見習い悪魔 ルシフェルの日記

枡本 実樹

Ψ 今日の日記 Ψ

ぼくは、見習い悪魔のルシフェル。

立派な悪魔になるために、毎日いっぱい勉強して、頑張ってるんだ。


何かに一生懸命になっている人間たちを惑わしたり。

残忍で非道であることをたくさん出来るように日々修行中。

一ヶ月後の最終試験まであと少し。

今日も使い魔の猫、グリと一緒に、人間たちに悪さをしに行くよ。


毎日どんな悪いができたのか、先生が『 日記に書いてきなさい。』って言ったから、日記帳いぃーっぱいに、ぼくの成果を書き込んでいくんだ。

さぁ、グリ行くよっ!しゅっぱぁ~つ!!



ぼくのかわいい使い魔。

灰色の毛並みがつやつやの猫。

グリは仕事も早いんだ。

早速、ぼくのターゲットを探してきてくれたよ。

どれどれ。


おおー。あいつか。

小学生か。何してるんだ?

女の子のペンケースをとって、教科書やノートに落書きして、泣かせる。

ふんふん。

なかなかいいじゃないか。


でも、まだまだだな。

よーし、オマエが立派な悪者になれるよう、ぼくがオマエに教えてやるぞ。

ちょちょいのちょい★

よーし、今日もイイコト出来ました。



Ψ 今日の日記 Ψ

先生あのね。ぼくは今日、小学生の男の子にイイコトしました。

えんぴつを削っても、削っても、書きはじめるとすぐに芯が折れるようにしてあげました。

一本だけじゃなくて、ぜーんぶです。

そして、鉛筆削りには毎回芯がつまるようにしてあげました。

「もう、なんでだよー。」ってプンプンしてました。

今日のぼくはハナマルです。




さーて今日はどこに行こう。

ビルの上で人間たちを見ていると。

グリがこっちと呼んでいる。

早速、ぼくのターゲットを探してきてくれたよ。

どれどれ。


おおー。あいつか。

仕事してるのか。何してるんだ?

怒鳴り散らしてるなぁ。部下なのか?しょんぼりさせたり、泣かせたり。

ふんふん。

なかなかいいじゃないか。


でも、まだまだだな。

よーし、オマエが立派な悪者になれるよう、ぼくがオマエに教えてやるぞ。

ちょちょーいのちょい★

よーし、今日もイイコト出来ました。



Ψ 今日の日記 Ψ

先生あのね。ぼくは今日、会社でキレてる男の人にイイコトしました。

机の角で足の小指をぶつけるようにしてあげました。

ヒッとした顔の後、平静を装ってたけど、そのままキレて自販機を反対側の足で蹴っていました。

足が痛いのに、そんなことまで出来てたから、ゴホービをあげました。

自販機に入れたコインがぜーんぶ返却口に返ってくるようにしました。

それだけじゃないです。

コインを諦めて、お札を入れてたので、表にしても裏にしても、どっちも通らず返ってくるようにしてあげました。

「もう、なんなんだよっっ。」ってプンプンしてました。

今日のぼくはハナマルです。




さーて今日はどこに行こう。

駅の中で人間たちを見ていると。

グリがこっちと呼んでいる。

早速、ぼくのターゲットを探してきてくれたよ。

どれどれ。


おおー。あいつか。

きれいなお姉さん。何してるんだ?

電車で泣いてる赤ちゃん連れのお母さんに文句、トイレ掃除のおばさんにすれ違いざまに文句。

ふんふん。

なかなかいいじゃないか。


でも、まだまだだな。

よーし、オマエが立派な悪者になれるよう、ぼくがオマエに教えてやるぞ。

ちょちょいのちょいちょい★

よーし、今日もイイコト出来ました。



Ψ 今日の日記 Ψ

先生あのね。ぼくは今日、きれいなお姉さんにイイコトしました。

カッコよく歩いてたので、ピンヒールをマンホールや側溝の穴に何度もはまるようにしてあげました。

そして、入ったトイレのトイレットペーパーを、全部芯にちょっとだけにしてあげて、水を流したらチョロチョロしか流れないようにもしてあげました。

悪くない人にまで悪口を言えてたから、ゴホービたくさんあげました。

お化粧を落としているときに、つけまつげがなかなか外れないようにもしてあげました。

「もう、なんなのよっホント!」ってプンプンしてました。

今日のぼくはハナマルです。




こんな感じで、一ヶ月間、ぼくはたくさん頑張りました。



悪口ばっかり言ってる人や、怒鳴り散らしている人。

人を叩いたり、蹴ったりしている人。

物に当たったり、動物に当たったりしている人。


人間なのに、悪魔の代わりになろうと一生懸命な人をたくさん見付けました。

まぁ、ぼくら見習い悪魔にさえ及ばないけど、彼らは頑張っています。

だからぼくは、そんな、みみっちい悪者たちに、たくさんをあげました。


ご飯を食べてたら、必ず卵の殻を入れてあげたり。

醤油と思ってかけてるのを、ソースにしてあげたり。

テレビをつけた瞬間から大音量にしてあげて、イヤホンをつけようとしたらイヤーピースだけなくしてあげたり。

あと、急いでいるときは、全ての信号を毎回、赤信号にしてあげました。


みんないっつもプンプンしてました。

喜んでくれたかなぁ。



先生に日記を渡して、最終試験の結果を聞くと。

「お前、悪魔は向いてないんじゃないか?」と言われたんだ。


なんでだろう。

立派な悪魔になるために、毎日いっぱい勉強して、頑張ったのになぁ。





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見習い悪魔 ルシフェルの日記 枡本 実樹 @masumoto_miki

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