第六話 どうも俺の親友はアホらしい

俺はあくびを噛み殺しながら家を出る。

眠いわ。昨日月葉と仲直りしたあと異性として見てしまった俺はなぜそうなったか分からず朝まで考えていた。

いや落ち着け俺。一時的なもんだろ。仲直りできた達成感みたいなフィルターかかってたんだろ。多分。幼馴染が可愛いのはラノベのみ!つまりラノベこそ至高。ラノベ万歳!


なんて考えながら俺は書店に来ていた。ちなみに取手市にはアニメイトはないゾ☆ということでアニメイトはよ。

とりあえず俺はTSUTAYAか取手駅のくまざわ書店でラノベを購入している。ただラノベオタクとしてはアニメイトで買うとついてくる特典が欲しくて仕方ない。まぁほんとに欲しい時は電車でもなんでも使って買いに行くんだけどね。でも交通費さえもラノベにあてたいわけよ?ということでド田舎茨城県取手市にアニメイトはよ(大切なことなので2回言った)俺はくまざわ書店に入ると目的のものを探しだす。


「うーむ。ここは天国か」


ラノベの並んだ本棚を眺めながら呟く。

今日はチラムネの5巻とラブだめの4巻を買いに来た。

俺は2冊を手に取るとレジで会計を済ませてから乗ってきた自転車にまたがり家に帰る。素晴らしい日だ。今日は休日。何も考えずラノベを読める。いや現実逃避じゃないからね?思考停止じゃないからね?


「おいお前なんでいるんだ」

「え?あ。おかえりー」

「あ返ってきたね。月葉ちゃんきてるよ」


リビングのドアを開けると母さんと談笑している月葉がいた。

月葉は煎餅を食べながらこちらを向く。

おいそれこの前俺が買ってきた煎餅じゃねぇか。勝手に食うな。


「おっじゃましてまーす!」

「邪魔してる自覚あるなら帰れ」

「ひど!?」

「仲良いわね」


「「よくねぇし!」」


チッ…ラノベ読んで休日を満喫しようと思ったのに。俺は月葉を半ば強引に自室に引き摺り込んだ。

母さんにあの温かい目で見守られるのは癪だしな。


「こんないたいけな美少女を自室無理矢理に連れ込まないでくれる!?」

「いたいけな微少女ねぇ…」

「絶対いま字ちがったでしょ」


そんなことをいいながら月葉は俺のベットに寝っ転がる。

勢いよくベットに飛び込んだため月葉の使っているシャンプーがほのかに香った。

そしてスカート捲れかけていてその下からは日焼けをしていない色白の綺麗な太ももが脚が顔を覗かせている。

いやエッッッッッr…

無防備かこいつ!?俺も一応男だからね!?

俺はベットに背を向けて座る。


「月葉見えそうだから」

「え?」

「変態!」

「痛っ!?」


そして月葉のビンタが炸裂した。


「見ないでよ!」

「教えてあげたのに理不尽すぎんか!?」


そうだ。こいつはこう言う理不尽極まりない暴君だった。こいつが可愛いとかやはり気の迷いだ!


