LOST LEGACY
OBAR
伝説の秘宝……。
「えー、まだ歩くんすか? もういい加減疲れましたよ」
助手のエドガーがぼやく。
私の名はショウ ハザマ。太古に滅んだとされる文明を研究して20年、そろそろ何かしらの発見をしないと出資を打ち切るとパトロンから言われているしがない大学教授である。
「もう少しで遺跡があるはずだ。エドガー君、頼むから頑張ってくれたまえ」
「教授の『もう少し』は聞き飽きたっすよ。せめて休憩しましょうよ」
探索開始当初は20人程居た探索隊のメンバーもパトロンからの再三にわたる予算削減で、今となってはこのエドガーと二人きりである。
彼に辞められては私が困る。私の研究では遺跡の扉を開くには、同時に離れたところにある凹みに【鍵】となる宝玉を収めなくてはならないのだ。
「仕方ない。では彼処の開けたところで休憩しようか」
「やっと休めるっすね。おや、ちょうど泉が湧いてるっすよ」
「おい! 気を抜くなよ。昨日も小川の辺りで蛭にやられたばかりだろう」
「大丈夫っすよ。そうそう蛭なんていませんて……ギャーーー!」
突然エドガーの姿が消えた! 何故!? どうしてエドガーは毎度ハプニングばかり起こすのか。
「おい! エドガー!! 何処だ?! 返事をしろ!!」
「……ここっす」
よく見ると泉の畔付近に穴が空いている。エドガーのやつは偶々そこにしかない『穴』に落ちたのだ。
なんて運の悪い奴だ。
「教授! 大変っす!」
「どうした? 怪我でもしたのか?」
「横穴があるっす……」
「なんだってぇ!!! それを早く言いなさい!!」
「だから大変って言ってるじゃないっすか」
「もういい! 兎に角、その横穴を探索するぞ!」
「えーーっ! 休憩しないんすか?」
「それどころではないだろう? 一刻も早く探索するぞ!」
「えーーーーーっ!? 休憩するって言ったじゃないっすか」
「駄目だ!その穴が遺跡の一部かもしれないじゃないか!」
「教授の嘘つき……」
私はザイルに複数の輪を作り簡易縄梯子とするとそれを用いてエドガーの落ちた穴へ降りる。
ずっとエドガーの奴がブツブツ文句を言っているが気にしない。念願の遺跡を見つけたかもしれないのだ。
興奮のあまりセオリーを無視してしまったが、空気の流れを感じる。酸欠などの心配は無さそうだ。
ランタンを灯し周囲を確認すると、右手に扉があり左手に回廊が続いている。
……これはまさか……
そう、ここは最奥間へ続く回廊。二人で開けるべき扉の裏側だった。
エドガーの奴は夢もロマンもすっ飛ばしクライマックス手前に落ちたのだ。
なんて空気の読めない奴だろうか。
兎に角、今は何か成果となるものを見つけるのが先である。
左手の回廊を進む。
ほどなく開けた空間に出る。
「教授! あそこに何かありますよ」
「待て、エドガー。私が調べる」
はやる気持ちを抑え周囲を確認し近づく。
どうやら宝箱のようだ。
警戒しながら箱を開ける。
「なんか、ガラスの板みたいっすね……」
エドガーのいうとおり透明な板ガラスのようなものが複数枚入っている。
だが、よく見ると表面に何かの模様が刻まれている。これは太古に使われていた文字である。私には分かる。
「よし、これを持ち帰りさらなる研究をするぞ! エドガー、そっちを持ってくれ」
「えーーーーーっ なんか重そうですよ」
「文句を言うな! これを持ち帰らないとお前の給料も出せなくなるぞ!」
「そりゃ困るっす!早く持つっすよ!!」
現金な奴め。
やっとの思いで持ち帰り解読した結果……
太古の日記であった……。
LOST LEGACY OBAR @aikotoba-ailand1020304
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