2018.01.18
わたしは古い家に住んでいる。広い玄関から右にある階段を上がるとわたしの部屋がある。六畳間が二つ並んでいて、ふたつを隔てるふすまは外されている。格子のはめ殺し窓から、外の柔らかい光が差し込んでいる。窓の下には、引き出しを抜いて口を開けたままの二段収納が置いてあり、一段目には漆の皿に乗った彼岸饅頭、二段目には木で作られた小さな家があった。小さな家の戸は閉まっている。窓からの光だけでは薄暗い部屋の中、わたしはその小さな家――ほこらと呼んでいるものに手を合わせた。「同居人の男を殺します」
わたしは同居人の男が嫌いで嫌いで仕方がなかった。ふすまを外したのは男だ。そのせいで、わたしの部屋は階段の途中からも見えるくらい開かれている。わたしの足元まで他人が侵食しているのが耐えられなかった。
わたしは毎日、家へ帰ってくると真っ先にほこらへ手を合わせた。ある日、二階へ上がると、ほこらの戸が開いていた。わたしはドキドキしながら手を合わせた。目も瞑った。「あの男を殺します、殺します」
瞼を開けて顔を上げると、白い着物を着た子どもが立っていた。子どもはわたしが子どもを認識したのに気付くと、声をあげて笑った。そうして階段を転がり落ちていった。
夢の話 萩森 @NHM_hara18
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