
それは賭けだった。今までこの様な攻撃をしてくる生物など会った事が無かった。ただ、紫の光を纏うと、身体の機能が大幅に向上するという経験により、命を賭ける価値があると判断しただけだった。
走り始めた後は、切る事以外の意識が消えた。
一発撃たれた雷球を切り捨てる。
それにより、門番はこの敵は真っ直ぐ突っ込んで来ると判断したのか、雷球を直線上に連続発射した。
その全てを一発ずつ切り捨てて行く。それにより、徐々に直進速度が下がり、門番まで後少しの所でこれまでより遥かに密度が高く、巨大な雷球が放たれた。
だが、リオは迷わない。切る事以外の思考を切り捨てた彼は、一瞬で全てを使い尽くす事を決め、剣の光が爆発した。
「今ここに、魂の輝きを!」
雷球が紫の光に押し分かたれ、そのまま頭部ごと粉砕した。
それは神のラトゥール 秘密の玩具箱 @kei7727
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