まだふたりが『恋』と気づいていないときの物語
呂兎来 弥欷助(呂彪 弥欷助)
第1話
最高位の城の姫──
近づき、様子をうかがうと──何かを書いているようだ。
「
一瞬、幼い体がびくりと跳ねた。
「あ……
振り向いた
「この花……を、描いていたのですか?」
それは、一ヶ月前に
「うん……前に日記を勧められて……それで……」
それで
「日記……ですか。もし、よけろしれば見せて頂けますか?」
「見ても、きっと……わからない……よ?」
と言う。
恥ずかしそうなその姿に、
「たぶん、ですけど……わかりますよ」
根拠のない自信を言う
日記──と
「ね? よくわからない……でしょ?」
「はい」
即座に言う
「この絵を、『よくわからない』とおっしゃる意味がわかりません」
うつむきかけた
「このはっきりと描かれている部分は影。消えていて見えない部分は光。流れるように表現されている点は風の揺れ……こんなに素晴らしい表現をされた絵は、見たことがありません」
「うそ……どうして……」
戸惑う声に
「
「私、日記を勧められて……でも、何を書いていいのかわらからなくて……絵を描いて、勧めてくれた人に見せたの。……でも、何を描いたかまったくわかってもらえなくて、また別の絵を何枚も描いて、それでも、わかってもらえなかったのに……」
ポロポロと涙を落とし始めた
「
パラパラと
「そうだ、
パッと
涙を拭いていた
「今度、キャンバスに描いてみませんか?」
「え?」
「
「また……
と、目元をキラキラとさせて微笑んだ。
こうして、
そして、ふたりはふたりだけの秘密を共有することになる。
これは、
まだふたりが『恋』と気づいていないときの物語 呂兎来 弥欷助(呂彪 弥欷助) @mikiske-n
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