「月葉ありがとう」

「うーん分かんないけどとりあえずめちゃくちゃdisられてるのはわかったわ」


とりあえずこの理不尽極まりないない暴君を家から追い出さないとラノベが読めない。

クーリングオフしたい。

何で考えていると月葉が何気なく聞いてきた。


「てかさこの前ユウが言ってたラノベどれ?」

「は?」

「いや読もうかなって」

「月葉お前熱ある?」

「…」

「すみませんでした」

「でも珍しいなお前一般文芸とかしか読まないイメージあったわ」

「間違ってないけどね」


俺はラノベをしまっている本棚に手をかける。こいつをラノベの沼に嵌めてやるぜなんて考えているとインターホンが鳴った。


「ユウ出て」

「出るけどお前の家じゃねぇからな!?」


俺は小走りで玄関のドアを開ける。


「んぁ。よぉ!裕作」

「あ!?シンどうした?」

「いやー家に帰れなくなった」

「は??」


そのタイミングでドタバタと二階の自室から降りてくる足跡が聞こえる。


「ユウ早くこの前の本出してよ」

「あ。わりぃお楽しみ中だったみたいだな」

「むしろ邪魔で帰ってもらいたいんだが」

「またまたぁユウは照れ屋さんだからなぁ。ウリウリー」

「おいばか頭撫でんな」


俺は月葉の頭に手刀を入れる。


「痛!?女の子に手あげるとかサイテー!」

「女の子がどこいるのか教えてほしいぜ」

「あーこれは激おこ!おこおこ!」

「はいはい。こわいこわい」


「で俺はそのイチャイチャをいつまで見てればいいのかな?」


「「イチャついてねぇし!」」


シンの言葉を二人で否定したのは言うまでもない。

これでイチャついてるならあいつの目はイカれてるわ。うん。



_________________________________________


「まあつまりシンは今日から3日間親が旅行なのを忘れてカギを持たずにラノベ買いに行って家に入れないと?」

「そうだな」

「ねぇユウこのアホで残念な顔だけの人だれ?」

「初対面の人に向けての第一声がそれかこのやろう」

「まぁアホなことは否定しないが。こいつは酒井慎之介。ラノベ好きのオタク友達だ」

「ねぇ!?アホなことは否定して!?」

「へぇ友達いたんだ?」

「月葉お前体のどの部分が動体とさよならしたい?」

「こわ!?ノコギリとかで切るやつや!」

「こんな可愛い美少女殺したら世界の損失だよ」

「自分で言うな」

「うわぁ…」

「ちょっと!そこのモブキャラ引くな!」

「おいちょっとまて!?モブって俺のことか?」

「この部屋には美少女とユウとモブしかいないのに他に誰がいると?」


「お前ら仲良いな」


「「どこがだよこの鈍感野郎」」


俺が二人が仲よくてよかったと安心したところ一瞬で否定された。なぜだ。これは世間は許してくれませんよ。


と言うことで今日からシンは俺の家に泊まることにした。何故か月葉がうちに泊まりたがっていたが流石にアレでも女子なので問答無用で家に帰ってもらった。幸いにも月曜日は創立記念日で休みなので学校はない。

さらにシンは一度俺の家に泊まりにきているので母さんとも面識がある。まぁ次学校でジュース奢らせるけどな。

「シンお前ような布団は敷いたからそこで寝ろ」

「えぇ。ベットかーして♡」

「ベランダに簀巻きにされて放り出されるかそこで寝るか選ばしてやろう」

「わー!裕作様ァァ冗談ですよオオオ!」

「もう寝るから電気消すぞ」


俺に抱きついてきたシンを剥がしつつ電気を消した。


「なぁ裕作。お前初恋って覚えてる?」

「あーさぁな」

「その雰囲気は聞いてほしくなさそうだね」

「ご明察」

「俺さ。やっぱり忘れらんねぇんだよな」

「初恋の子か?」

「うん。そうだな」

「だからお前付き合ってもすぐ別れるのか」

「そうそう」

「俺の昔話付き合ってくんね?」

「ヤダ」

「今絶対付き合う流れだったじゃん!?」

「寝るまでの子守唄としてなら聞いてやろう」

「チッ…もうそれでいいや」


しばらくの沈黙の中を時計の秒針の音が正確に響く。


「俺さ小学生の頃夏祭りに行ったんだよな」

「おん」

「その時に親とはぐれちゃって。まだ7歳だった俺は親とはぐれたことが不安で屋台の横にしゃがんで座ってたんだ。」

「その時にさある女の子が俺に話しかけてきたんだ。名前くらい聞いておけばよかったって思ってるよ。同じくらいか年上の子なんじゃないかな。黒髪のロングの女の子でさ、俺に大丈夫?って話しかけてくれたんだ」

「その子は友達と来てたらしいんだけどその子もはぐれちゃってたらしくて二人で探しに行ったんだ。その子の手がすげえあったかくてなんだか安心したんだ。」

「ん」

「でその女の子は俺に大丈夫なんとかなるよ。私の友達はすごいんだって話しかけて元気をくれた。それが嬉しくて。気づけばその子が好きになってた」


シンはそう言うと単純でばかだよなってはにかんではにかんで笑った。


「そんなことねぇよ。俺はそう言うシンの真っ直ぐなとこ嫌いじゃない」

「え?なに俺にアピってんの?」

「しばくぞ」


そう言ってシンは笑った。


「ありがとな親友」


呟くように言ったシンの言葉は外の静かな夜の街を走る車の音にかき消されていった。

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幼馴染が可愛いなんて認めない! らにあ @tatsuya8

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