夢の話
萩森
2017.12.30
私は学校にいる。学校には白い螺旋階段があり、柵に巻き付くように蔓が這っている。トマトに似た果実がなっている。ひとつひとつに違う模様があり、"もぐ"とそれぞれの教室へ行ける。一年生は赤、二年生は黄色、三年生は緑。わたしはただ果実の模様を眺めていた。しばらくして飽きたので、まっすぐな階段を登って広い踊り場へ出た。服装検査をしている。長蛇の列の最後尾に並んだが、いくら待っても進まないので家に帰った。服装検査は三日間続く。二日目も同じように帰った。
三日目の今日はそもそも行かなかった。母が「もう十一時よ」と言う。学校に行かねばならない。わたしは制服を着て自転車に跨った。大きな道へ出る曲がり角で、同級生とすれ違った。手を振ってくれたが、わたしは立ち漕ぎをしていて手が離せなかったので、精一杯笑っておいた。多分無視したように見えている。
夜だというのに車通りが多い。四車線ある道路で、街路樹が並んでいる。あたりの店はまだ開いていて、ピカピカしている。わたしは右の歩道を走っている。近道しようと住宅街へ入った。白くて似たような家が並んでいる。道を間違えたのか、ホテルの前に出た。白いホテルはピカピカしている。自転車から降りて中に入る。エントランスには頭の潰れた男の死体があった。受付カウンターに別の男が座っている。カウンターは狭く、男のすぐ後ろは壁だった。座る男が死んでいるのか眠っているのか判断はつかなかった。わたしは狭いカウンターに入り込んで、ドアを開けた。
すべすべした大理石の廊下が続いていた。床に敷き詰められた正方形の石板に同じ模様はない。影が落ちていたので見上げれば、腹をロープで括られた黒髪の女が吊り下がっていた。わたしはびっくりしてドアまで戻った。エントランスでは、カウンターの男が目を開けていた。わたしが「ヒャクトオバン!」と叫ぶと、男は驚いた顔をして、しかしイチ、イチ、マルを押した。アンティークなダイヤル式テレホンの受話器は重い。女の機械音声が流れている。「殺人事件です」
ホテルの名前を言ってから振り返ると、ガラスのドアに殺人犯がへばりついていた。黒い服が血を吸ってテラテラしている。男の背後で黒髪の女が揺れている。わたしは受話器を放って逃げ出した。背後でカウンターの男が死んだ。
わたしは自転車に飛び乗った。逃げなければいけない。学校にも行かなければならない。わたしは学校を目的に漕いだ。殺人犯が追ってきている。わたしは自転車、殺人犯は足で走っているのに、一定の距離が保たれていた。均衡状態のまま、わたしは学校の場所なんて知らないことを思い出した。
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